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日経記事;『ダイキン、中国部品無しでもエアコン生産 有事に備え』に関する考察 [海外進出・海外移管]

                  2022年9月26日


皆様、

こんにちは。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

920日 付の日経新聞に、『ダイキン、中国部品無しでもエアコン生産 有事に備え』のタイトルで記事が掲載されました。

 

今回は、本記事について考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『ダイキン工業は2023年度中に有事に中国製部品が無くてもエアコンを生産できるサプライチェーン(供給網)を構築する。省エネルギーなど中核機能にかかわる部品を日本国内で内製化するほか、取引先に中国外での生産を要請する。ゼロコロナ政策を受けたロックダウン(都市封鎖)や米中対立による供給途絶リスク、地政学リスクも抱える中国への依存度を減らす動きが日本の製造業で広がってきた。。。』

 

私は、以前に書きましたブログ・コラムにて、米中対立の激化などにより、グローバリゼーションの時代は、現時点では終わったと書きました。

 

グローバリゼーションについて、グロービス経営大学院のWebサイトでは、以下のように説明されています。

https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11770.html 

『グローバリゼーション(グローバル化)とは、地球規模で複数の資本、情報、人の交流や移動が行われる現象のこと。また、自国と他国の関係性を表す「国際化」とは異なり、「グローバリゼーション」はヒト・モノ・カネの流動性が高まり、国境のない世界を意味する。』

 

日本では、中国ビジネスのやり方について、グローバリゼーションの流れの中で、政経分離の考え方を積極的に取り入れて、中国への投資や、中国市場での販路開拓・集客を積極的に行ってきました。

 

政経分離とは、日本と中国が政治的に緊張状態にあっても、経済面ではお互いのメリットがある限り、つながりを強めてビジネスを拡大させる考え方です。

 

しかし、この政経分離は、約10年前に起こった尖閣諸島の国有化問題を起点に起こった、中国国内での反日行動により揺らぎました。

 

私がこの反日行動で一番驚いたのは、中国人により襲撃された工場の中に、パナソニック(旧松下電器)の工場が含まれていたことです。

 

パナソニックの創業者である松下幸之助氏は、日中の国交が成立する前から、中国に工場を設立して、中国人に製造ノウハウを教えてきました。

 

歴代の中国政府は、パナソニックの対応に感謝を示してきました。

 

しかし、尖閣諸島による反日行動が、パナソニックの工場も対象になった時点で、日本と中国の政経分離は、機能しないことを、私は感じました。

 

それ以降、私の支援先に対しては、中国国内での新規工場設立は行わず、タイヤベトナムなどで行うようアドバイスしてきました。

 

確かに、中国市場は、巨大であるがゆえに、大きな魅力があります。また、日本の製造事業者が、この巨大市場内に工場を作ることは、一般的に合理性があります。

 

私の支援先には、海外に工場設立などの投資を行う場合、政治リスクの最小化を最優先に考えるようアドバイスしました。

 

政治リスクの高さの視点では、ウクライナ侵略を行っているロシアも対象になります。数年前に、一時期、ロシアへの工場設立などの投資が推されました。

 

この時にも、数社の製造事業者から相談を受けました。私のアドバイスは、政治リスクを最小化するやり方を最優先して、新規投資を行わないことでした。

 

中小企業は、投資した相手国の政治状況の変化で、当該国での事業基盤が揺るぐと、その企業の経営に深刻なダメージを与える可能性があります。

 

私は、政治リスクが存在する国や市場には、投資を行わないで日本あるいはその他の国から輸出を行い、問題が発生したら直ちに輸出を停止するやり方を勧めています。

 

多くの中小・中堅・大手の製造事業者が、グローバリゼーションの流れに乗って、こぞって中国に工場設立したときは、安い労働力が豊富に存在していました。

 

米中対立の激化は、深刻化しており、米欧日などの経済圏と、中国やロシアなどの経済圏に分かれる動きが、当面の間、加速するとみています。

 

このような状況下で、本日の記事にありますダイキン工業の経営施策は、政治リスクを最小化させるためのやり方になります。

 

国内製造事業者が、中国以外から資材や部品などを調達するときに、コスト高になる場合があります。

 

このコスト高は、他のコスト圧縮、商品の付加価値を高めて販売価格を上げるなどのやり方で解決することになります。

 

国内製造事業者にとって、中国に依存しないサプライチェーンの構築は、多くの時間とコストを要します。

 

これらの課題は、企業が織り込んで、知恵と創意を最大化して、解決する必要があります。

 

国内製造事業者、特に中小企業は、政治リスクに巻き込まれないようにするのが、最上のやり方です。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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日経記事;『中国、医療機器も外国製排除 病院に国産品調達を要求 世界市場の分断深まる』に関する考察 [海外進出・海外移管]

               2022年9月15日


皆様、

 

こんにちは。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

915日付の日経新聞に、『中国、医療機器も外国製排除 病院に国産品調達を要求 世界市場の分断深まる』のタイトルで記事が掲載されました。

 

本日は、この記事に関して考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『中国が医療機器の市場で外国製品の締め出しに動いている。地方政府が病院に国産機器を調達するよう求め始めたほか、中央政府は設計開発や重要部品の調達を中国に移すための法改正案を公表した。米国はサプライチェーン(供給網)から中国企業を排除する動きを強めており、グローバル市場の分断がさらに深まる。。。』

 

中国のこの動きは、米中摩擦が激化する中で、当然のごとく発生するものとして予想されていました。

 

本日の記事では、医療機器が対象になっていますが、今後、他の事業分野でも同じような動きが出てくることは、必然です。

 

私は、数年前にある中小企業から相談を受けました。その企業は、中国の地方にある省で工場をもっていました。ある日、省の役人から呼び出しがあり、商品の製造だけでなく、中国で売る商品については、開発や設計の上流部分を中国内の工場に移管することを求められました。

