日経電子版記事;『デュポン、知財紛争で韓国大手に「完勝」日本企業が注目』に関する考察 [NDAの扱い]
2012年9月10日
皆様、
おはようございます。
グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。
9月9日付の日経電子版に、『デュポン、知財紛争で韓国大手に「完勝」日本企業が注目 製販20年禁止勝ち取る、アラミド繊維』のタイトルで記事が掲載されました。
本日はこの記事に関して考えを述べます。
記事の主な内容は以下の通りです。
『米化学大手のデュポンが代表的な高機能素材のアラミド繊維を巡り、韓国繊維大手のコーロンと激しい知的財産権訴訟を繰り広げている。
8月30日には米連邦地裁がデュポンの訴えを全面的に認める命令を出し、コーロンは韓国工場の操業停止に追い込まれた。争点は元従業員を通じた技術流出。紛争の行方は、韓国企業との間で同じ問題に悩む日本企業にとっても注目を集めそうだ。
「判事の決定に満足している。40年以上かけて培ってきた知的財産権が守られた」(デュポン)
「当社の従業員の職場を奪う乱暴な命令で、(控訴や執行停止の仮処分申請などの)法的な手続きに入る」(コーロン)
米バージニア州リッチモンドの連邦地裁の判事が8月30日に出した裁判所命令は異例の内容だった。コーロンに対し、デュポンから盗用したとされる秘密情報を今後一切利用しないように命じたほか、米国を含む全世界でのアラミド繊維の製造と販売を20年間禁止したのだ。
実は、判決自体は2011年9月に出ていた。コーロンの知財盗用によるデュポンの損害額は9億1900万ドル(約730億円)と認定。同年11月には懲罰的な賠償金を上乗せして、総額9億2000万ドルの支払いをコーロンに命じていた。
■韓国工場も停止
韓国の報道機関によるとコーロンの年間純利益は200億円前後で、賠償金の支払いをのめば経営が傾きかねない。控訴の手続きに入っていた直後に製販禁止命令の追い打ちを受けた格好だ。
アラミド繊維の技術流出を巡る米韓の訴訟は日本も無縁ではない。
特許などの知財権は国ごとに効力を認める「属地主義」が原則。米裁判所の決定は基本的に米国内だけで効力があるため、コーロンは他国での製販禁止まで従う必要はない。
判事は「命令に従わず営業を続けるのなら、先の判決の賠償金では済まなくなる」と警告。デュポンもコーロンに対する厳しい姿勢を崩さず、同社は韓国のアラミド繊維工場の操業を止めざるを得なくなった。
韓国内では「米国の横暴を許さず、政府は世界貿易機関(WTO)に提訴すべきだ」との意見も出始めた。が、裏返せば、米地裁判事の目にはコーロンの行為がそれだけ悪質に映ったということにほかならない。その論拠が、デュポン元技術者の囲い込みだった。
アラミド繊維 ナイロンの一種で、重量比で鉄の6~8倍の強度を持ち、熱や化学薬品に強い。ブレーキ摩擦材、タイヤや光ファイバーケーブルの補強材、防弾チョッキの素材などに使われ、世界的に需要が増えている。1位の米デュポンと2位の帝人で世界シェアの8割以上を占めており、韓国コーロンのシェアは10%未満とみられる。
今回の米連邦地裁の決定で、コーロンは米国への輸出ができなくなった。また韓国工場の操業停止が長引けば、自動車部品メーカーを中心に取引先が離れるとみられ、代替需要の一部を帝人が取り込む可能性がある。。。。』
退職した従業員が競合先に就職後に、元の企業の特許やノウハウなどを流出、或いは、開示する問題は古くて新しいことです。
以前にも国内家電大手は、何度か大量リストラを行いました。その結果、多くの日本人技術者が、韓国や中国企業に就職しました。
その後に、韓国や中国企業が技術力を向上させたのは周知の事実です。韓国や中国企業は、最新技術情報獲得に熱心です。
その熱心さが、時として競合企業の機密情報を不正な方法を取ってでも最新技術を獲得する行動につながっています。
近々に大手家電メーカーは、再び大量従業員(1万人相当)のリストラを行いますので、再度、機密情報が競合先に流出するリスクが発生します。
通常、退職者は元の企業や職場で得た機密情報を第三者に開示しないということを約束して、「機密保持契約書;NDA(Non-Disclosure Agreement)を結びます。
