SSブログ

日経記事;『キリン、ミャンマー撤退の教訓 数字で測れぬ判断が必要に』に関する考察 [海外進出・海外移管]

                2022年8月29日


皆様、

こんにちは。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

829日付の日経新聞に、『キリン、ミャンマー撤退の教訓 数字で測れぬ判断が必要に』のタイトルで記事が掲載されました。

 

本日は、この記事に関して考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『キリンホールディングスがミャンマーのビール市場から撤退する。昨年2月の軍事クーデター発生後、合弁相手の国軍系企業に入る資金が民主派弾圧に使われると批判されてきた。新興国リスクにのみ込まれた同社の経験から、読み取れる教訓は何だろうか。。。』

 

キリンがミャンマーのビール事業から撤退することを決意しました。一時期、ミャンマーに民主政権が存在していたころ、同国はアセアン地域の中で残されたフロンティア市場としてもてはやされました。

 

その時期に、私の支援先企業にも、ミャンマーの首都であるヤンゴン郊外に工場設立の投資を行う提案が入りました。

 

その企業は、当時、海外事業を始めてから何年も経っていなかったので、社長にはミャンマーへの新規投資は行わず、その時に行っている海外輸出事業に注力するようアドバイスしました。結局、当該企業は、投資を行いませんでした。

 

当時、私がミャンマーへの工場建設に賛成しなかったのは、電気や水道などの社会インフラが脆弱であったことに加えて、民主政権が長続きするかどうか、危惧したことにあります。

 

ミャンマーの過去の軍事政権は、とても強硬であり、躊躇なく軍事力を使って国民を弾圧してきた歴史をもっています。つまり、同国は政治的なリスクが常に高い国になります。

 

キリンホールディングスのような大手企業と異なり、中小企業が海外投資に失敗すると、多くの場合、その企業にとって致命傷になるリスクがあります。

 

中小企業の海外事業展開、特に、工場建設や子会社設立などの投資は、リスクを最小化して行うことが基本中の基本です。

 

特に、政治的なリスクが高い国に投資するときには、慎重の上にも慎重を期します。現時点では(アフターコロナを含めて)、日本と同じような法治国家でない国には、新規投資を行わないようアドバイスしています。

 

私が過去に、事業撤退の支援依頼を受けた案件(約15件)のほとんどが、政治的・社会的リスクが高い国での事業でありました。

 

ここで言います政治的・社会的リスクが高い国は、民主的な法治国家でない、法律はあっても行政当局が恣意的に法律を適用する、軍の影響力が高い、宗教団体の影響力が高い、などの国を指します。

 

私は、新型コロナウイルスの影響拡大前から、米中対立が高くなった時期以降、それまで多くの国内企業が行っていた一種のグローバリゼーションの考え方に基づいた、新規投資を行わず、当面の間、国内からの輸出事業に専念するよう、支援先企業に求めてきました。

 

これは、上記投資リスクを最小化するためです。

 

さて、私は、支援先企業から海外事業展開の支援を要請される場合、まず、下記4つのポイントを検討・確認します。

・目的の確認

・相談企業の経営資源・体制の確認

・海外展開の方法と手段

・事業計画立案とリスク管理

 

製造事業者の場合、海外事業展開の目的は、主に以下のようになります。

1. 自社商品に自信があり、海外市場での販路開拓・集客を行う。

2. 国内取引先が生産拠点を海外に移した。

3. 製造コストを削減する。

4. 金融機関などの取引先に勧められた。

5. 国内市場での事業収益が増えない。

6. 競合企業が海外事業展開で成功して、刺激を受けた。など

 

上記目的のうち、2項と3項は明確な工場建設になりますので、さまざまな視点からリスク分析を行うことになります。

 

そのリスク分析とも密接に関係するのは、相談企業の経営資源・体制の確認です。主な検討・確認事項は以下の通りです。

・海外事業展開以外の方策はないのか。

・海外事業展開がその企業の経営の安定さに影響が出ないか。

・海外事業展開のメリット、デメリットを明確化できているか。

・社内に海外事業展開ができる人的資源があるか。

・販売あるいは製造する商品の、潜在顧客と販路が明確になっているか。

・競合先の状況や、競争に打ち勝つための分析ができているか。など

 

並行して、海外事業展開のやり方について、整理してどの方法が当該企業にとって最適か、検討・確認します。

●販路開拓・集客・輸出

@直接販売(インターネット通販、特定の取引先に輸出)

@流通業者を通しての販売(代理店、販売店の活用)

●投資を伴う事業展開

@自社工場設立

@販売子会社設立

@業務委託、技術提携

@生産・販売委託

@技術供与、など

 

上記状況や各項目の検討・確認を通して、その企業に適切な事業計画を作成します。一般的に事業計画には、生産計画、販売計画、設備計画、人員計画、資金計画が含まれます。

 

事業計画を作成しても、その実行段階に入ると、多くの場合、決して事業計画通りに海外事業を行えません。

 

したがって、半年あるいは、1年ごとに、事業計画の見直し、再検討、再設定が必要になります。

 

この事業作成と実行フェーズで最も大事なことの1つに、明確な撤退基準の設定があります。

 

この撤退基準がないと、先の見通しが見えない状況下で、ずるずると海外事業展開を継続する最悪の状態に陥ります。中小企業にとっては、命取りになります。

 

撤退基準の事例は、例えば以下のようなものです。

●撤退基準

・三年間で黒字にならない。三年間連続して赤字

・三年間で所定の売上金額を達成できない。

・二年間でxx億円投資する。三年後に黒字化出来ないなら止める。など

●一旦決めたら、機械的に適用することが重要です。主観的な判断を入れないようにします。

 

以上、本日はキリンホールディングスのミャンマー事業からの撤退に関して、私の海外事業展開支援の考え方の一部を述べました。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 

 


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。