 

その中小企業は、海外販売の30%強を中国市場に依存していたため、その省の方針に従うべきかどうか悩んでいました。

 

中国の省の施策は、内製化をさらに深めて、開発から製造までのすべての流れを地元に置くことで、国外企業がもっている知的財産やノウハウなどを獲得することでした。

 

幸い、その当時出された省の新方針の実施については、1~2年の猶予期間が設定されていました。

 

そこで、その企業と相談した結果、この猶予期間の間に、アセアンや米欧などの他地域での販路開拓・集客を集中的に行い、中国市場への依存度を落とす方策を立てて実行しました。

 

当該企業は、中国市場への依存度を減らした後に、中国内の工場を閉鎖しました。工場は、アセアン地域内に新規に作り、中国への輸出が続けられる限り、この工場から商品を供給しました。

 

また、ある中小企業は、中国に輸出している商品について、リバースエンジニアリングが行われた結果、商品ロゴを含めた模造品を販売されてしまいました。

 

その模造品の品質や信頼性が極めて低かったため、顧客からのクレームがその企業に多数寄せられてしまいました。

 

当該企業は、自社商品と模造品の違いを明確に中国の顧客に説明しましたので、損害賠償請求などの要求は起きませんでした。

 

結局、模造品を作られた企業は、中国市場での事業を休止しました。私は、この企業から英語圏市場での販路開拓・集客支援を依頼され、1年くらいの時間をかけて販路開拓をお行いました。

 

私は、何度か本ブログ・コラムで述べていますように、中国を含めたグローバル市場は、均一条件で存在すると考えていません。

 

私は、数年前から、海外販路開拓・集客支援の対象地域は、米欧アセアン地域などの英語圏市場としています。

 

中国は、確かに巨大市場ではありますが、日本や米欧などの経済合理性が通じない国です。

 

ベンチャーや中小企業は、中堅・大手企業と比べて経営体力が脆弱ですので、中国市場に参入して大やけどを負いますと、倒産する可能性があります。

 

ベンチャーや中小企業は、海外事業に関して決して政治的なリスクを取ってはいけないと考えています。

 

ベンチャーや中小企業は、米欧アセアン地域などの英語圏市場で販路開拓・集客を行えば、事業収益の維持拡大が十分に可能です。

 

もちろん、その企業の商品やサービス、が競争力のある、あるいは差別化・差異化可能な強みをもっていることが、大前提になります。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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日経記事;『キリン、ミャンマー撤退の教訓 数字で測れぬ判断が必要に』に関する考察 [海外進出・海外移管]

                2022年8月29日


皆様、

こんにちは。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

829日付の日経新聞に、『キリン、ミャンマー撤退の教訓 数字で測れぬ判断が必要に』のタイトルで記事が掲載されました。

 

本日は、この記事に関して考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『キリンホールディングスがミャンマーのビール市場から撤退する。昨年2月の軍事クーデター発生後、合弁相手の国軍系企業に入る資金が民主派弾圧に使われると批判されてきた。新興国リスクにのみ込まれた同社の経験から、読み取れる教訓は何だろうか。。。』

 

キリンがミャンマーのビール事業から撤退することを決意しました。一時期、ミャンマーに民主政権が存在していたころ、同国はアセアン地域の中で残されたフロンティア市場としてもてはやされました。

 

その時期に、私の支援先企業にも、ミャンマーの首都であるヤンゴン郊外に工場設立の投資を行う提案が入りました。

 

その企業は、当時、海外事業を始めてから何年も経っていなかったので、社長にはミャンマーへの新規投資は行わず、その時に行っている海外輸出事業に注力するようアドバイスしました。結局、当該企業は、投資を行いませんでした。

 

当時、私がミャンマーへの工場建設に賛成しなかったのは、電気や水道などの社会インフラが脆弱であったことに加えて、民主政権が長続きするかどうか、危惧したことにあります。

 

ミャンマーの過去の軍事政権は、とても強硬であり、躊躇なく軍事力を使って国民を弾圧してきた歴史をもっています。つまり、同国は政治的なリスクが常に高い国になります。

 

キリンホールディングスのような大手企業と異なり、中小企業が海外投資に失敗すると、多くの場合、その企業にとって致命傷になるリスクがあります。

 

中小企業の海外事業展開、特に、工場建設や子会社設立などの投資は、リスクを最小化して行うことが基本中の基本です。

 

特に、政治的なリスクが高い国に投資するときには、慎重の上にも慎重を期します。現時点では(アフターコロナを含めて)、日本と同じような法治国家でない国には、新規投資を行わないようアドバイスしています。

 

私が過去に、事業撤退の支援依頼を受けた案件(約15件)のほとんどが、政治的・社会的リスクが高い国での事業でありました。

 

ここで言います政治的・社会的リスクが高い国は、民主的な法治国家でない、法律はあっても行政当局が恣意的に法律を適用する、軍の影響力が高い、宗教団体の影響力が高い、などの国を指します。

 

私は、新型コロナウイルスの影響拡大前から、米中対立が高くなった時期以降、それまで多くの国内企業が行っていた一種のグローバリゼーションの考え方に基づいた、新規投資を行わず、当面の間、国内からの輸出事業に専念するよう、支援先企業に求めてきました。

 

これは、上記投資リスクを最小化するためです。

 

さて、私は、支援先企業から海外事業展開の支援を要請される場合、まず、下記4つのポイントを検討・確認します。

・目的の確認

・相談企業の経営資源・体制の確認

・海外展開の方法と手段

・事業計画立案とリスク管理

 