従って、機密保持は担保されるのが基本です。しかし、実態はかなり異なります。
かって、国内大手メーカーの中には、特別な技術を持った中小企業に技術者を派遣して、詳細な説明を聞いたりしてノウハウを吸収し、自社の開発技術としたところもありました。
経済産業省は、2011年年12月1日に 「営業秘密管理指針(改訂版)」 を公表しました。「営業秘密管理指針」は、以下のことがポイントになっています。
「営業秘密管理指針(改訂版)」のURL;http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/111216hontai.pdf
1.「営業秘密管理指針(改訂版)」では、改正不正競争防止法において刑事罰の対象とされた行為の明確化を行うとともに、より現実的・合理性のある秘密管理の方法が提示された。
2.中国,韓国,台湾などによる営業秘密の侵害によって日本企業の技術的優位性が揺らぐリスクが増大し,実際に事例が発生している。また、競合企業による不正行為などに加えて,元役員や元従業員といった退職者を通じた営業秘密侵害が深刻化している。
2005年の不正競争防止法の改正では,(1)営業秘密の国外使用・開示処分の導入,(2)退職者への処罰導入,(3)法人処罰の導入,が主なポイントになっていました。
最新の改定では、中小企業を意識して営業秘密侵害を防ぐ手段についても書かれています。
私も時々、中小企業から機密情報の管理のやり方や、機密保持契約書の作成・管理などで相談を受けて、支援しています。
一番大事なことは、機密情報をどう防ぐかです。何でもかんでも機密情報にする企業がありますが、これでは本当に重要な秘密情報が埋もれてしまって管理しづらい状況に陥りやすくなります。
最も基本的な条件は,情報を区分して重要な秘密情報を厳格に管理していることです。情報の区分では,営業秘密の対象となる情報に加え,情報にアクセスできる人を特定する必要があります。
次に重要なことは、秘密情報の管理体制を確立しておくことです。具体的には、情報を収録した媒体(文書やCD-Rなど)や保管場所などの管理,あるいは情報を収めたコンピュータの管理,アクセス権者の明確化しておくことです。
最近ではパスワード設定したデータセンターで保管する方法が広がっています。
情報区分・管理を行う事により,秘密情報以外の情報が秘密情報に混入すること(コンタミネーションと言います)を防ぐ体制の整備が必要です。
現在、ほとんどの中小企業でパソコンやITを使っていますので、これらのシステムを上手く活用して、機密情報を不正アクセスすることを防止する方法も大型投資なしで導入できるようになっています。
機密情報の不正開示は明らかに犯罪です。上記不正競争防止法の法律で機密情報の不正開示は、海外企業であろうとも処罰対象になります。
法律面では、機密情報の不正開示対応は明確に規定されました。
あとは、企業がその機密情報をどう守るかの運用が課題になっています。特に、中小企業の場合、機密情報の管理体制があまいところが多いのも事実です。
中小企業は、国内外の競合他社から自社の財産である機密情報をどう守るか、真剣に考え・実行することが重要です。
なお、私は、2006年7月16日から8回にわたって「NDA(機密情報保持契約)の扱い」のタイトルでブログ記事を書きました。
URL; http://bzsupport.blog.so-net.ne.jp/archive/c357062-1
秘密情報の管理についてエッセンスを知りたい方は、先ずこのブログ記事を読むことをお勧めします。
よろしくお願いいたします。
グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁
「営業秘密管理指針(改訂版)」の公表について [NDAの扱い]
2010年4月22日
皆様、こんにちは。
グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。
経済産業省は、平成22年4月9日、「営業秘密管理指針(改訂版)」を公表しました。
これは、昨年の通常国会でなされた不正競争防止法の改正を受けて、経済産業省は、事業者の適切な営業秘密の管理に向けたアプローチを支援するため、「営業秘密管理指針」を改訂したものです。