製造事業者の場合、海外事業展開の目的は、主に以下のようになります。

1. 自社商品に自信があり、海外市場での販路開拓・集客を行う。

2. 国内取引先が生産拠点を海外に移した。

3. 製造コストを削減する。

4. 金融機関などの取引先に勧められた。

5. 国内市場での事業収益が増えない。

6. 競合企業が海外事業展開で成功して、刺激を受けた。など

 

上記目的のうち、2項と3項は明確な工場建設になりますので、さまざまな視点からリスク分析を行うことになります。

 

そのリスク分析とも密接に関係するのは、相談企業の経営資源・体制の確認です。主な検討・確認事項は以下の通りです。

・海外事業展開以外の方策はないのか。

・海外事業展開がその企業の経営の安定さに影響が出ないか。

・海外事業展開のメリット、デメリットを明確化できているか。

・社内に海外事業展開ができる人的資源があるか。

・販売あるいは製造する商品の、潜在顧客と販路が明確になっているか。

・競合先の状況や、競争に打ち勝つための分析ができているか。など

 

並行して、海外事業展開のやり方について、整理してどの方法が当該企業にとって最適か、検討・確認します。

●販路開拓・集客・輸出

@直接販売(インターネット通販、特定の取引先に輸出)

@流通業者を通しての販売(代理店、販売店の活用)

●投資を伴う事業展開

@自社工場設立

@販売子会社設立

@業務委託、技術提携

@生産・販売委託

@技術供与、など

 

上記状況や各項目の検討・確認を通して、その企業に適切な事業計画を作成します。一般的に事業計画には、生産計画、販売計画、設備計画、人員計画、資金計画が含まれます。

 

事業計画を作成しても、その実行段階に入ると、多くの場合、決して事業計画通りに海外事業を行えません。

 

したがって、半年あるいは、1年ごとに、事業計画の見直し、再検討、再設定が必要になります。

 

この事業作成と実行フェーズで最も大事なことの1つに、明確な撤退基準の設定があります。

 

この撤退基準がないと、先の見通しが見えない状況下で、ずるずると海外事業展開を継続する最悪の状態に陥ります。中小企業にとっては、命取りになります。

 

撤退基準の事例は、例えば以下のようなものです。

●撤退基準

・三年間で黒字にならない。三年間連続して赤字

・三年間で所定の売上金額を達成できない。

・二年間でxx億円投資する。三年後に黒字化出来ないなら止める。など

●一旦決めたら、機械的に適用することが重要です。主観的な判断を入れないようにします。

 

以上、本日はキリンホールディングスのミャンマー事業からの撤退に関して、私の海外事業展開支援の考え方の一部を述べました。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 

 


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日経記事;『ウクライナ侵攻と世界(上) 深まる分断、消える500兆円 相互依存の供給網、もろさ露呈 グローバル化逆回転』に関する考察 [海外進出・海外移管]

              2022年8月22日


皆様、

こんにちは。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

822日付の日経新聞に、『ウクライナ侵攻と世界(上) 深まる分断、消える500兆円 相互依存の供給網、もろさ露呈 グローバル化逆回転』のタイトルで記事が掲載されました。

 

本日は、この記事に関して考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

224日のロシアのウクライナ侵攻から半年たち、国際社会の風景は様変わりした。民主と強権という国家観の隔たりがあらわになり、経済・政治の両面で分断が進む。「ウクライナ」後の世界はどこへ向かうのか。。。』

 

最近、「世界のグローバリズムの消滅」、「グローバルなサプライチェーン網の消滅」などの記事が、マスコミやインターネット上に盛んに取り上げられています。

 

国内の中小製造事業者にとって、ベトナムなどの海外に新規工場設立の投資を行うことは、大変大きなリスクを伴う経営課題になります。

 

私が以前、米欧アセアン地域での販路開拓・集客支援を行った中小製造事業者から、新規の相談依頼がありました。

 

それは、ベトナムのハノイ近郊の工場団地に、新規に工場建設を行うかどうか、実現性などに関する相談です。

 

この中小製造事業者には、販路開拓・集客支援時に、海外に新規に工場建設するなどの新規投資を行うときは、しっかりした海外販路構築が終了してから、検討・実行することを説明していました。

 

この企業は、すでに安定した海外販路をもっていること、および、最近国内の取引先がベトナムに工場建設したことなどから、製造コスト低減化や人材不足解消などのため、ハノイ周辺の工場団地への工場建設を考え始めました。

 

この中小製造事業者は、地方に工場をもっており、それほど深刻ではありませんが、製造現場の人材確保に課題をもっています。

 

人材確保のため、社員の給料も上げており、人件費が経営に負荷を与えている状況です。この企業は、これらの問題を解決するため、一つの方法として、ハノイ周辺での工場建設を考えました。

 

現時点でのベトナムの労働・経済環境をみると、ハノイ周辺の工場団地に新規投資して工場建設を行うことは、基本的に問題ありません。

 

しかし、現在の日本を取り巻く環境や、ロシアのウクライナ侵略に伴う混乱状態、米中対立などの、世界の政治・経済状況を考えると、慎重に検討し、対応する必要があります。

 

この中小製造事業者は、現在、国内で生産している商品や部品を、主に米欧アセアン地域に輸出しています。

 

この会社の部品や商品に使用されています部材の一部は、中国から輸入しています。仮に、米国向け商品・部品を対象に、米国政府から一定比率の中国産部材の使用について制約を受けた場合、調達コスト増になりますが代替調達先の確保が可能です。

 

しかし、いったんベトナムなどの海外に置いた工場で、日本国内と同じような対応ができるかどうか確認した結果、一部の部材については、難しいことが判明しました。

 

この企業は、私を含めて社内にプロジェクトチームを設立して、ハノイ周辺への工場建設について、集中的に検討・確認作業を行いました。

 

この企業が出した結論は、当面の間、新規に海外に工場建設を行わず、国内工場から輸出を行うやり方に徹することでした。

 

同時に、自社商品や部品の付加価値を高めて、価格競争力を向上させて、販売価格を上げるやり方を積極的に推し進める。

 

また、費用対効果を見ながら、製造現場や事務部門の生産性向上ための新規投資を行うことも決まりました。

 

私は、この企業に国内工場だけに依存せず、将来、世界の経済状況が安定化して、海外での工場建設への障壁が低くなったとき、主要市場に近いところで、工場建設する方法も実行することの必要性も説明しました。

 

今後、中小製造事業者が海外への工場建設などの新規投資を行う場合、今まで以上に世界の政治や経済の動きを見極める姿勢と、リスク低減のやり方を創意工夫して検討・実行する必要があります。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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日経記事;『ものづくり基地、バングラで整備 初の日系工業団地 今年開所 住商主導、1.7億人市場に的』考察 [海外進出・海外移管]

            2022年8月16日


皆様、

こんにちは。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

816日付の日経新聞に、『ものづくり基地、バングラで整備 初の日系工業団地 今年開所 住商主導、1.7億人市場に的』のタイトルで記事が掲載されました。

 

本日は、この記事に関して考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『バングラデシュで初の日系工業団地が2022年内に開所する。住友商事が建設・運営を主導し総事業費は130億円。円借款で周辺の電力インフラも整備し、日系を軸に製造業が集まる「ものづくり基地」に育てる。経済特区指定を受けた数少ない国際水準の団地で、地元政府も税優遇で支援する。人口17千万のフロンティア市場へのメーカー進出を後押ししそうだ。。。』

 

本記事に出ています工業団地は、「バングラデシュ経済特区(BSEZ)」と呼ばれています。

 

この工業団地の広さは、190ヘクタールであり、将来事業環境に応じて最大400ヘクタールまで拡張可能とされます。

 

工業団地は、バングラデシュの首都ダッカから20キロメートルの郊外に位置します。

 

この工業団地の作り方は、以前、日本がタイの首都であるバンコク周辺に数多くの工場団地を造成したやり方と同じです。

 

バンコク周辺の工場団地には、当時、数多くの日系企業が良質な労働力を求めて、進出して工場を作りました。

 

当時のタイでは、15歳から64歳までの生産年齢人口が増加しており、労働者賃金も低い状態でした。一般的に、タイ人は勤勉でした。

 

私は、子会社が設立したバンコク周辺の工場の経営支援のため、数多く出張しました。私は、今でも、その当時、進出しました日系企業の熱気を覚えています。

 

現在、数多くの日系企業がタイに根を下ろして事業しており、労働者賃金が上昇し、購買力の付いた中間所得層向けや、関連企業へのビジネスを行っています。

 

現在、多くの日系企業が製造工場の新規投資先としているのは、ベトナムです。ベトナムの首都であるハノイ周辺には、多くの工場団地が造成されており、現在も新規工業が建設されています。

 

202288日付のブログ・コラム『[FT]移民への魅力が薄れた英国、人材獲得競争でも不利に』に関する考察でも書きましたように、現時点では、ベトナムの労働者賃金が中国や他のアセアン地域に比べて安いことが主要因の一つになっていることによります。

 

ベトナムの製造業の作業員・月額基本給(2021年)は、平均値でUS$265となります。

https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2022/ea6f8923fcf2600a.html 

 

上記JETROWebサイトをみますと、製造業の作業員・月額基本給(2021年)の平均値では、中国がUS$651で最も高く、バングラデシュが一番低くUS$105となります。

 

ベトナムへの工場建設の投資が増えているのは、中国での労働者賃金が上昇していることも理由の一つです。

 

このベトナムの将来は、タイと同じになります。ベトナムの労働者賃金が上昇して、新規工場設立の大きな要因にならなくなります。

 

今後の新規工場設立の投資先として注目されるのが、バングラデシュです。

 

一時期は、ポストベトナムとして、ミャンマーが注目されていました。しかし、同国で軍事政権が樹立されたことで、事業環境は大幅に悪化しました。必然的にバングラデシュへの注目が集まっています。

 

バングラデシュの15歳から64歳までの生産年齢人口は、当面の間、増加傾向にあることも、追い風になります。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/countryreport_Bangladesh.pdf 

 

現在のバングラデシュの主な製造業は、縫製製品になります。今後、この工場団地に多くの日系企業が新規に工場を設立すると、タイやベトナムで確立された製造業のインフラ整備が進みます。

 

さて、中小企業が、海外に工場設立のような新規投資を行う場合、上記のような一般的な情報に加えて、入念な事前準備が必要です。事前準備は、数多くの項目が含まれますが、私の経験上最も重要なことは、新規工場で作った製品の販売先の確認・集客の目処をつけておくことです。

 

ジェトロ 2021年度「海外進出日系企業実態調査」の結果アジア・オセアニア編をみますと、今後1~2年の事業展開の方向性として企業が上げたのが、「販売機能」拡大であり最多の59.7%を占めました。

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/6e5157e362606548/20210045.pdf 

 

これは、海外進出済みの企業が海外事業から撤退する最も大きな要因が、販売不振・集客の困難さによることによります。

 

特に中小企業にとって、継続的な海外販売会社開拓・集客を行うことは、必要であり重要なことになります。

 

これは、国内外の事業環境が継続的に変化し続けており、その環境に合わせるとともに、競合企業との競争にも打ち勝つ必要があることによります。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 


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日経記事;『[FT]移民への魅力が薄れた英国、人材獲得競争でも不利に』に関する考察 [海外進出・海外移管]

                    2022年8月8日


皆様、


こんにちは。


グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。


 


88日付の日経新聞に、『[FT]移民への魅力が薄れた英国、人材獲得競争でも不利に』のタイトルで記事が掲載されました。


 