1.「営業秘密管理指針(改訂版)」では、改正不正競争防止法において刑事罰の対象とされた行為の明確化を行うとともに、より現実的・合理性のある秘密管理の方法が提示されています。
また、中小企業者・ベンチャー企業が使いやすいように、管理しやすいチェックシートを入れたり、各種契約書のひな型例などの参考情報が入っており、使いやすいものになっています。
この改訂版は、有効なアイデアやノウハウなどを持つ中小企業やベンチャー企業が自社の知的財産をどのように守るか、或いは、どの程度まで相手方に開示するか、などの観点から書かれており、今までに比べてより実用的な内容に編集されています。
当該「営業秘密管理指針(改訂版)」は、下記WebサイトからPDFファイルとしてダウンロードできます。
URL;http://www.meti.go.jp/feedback/downloadfiles/i50908bj.pdf
2.中国,韓国,台湾などによる営業秘密の侵害によって日本企業の技術的優位性が揺らぐリスクが増大し,実際に事例が発生している。また、競合企業による不正行為などに加えて,元役員や元従業員といった退職者を通じた営業秘密侵害が深刻化している。2005年の不正競争防止法の改正では,(1)営業秘密の国外使用・開示処分の導入,(2)退職者への処罰導入,(3)法人処罰の導入,が主なポイントになっていました。
今回の改訂版は、この営業秘密侵害を防ぐ手段についても書かれています。
一般的に機密保持契約を結ぶと、秘密情報の不正な使用や第三者への開示に関して法的縛りを入れることが出来ます。
3.この法的保護をさらに有効なものにはするには、 「情報の区分」と「管理体制の整備」が法的保護の大きなポイントになります。
(1)最も基本的な条件は,情報を区分して重要な秘密情報を厳格に管理していることです。
情報の区分では,営業秘密の対象となる情報に加え,情報にアクセスできる人を特定する必要があります。
(2)次に重要なことは、秘密情報の管理体制を確立しておくことです。具体的には、情報を収録した媒体(文書やCD-Rなど)や保管場所などの管理,あるいは情報を収めたコンピュータの管理,アクセス権者の明確化しておくことです。
(3)情報区分・管理を行う事により,秘密情報以外の情報が秘密情報に混入すること(コンタミネーションと言います)を防ぐ体制の整備が必要とされています。
上記以外に重要なポイントが、この改訂版に書かれています。
秘密情報の管理に関心がある方は、この改訂版を読まれることをお勧めします。
ちなみに、私は、2006年7月16日から8回にわたって「NDA(機密情報保持契約)の扱い」のタイトルでブログ記事を書きました。
URL; http://bzsupport.blog.so-net.ne.jp/archive/c357062-1
このブログで書いた内容と今回の改訂版の基本骨子は同じです。
もし、秘密情報の管理についてエッセンスを知りたい方は、先ずこのブログ記事を読むことをお勧めします。
その後で、改訂版で詳細内容を確認しては如何でしょうか。
よろしくお願いいたします。
以上、
グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁
8. 秘密情報の受領・開示時の規則 [NDAの扱い]
こんにちは。
グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザーです。
本日は、2006年8月に書きました記事の加筆・修正を行わせて頂きます。
テーマは、NDAの扱いにについて書きました一連の記事の中の最終項である、8. 秘密情報の受領・開示時の規則 についてです。
秘密情報をどう管理するかとの観点で、具体的なやり方を例示して説明いたします。
秘密情報には、二つの種類があります。
一つは、相手先から受領する秘密情報で、ふたつ目は、こちらから相手先に開示する情報です。
(1)相手先から受領する秘密情報の扱い
A.先ず大事なことは、NDAを締結しても相手先から秘密情報を安易に受領しない事である。
相手先との会話や、自社内での検討に必要な最低限の情報を受領するようにします。
B.相手先から受領する場合、どの部分が秘密情報か相手方と確認する。(なんでもかんでも「秘密」情報ではありません。)