本日は、この記事に関して考えを述べます。


本記事の冒頭部分は、以下の通りです。


Financial Times


われわれは今起きていることは昔から変わっていない、といとも容易に思い込みやすい。英国各地で観測される30度以上の気温、選挙でおおむね左派政党に投票する高学歴の人たち、高齢化で人口危機に直面している日本やイタリアーー。。。』


 


このFinancial Timesの記事の骨子は、英国は移民を受け入れることにより、今までの間、英国の65歳以上の人口比率は欧州の中で4番目に若くなり、高齢化率は欧州の平均より2%低くなった。


 


65歳未満の人口が今まで英国の経済発展を支えてきたが、現在の英国は意味の受け入れに制限を設ける動きになっている。との指摘です。


 


『移民への経済的な優遇策を減らし、国を率いる政治家が反移民の姿勢を強めても、国力を維持していけると考えるのは甘いだろう。』と結んでいます。


 


私は、支援先企業の海外販路開拓・集客支援時に、海外対象地域や国の選択において、最優先で確認する経済指標があります。


 


それは、15歳から64歳までの生産年齢人口です。この生産年齢人口は、日本が参加しています経済協力開発機構(OECD)で定義されています。


 


生産年齢人口は、地域や国の経済力の源泉の一つになります。生産年齢人口は、自分で働くことで稼ぎ、稼いだお金を使う人たちになります。


 


生産年齢人口が多いと、働く人たち、つまり豊かな労働力をもつことになります。同時に、中間所得層を中心に大きな市場が存在していることになります。


 


現在のアセアン地域では、ベトナムの2022年での最新の生産年齢人口は67,365,373人で、総人口に対する割合は68.62%となっています。


 


ベトナムの生産年齢人口は、今後とも緩やかに伸びる予測になっています。


 


一方、タイの生産年齢人口は、2022年での生産年齢人口は49,079,452人で、総人口に対する割合は70.16%です。


 


タイの生産年齢人口比率は、ベトナムより高くなっていますが、生産年齢人口の伸びがなくなっています。今後、タイの生産年齢人口比率は、漸減していきます。


 


また、JETROの「新型コロナ禍2年目のアジアの賃金・給与水準動向(2021年)」をみますと、ベトナムの製造業の作業員・月額基本給(2021年)は、平均値でUS$265となります。


https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2022/ea6f8923fcf2600a.html 


 


タイの製造業の作業員・月額基本給(2021年)は、平均値でUS$433となります。タイの平均賃金は、ベトナムの平均賃金の1.63倍になります。


 


しょうしょう乱暴な言い方をしますと、現時点でベトナムでは新規に工場建設を行うことにより、労働力の確保が可能です。


 


タイの場合、賃金が高い生産年齢人口がいますので、豊かな中間所得層が存在しますので、BtoCおよびBtoBの両タイプのビジネスにとって、販路開拓・集客を積極的に行う市場となります。


 


ベトナムでは、毎年労働者賃金が上昇しています。ベトナムに進出済みの日系企業にとって、従業員の賃金上昇は最大の経営上の問題点となっています。さらに、20227月には、2年半ぶりに地域別の最低賃金が引き上げとなりました。


 


このような経済環境下では、いずれベトナムは、タイと同じようになり、製造工場の進出先としてではなく、豊かな中間所得層が存在する魅力的なBtoCおよびBtoBの両タイプのビジネスの対象国となります。


 


日本の生産年齢人口は、1995年をピークに減少しており、2015年の生産年齢人口は7,592万人、2030年には6,773万人、2060年には4,418万人にまで減少すると見込まれています。


https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc111110.html 


 


日本の市場規模は、急速に減少しており、魅力的ではありません。私の支援先企業が、新規事業立ち上げ時には、日本だけでなく、欧米アセアンなどの海外市場での販路開拓・集客を行う理由がそこにあります。


 


このように、生産年齢人口を経済環境や市場規模などをはかる指標の一つとして、活用することは有益です。


 


よろしくお願いいたします。


 


グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁 

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日経記事;『ベトナム最低賃金、6%引き上げで決着 来月1日から』に関する考察 [海外進出・海外移管]

                    2022年6月28日


皆様、

こんにちは。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

614日付の日経新聞に、『ベトナム最低賃金、6%引き上げで決着 来月1日から』のタイトルで記事が掲載されました。

 

本日は、この記事に関して考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『ベトナム政府は71日に当初の予定通り月額最低賃金を平均で6%引き上げる方針を決めた。4月中旬に政労使でつくる国家賃金評議会で合意していたが、経済界などから異論が出ていた。新型コロナウイルスの流行で据え置かれていた最低賃金の引き上げは約2年半ぶり。。。』

 

以前のブログ・コラムで、国内中小企業が労働コストの安い国に工場を新設する際、当面の安さだけに注目して進出すると、後で大きな負の影響を受けるリスクがあることを述べました。

 

一般的に、国内中小企業が海外に工場を新設するときに考える必要がある項目は、以下の通りです。

 

1.現在および近未来の労働賃金

2.労働力の確保の容易さ

3.対象国の人の勤勉さ

4.社会インフラの整備状況(港湾施設、道路、水道、電気、その他のエネルギー供給状況など)

5.政治的な安定さ

6.社会的な安定さ

7.消費市場への近さ、など

 

上記項目に加えて、ここ7~8年くらい前から、対象地域の政治体制や当該国の経済・安全保障などの要因を考える必要が出てきました。

 

また、政治的な対立が、部品調達や物流にも大きな影響を与えることが多くなっています。

 

米中対立は、その典型例です。さらに、ロシアのウクライナ侵略も、大きな影響を与えています。

 

米中対立が深刻化する前、国内製造企業は、グローバル化の波に乗って、自社の事業に最適なやり方を採用して、中国や東南アジア、米国、欧州などに投資したりして、積極的に進出していました。

 

グローバル化の定義については、日本政府は、「グローバル化とは、資本や労働力の国境を越えた移動が活発化するとともに、貿易を通じた商品・サービスの取引や、海外への投資が増大することによって世界における経済的な結びつきが深まることを意味する。」としています。

 

また、世界銀行はグローバル化を「個人や企業が他国民と自発的に経済取引を始めることができる自由と能力」と定義しています。「自由」とは国境を越えて資本・労働力等の移動に障害がないこと、「能力」とは国境を越えて商品・サービスを提供し、あるいは他の国で経済活動をする能力があることを意味するとしています。

 

グローバル化は、世界経済を大いに活性化して、事業規模の拡大に貢献しました。

 

しかし、現在の世界情勢は、グローバル化がもてはやされた時期とは大きく異なります。国内企業が、単純に工場新設などの投資案件を簡単に決められる状況になっていません。

 

特に、中小企業は、海外への新規工場設立などの投資に慎重になる必要があります。私は、自分の支援先企業には、当面の間、国内からの輸出事業の拡大に集中するようにアドバイスしています。

 

このような状況下でも、消費市場に近いところに、工場を新設する必要がある場合があります。

 

この場合、東南アジアを事例にして、新規工場の新設先を検討するときに、上記考慮すべき項目のうち、1項及び2項について考えを述べます。

 

1.現在および近未来の労働賃金

東南アジアの労働賃金は、JETROなどの公的機関が定期的に調査しています。例えば、JETROの『2020年度 海外進出日系企業実態調査』には、製造業の現場作業員、エンジニア、マネージャー、あるいは非製造業のスタッフ、マネージャーの国別賃金比較ができるようになっています。

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/b5dea9948c30e474/20200017.pdf 

 

本日の記事では、ベトナムの最低賃金の引上げについて書かれています。ベトナムの製造業・作業員の平均賃金は、インドやフィリピンよりも安くなっています。

 

どの国でも労働賃金は上がっていきますので、各種資料から平均賃金の上昇予測率を確認することも必要です。

 

2.労働力の確保の容易さ

一般的に労働力の目安としては、各国の15歳から64歳迄の生産年齢人口が用いられます。生産年齢人口は、現時点での絶対数と今後の伸びを見る必要があります。

 

下記日本政府の資料に、各国の生産年齢人口が示されています。

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2017/02/p058_t2-4.pdf 

 

ベトナムの場合、2015年に6,557万人であり、2030年までは増加する予想になっています。その後、漸減していきます。

 

ちなみに、この資料では、日本の生産年齢人口は2000年に8,573万人でピークとなっており、その後、急速に減少しています。2050年には、5,505万人まで減る予測になっています。非常に深刻な事態です。

 

最近、テスラモーターズのトップである、イーロン・マスク氏が『このままでは日本が消滅すると言ってます』根拠の一つになります。日本政府や国民には、危機感がないようです。。。

 

以上、ベトナムの最低賃金の引上げに関して考えを述べました。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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日経記事;『日本企業、東南アにシフト 駐在員数・投資が中国逆転』に関する考察 [海外進出・海外移管]

                                                2018年11月4日

皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。


11月4日付の日経新聞に、『日本企業、東南アにシフト 駐在員数・投資が中国逆転』のタイトルで記事が掲載されました。


本日は、この記事に関して考えを述べます。


記事の冒頭部分は、以下の通りです。


『日本企業が東南アジアに重点を置く姿勢が鮮明になっている。海外駐在員の配置数や対外投資額は5年間で中国向けを逆転した。中国の人件費高騰を受けた製造業の移転や、内需に期待する消費財企業の東南アジア進出が相次ぐ。米中貿易戦争の影響で輸出拠点を移すケースも増えているが、東南アジアの人件費高騰や通貨安など地域集中にはリスクも伴う。。。』


私は、11月1日に、日経記事;『日用品、国産を対中輸出 資生堂など 高品質強みに増産投資』に関する考察 [インターネットマーケティング]のタイトルでブログ・コラムを書きました。


本日も、中小を含む国内企業の海外展開のやり方について、記事を書きます。


一般的に、国内企業が海外で行う販路開拓、製造工場の建設・子会社や営業所の設立などの海外投資を行うときに、アセアン地域を選ぶことが多いとの印象をもっています。


これは、今までの経営コンサルタントとしての経験から、日本企業にとってアセアン地域の国ぐには、親日的であること、時差がほとんどないこと、飛行機による移動時間が長くないこと、有色人種であり親近感が持てることなどの理由から、事業展開しやすい、あるいは、投資しやすいなどの認識をもたれる傾向があることが、影響していると考えています。


日本企業が、海外投資を行う場合、中長期的な視点から計画・実行することが多いです。


その典型的な事例が、タイへの多くの国内製造事業者の数十年に渡る長期的な投資です。


これは、国内製造事業者が今のアセアン地域で新規投資先を探していたとき、政治が安定している、親日である、労働者賃金が安い、労働者が勤勉であることなどが決め手となって、多くの国内企業が、バンコク周辺の工場団地への投資を決めて、実行しました。