仮に既に公開されている周知の情報であれば、「秘」マークがついている情報は、秘密情報とせずに、「秘」マークを取ってもらうか、受け取らないようにします。
C.受領・開示するルートを決める。
情報を受領・開示するひとを限定し、窓口を特定します。
これは、相手先及び当方の受領側の双方に決めます。
D.受領リストを作成する。
このリストには、受領した情報の項目、日付と受領したひとを記録として残しておく。
受領出来るひとは、あらかじめ登録しておき、そのひと以外には情報は受領出来ないようにする。
(2)相手先に秘密情報を開示する場合
A.開示先の情報管理体制を確認する。
相手方が自社と同等以上の管理施策を採用しているか確認し、必要があれば改善を要求する。
B.開示先に、どの秘密情報を開示するかきちんと連絡や説明を行う。
開示先の意思を確認して、秘密情報を開示します。
C.上記(1)C項と同様に、受領・開示するルートを決める。
C.開示リストを作成する。
このリストには、開示した情報の項目、日付と開示先のひとを記録として残しておく。
(3)伝達方法の確定
相手先と自社の間で、秘密情報の受け渡し・伝達方法を決めておく。
A. 郵送、直接手渡しなどの方法を取る場合
特に秘密度の高い「特秘」の場合、送付・到達を証明可能な伝達方法を利用(書留、宅配便など)する。
B.現在は、eメールなどの電子情報で秘密情報をやり取りする場合が多いので、以下の要領でルール化しておくことをお勧めしたい。
・開示する情報に対するアクセス制限の方法の確認
・パスワードを伝達する場合は、別法で行う(電話にて口頭か別eメールで伝達など)
・暗号化や電子証明書の設定
・eメール件名/本文の秘密情報の記載の禁止
・受領・開示したeメールも記録する(受領/開示の記録として残す)など、
NDAの扱いに関する記事は、今回で終了させて頂きます。
本稿を含めてNDAの扱いに関して、ご質問などがある場合、本Webサイトの左にありますAll Aboutプロファイルの専門家に相談のタグからお問い合わせ願います。
私は、すぐにはご回答出来ない場合もありますが、24時間以内にはご連絡します。
よろしく御願いします。
以上、
グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー
7.自社技術が独自(オリジナル)であることの証明 [NDAの扱い]
2006年8月18日
今回は、7.自社技術が独自(オリジナル)であることの証明 の実施方法について述べます。
(1)自社の技術について自社内に留めておくと決めたもの以外は、基本的に特許、実用新案等の権利を取得すると決めて、出願します。
出願すれば、特許として権利確定していなくても、出願日が公的に明確化され、相手から秘密情報を使用したとのクレームを受けたとき、出願日が相手が公開した日にちより早ければそのクレームは無効になります。
(2)次に考えなければならないのは、相手先から同じ・或いは・類似した秘密情報を受け取る必要があるときです。
一番良いのは、(1)項で述べているように出願しておく事ですが、時間的に間に合わない事があります。
また、自社の方針として自社技術やノウハウを出願しない事もあります。
この場合、当該情報を隔離します。隔離して、これらの情報が自社内で見れないようにして、相手先から類似情報を開示されたときに、自社技術の独自性を維持出来るようにします。
隔離する方法は、幾つかあります。
⇒例えば、公証役場から確定日付を付与してもらう方法です。
◆自社の隔離する文書情報をダンボール等の箱に入れる。
◆或いは、文書情報をスキャナーで電子情報化して、CD-ROM等のメディアに入れる。CD-ROMメディアをダンボール等の箱に入れる。
◆これらの箱を閉じて、公証役場に閉じた日に対して、確定日付を付与してもらいます。
◆隔離した情報の箱は、自社技術の独自性を証明する必要があるまでは開きません。
◆隔離した情報は、リストを作成し記録として残します。
(3)その他の方法として、紛争が起こったときに自社の独自技術を他社の類似情報を使わずに開発・設計したものとして、文書で残しておくやり方があります。
ノートに研究記録として残すやり方です。