これらの投資の担い手は、自動車や電気電子機器関連のメーカーです。


この長期的な視点からの投資の結果、現在のタイは、アセアン地域で最も経済発展を成し遂げた国になっています。


タイでは、、多少の政治的な混乱があっても、経済状態は良好であり、失業率は、実質的にゼロ%に近い状態にあります。


現在のタイは、労働者賃金が高いことと低い失業率であることから、国内製造事業者にとって、新規工場建設を行うのには、一般的に適しません。


代わりに、タイの魅力は、安定した労働者環境が生み出す「豊かな中間所得層」にあります。


多くの国内企業が、BtoCタイプのビジネス(生活雑貨・日用品、アパレル、飲食や各種サービスなど)をタイで展開しており、一定程度の事業収入を確保・拡大しています。


また、タイから日本への観光客も多くなっています。国内のインバウンドビジネスでも、タイは存在感を増しています。


現在のアセアン地域の中で、次のタイになるのは、ベトナムであると考えています。。ベトナム人は、一般的にタイ人と同等あるいはそれ以上に勤勉であり、親日です。


ベトナムの労働者賃金は毎年上昇し続けていますが、現時点では、タイやマレーシアよりは安いので、国内製造事業者が、ハノイ周辺の工場団地に新規工場建設の投資を行っています。


その結果、ベトナム人の労働者賃金も上記しましたように上昇しており、労働者雇用が増えていますので、一定規模の中間所得層の市場が拡大しています。


そう遠くない将来、ベトナムは、第二のタイになりますので、国内製造事業者にとっては、新規工場建設に適さない国の一つになる可能性があります。


アセアン地域の中では、製造事業者が工場建設を行っている国は、ベトナム以外ではインドネシアとフィリピンが中心になっています。


両国とも、豊富な労働力をもっています。しかし、両国の政府は、労働者賃金を毎年上昇させることを重要な政策の一つにしていますので、これらの国ぐにでも、安い労働力に頼った工場経営ができなくなる可能性を常に想定することが重要であり、必要になります。


一般的にアセアン地域の国は、日本にとって投資や販路開拓をしやすい対象となります。


しかし、現時点でのアセアン地域の安い労働力に過度に頼った工場建設や投資を行うと、足元をすくわれる可能性があることを、十分に認識しておく必要があります。


たとえば、日本国内と同じように、製造コストが上昇しても、競争力のある商品開発・実用化を行って価格競争力を維持強化する、北米や欧州などの巨大市場で、販路開拓・集客を積極的に行う、などの経営姿勢も重要になります。


今後、中小企業は、アセアン、北米、欧州、中近東などの政治的・経済的な事業環境は常に流動的ですので、インターネットやテレビ・新聞記事、書物などの媒体から、最新情報をつかんで、客観的・合理的な情報やデータなどから、現状分析・行動計画の立案・実行する経営姿勢が重要になります。


中小企業は、一般的に、経営者の判断で柔軟に動けることができます。今後、中小企業が海外展開を行う場合、上記する複数の情報源から入手した情報・データの中から、可能な限り合理的な、あるいは客観的なものを収集することも、重要になります。


よろしくお願いいたします。


グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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日経記事;『最低賃金上げ アジア席巻 生産性の伸び上回る 自国民優遇「人気取り」外資が警戒』に関する考察 [海外進出・海外移管]

                 2018年10月28日

皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。


10月28日付の日経新聞に、『最低賃金上げ アジア席巻 生産性の伸び上回る 自国民優遇「人気取り」外資が警戒』のタイトルで記事が掲載されました。


本日は、この記事に関して考えを述べます。


記事の冒頭部分は、以下の通りです。


『東南アジアの各国が法令で定める最低賃金を大きく引き上げている。新興国の賃上げは消費の市場を広げるが、生産性の伸びを上回る賃上げは外資の投資を鈍らせる恐れがある。自国民の優遇を強める政権の姿勢が背景にあり、労働力が安価なカンボジアの最低賃金も数年後にはマレーシアなどに追いつく。新興国のポピュリズム的な政策を前に、日本企業もアジア進出の戦略見直しを迫られる。。。』


一般的に最低賃金とは、政府が決定するものであり、企業が従業員に払う最低限の時給や月給を意味しています。対象は、全労働者に及びます。企業が支払う賃金が最低賃金を下回ると処罰の対象となります。


かって、多くの国内製造事業者は、安い労働力確保のため、中国に工場を建設して、国内から多くの工場を移管しました。


その後、中国国内の労働賃金が上昇したこと、地方から都市部への人口移動が少なくなり労働力確保が難しくなったこと、および日本と中国の政治的関係が悪化したことなどの要因により、多くの労働集約型の工場が、中国からベトナム、インドネシア、ミャンマー、バングラデシュなどの、労働賃金が安い国に移管されました。


タイの場合、他のアセアン地域の国と違った動きをしています。国内製造事業者は、第二次世界大戦後から、徐々にタイのバンコク周辺の地域に、自動車産業や電気電子機器産業を中心に数十年かっけて工場建設などの投資を行ってきました。
タイに進出している企業数は、数千と言われています。


これは、日本とタイの関係が良好であることと、一般的にタイ人が真面目で勤勉であることから、国内製造事業者は、良質な労働力確保を相対的に安い労働者賃金で確保できたことによります。


このタイでは、15歳から64歳までの生産年齢人口が、2015年ころをピークに徐々に低下しています。また、タイの失業率は、現時点でほとんどゼロパーセントに近い状態にあること、および労働者賃金も毎年上昇していることから、新規にバンコク周辺の工場団地に工場建設する動きは、低くなっています。


タイでは、上記社会環境下で、中間所得層が多くなっており、消費意欲が大幅に向上しています。


国内企業の場合、BtoCタイプのビジネスを展開する、飲食や各種サービス、流通などの事業者が数多くバンコクに進出しています。


製造事業の場合、現時点で国内企業の工場建設の受け皿となっていますのは、ベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマーなどです。


これらの国ぐにでも、本日の記事にありますように、労働者賃金が毎年上がっていきますので、そう遠くない将来、ベトナム、インドネシア、フィリピンでの労働者賃金は、タイと同じような水準になる確率が高くなっています。


特に、繊維や靴などの労働集約型製造事業者は、高騰する賃金の影響をまともに受けることになります。


これらの事業者は、数年先を見通した上での工場経営を考える必要があります。


一方、ベトナム、インドネシア、フィリピンなどの国で、労働者賃金が上昇し続けると、巨大な中間所得層が生まれますので、国内企業にとっては、新規市場となります。


今後、中小の製造事業者は、創意工夫して労働者賃金の上昇の影響を最小化するために、製造工程を見直して、部分的にも産業ロボットなどの活用も含めて、自動化を含めた生産性向上を実現する必要があります。


現在、一つのやり方として、事業の役割分担を中小企業同士で行って、製造事業を委託して集約化する動きもあります。


現在比較的労働者賃金が安いミャンマーやバングラデシュなどのアジアの国でも、労働者賃金が上昇するとの前提で、数年先を見据えて今から準備する考え方が重要であり、必要になります。


よろしくお願いいたします。


グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁








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日経記事;『欧州データ規制、情報漏洩に補償 損保、対応保険を投入』に関する考察 [海外進出・海外移管]

                                                       2018年8月12日


皆様、
こんにちは。


グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。


8月12日付の日経新聞に、『欧州データ規制、情報漏洩に補償 損保、対応保険を投入』のタイトルで記事が掲載されました。


本日は、この記事に関して考えを述べます。


記事の抜粋内容は、以下の通りです。


『欧州連合(EU)が5月に個人情報保護の新ルールを施行したことを受け、損害保険大手各社は情報漏洩事故などに幅広く対応する保険を投入する。新ルールは個人情報の欧州域外への移転などをめぐり厳しい規制を課しているが日本企業の対応は遅れている。損保各社はサイバー攻撃による被害を含めた一体的な補償を用意し、企業の対策強化を促す。。。』


この記事のポイントは、欧州(EU)が適用開始したGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)に関して、東京海上日動火災保険などの保険会社が、GDPR関連で行う必要のある行為に対する保険、一般的には、「サイバーリスク保険」のように、サイバー。。。の名前の保険を商品化したことです。


記事によると、「保険料は企業規模などによって異なるが、補償額が10億円のケースで年100万円程度からが目安となりそうだ。」とのことです。


私は、自分の支援策企業(中小企業)の多くがEUを対象とするビジネスを行っていますので、中小企業としてできる範囲(ベストエフォート)で対応を行ってもらいます。


GDPRについては、多くの情報が開示されています。私は、下記JETROのWebサイトに掲載されています各種情報を参考にすることを勧めています。
●「EU 一般データ保護規則(GDPR)について」
https://www.jetro.go.jp/world/europe/eu/gdpr/ 


GDPRへの対応に関して、上記のような保険に加入すれば、多少の気休めにはなりますが、基本的には、中小企業といえども、GDPRの規制内容を理解して対応することが基本です。


上記JETROのWebサイトに掲載されています実務ハンドブックが、有効です。


GDPRは、EU内のすべての個人データの処理と移転に関する規則です。個人データとは、JETROのWebサイトには「識別された、または識別され得る自然人(「デー
タ主体」)に関するすべての情報」として定義されています。例としては、以下のものになります。
・自然人の氏名
・識別番号
・所在地データ
・メールアドレス
・オンライン識別子(IP アドレス、クッキー識別子)
・身体的、生理学的、遺伝子的、精神的、経済的、文化的、社会的固有性に関する要因など


要は、GDPRの規制対象は、個人データのすべてです。規制される企業は、大手だけでなく、ベンチャーや中小企業すべてが含まれます。


GDPRに違反した企業には、最大でその企業の全世界での年間売上高の4%または2000万ユーロ(1ユーロ130円換算で約26億円)のうち、いずれか高いほうを制裁金として払う必要があります。


個人データの処理に関しては、以下のように定義されています。
「自動的な手段であるか否かに関わらず、個人データ、または個人データの集合に対して行われる、あらゆる単一の作業、または一連の作業」
例としては、以下のようになります。
・クレジットカード情報の保存
・メールアドレスの収集
・顧客の連絡先詳細の変更
・顧客の氏名の開示
・上司の従業員業務評価の閲覧
・データ主体のオンライン識別子の削除
・全従業員の氏名や社内での職務、事業所の住所、写真を含むリストの作成


EEA【European Economic Area;欧州経済領域、欧州経済地域。EU(欧州連合)にEFTA(エフタ)(欧州自由貿易連合)のノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインを含めた共同市場】域外への個人データの移転は、原則として違法となります。


移転先の国・地域に「十分性」(法整備などに基づき、十分に個人データ保護を講じていること)が認められた場合、または適切な保護措置を取った場合などには、例外的に適法となります。


EUと日本は、「十分性認定」について交渉した結果、7月に日欧間で個人情報を相互に移転する枠組みを作ることで最終合意しました。今年の秋頃には、両政府が署名すれば、日本はEUと同じ扱いとなり、上記移転に関する違法性はなくなります。


この十分製認定の権利を享受するには、EUに関する個人データを扱うサーバーやデータセンターを日本国内に置いておく必要があります。クラウドサービスを使うときは、当該事業者のデータセンターの場所を確認しておき、必ず日本国内にあるものを利用することが必要です。


多くの国内企業は、拠点をEUに置かなくても、日本からインターネットを使ってWebサイトを通じて、ビジネスを行っています。


当然のごとく、これらの企業は、GDPRの規制対象になりますので、中小企業といえども厳格に遵守する必要があります。


私の支援先企業には、各企業の状況に応じてできることを一歩一歩行ってもらっています。


一つの例として、自社のWebサイトのセキュリティ能力向上のために、SSL(Secure Socket Layer)を採用してもらっています。


SSLの定義や内容は、SSLとは?の下記Webサイトをご覧ください。
https://cspssl.jp/guide/ssl.php


よろしくお願いいたします。


グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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