ぺんやボールペンで記述し、研究経過を記録し、記録日や記載者氏名を残します。
次回は、8. 秘密情報の受領・開示時の規則 について述べます。
今回の記事について、ご関心或いはご質問がある方は、私まで下記アドレスにeメールにてご連絡下さい。
私は、すぐにはご回答出来ない場合もありますが、24時間以内にはご連絡します。
よろしく御願いします。
以上、
6.他社の秘密情報の混入防止策 [NDAの扱い]
2006年8月15日
今回は、6.他社の秘密情報の混入防止策 について述べます。
以前の記事にも書きましたが、自社と相手先との間で競合状態な事業分野がある場合、NDA締結後に受領しました秘密情報が自社の情報と混入しないように、扱う必要があります。
相手の秘密情報が自社の情報と混じりあって区別がつかなくなる事態を避ける策をきちんと講じておく必要があります。
インターネット用語で言いますと、ファイアーウオールを作ることです。
具体的には以下の事を意識して行うようにします。
1.先ず、メーカーの例で言いますと、他社の秘密情報を扱う技術者は、自社内の他の技術者との当該技術に関する情報交換を制限する・禁止する必要があります。
具体的には、以下のことを実施します。
1-1.他社情報を扱うエンジニアの仕事する場所を競合する部隊のエンジニアとは別な場所にする
1-2.他社情報を扱う部隊の場所には入場制限を設ける
2.社内の会議で、相手先の秘密情報に関する事柄について説明する場合は、直接的な表現をしないで簡単に行うようにする。
3.上記1、2項は実務担当の方だけの間で行うだけでなく、マネージメントレベルでもきちんと実施する必要があります。
例えば、自社技術の開発部門と相手先の秘密情報を受領している部門の両部門の状況を知り得る立場にあるマネージメントへ、相手先の秘密情報に関連したレポートを行う場合、マネージメントレベルでの混入を避けるため、
・本秘密情報を直接的に表現することを避ける、
もしくは、
・必要最小限の表現にする
もし、小さい所帯でマネージメントレベルにおける混入が起こる事が避けられない場合、マネージメントによる情報発信には注意が必要です。
次回は、7.自社技術が独自であることの証明 について述べます。
今回の記事について、ご関心或いはご質問がある方は、私まで下記アドレスにeメールにてご連絡下さい。
私は、すぐにはご回答出来ない場合もありますが、24時間以内にはご連絡します。
よろしく御願いします。
以上、
5.秘密情報の保管・管理方法 [NDAの扱い]
2006年8月11日
今回は、5.秘密情報の保管・管理方法 について述べます。
◆保管方法の基本
5-1.秘密情報を見れる・アクセス出来る人たちを明確化・確定します。
⇒NDA締結後に本契約に従って相手より開示される秘密情報に接することが出来る人たちをリストアップした表を作成します。
この表には、以下の項目を盛り込んだものとして作成し、機密情報の関連事項を一覧にしてまとめておきます。
この表を見れば、秘密情報の扱いに関する全容をわかるようにしてしておきます。
A.NDAの締結日と秘密情報の開示期間
B.開示される情報の内容
C.秘密度;「特秘」、「秘」など
D.相手先の秘密情報のやり取り窓口
E.自社の秘密情報のやり取り窓口
F.自社で秘密情報を見れる人たちの氏名;必要に応じて「特秘」、「秘」で当該情報を見れる人を区分します。
5-2.受け取った秘密情報の内容を明確化します。
これについても、受け取る情報の扱いに関する項目を表の形にしてわかるようにしておきます。
例えば、以下の項目を入れておきます。
AからCは、上記5-1項と同じです。
D.自社の情報管理責任者
E.秘密情報の受領日
F.秘密情報のタイトルや内容
G.秘密情報の開示者・受領者
5-3.受領した秘密情報の回覧・閲覧・使用・コピー作成の記録をとっておきます。
秘密情報の回覧・閲覧・使用した時の担当者氏名、当該情報の内容、実施日について台帳の形で残しておきます。
コピーは、基本的に作成しない方が望ましいのですが、もし作成する場合、
コピー作成者、時期、作成枚数、使用目的等を記述した記録を取っておきます。
5-4.秘密情報の保管方法
⇒文書情報は、管理責任者が施錠管理できる金庫やキャビネットにて保管します。
⇒電子情報は、サーバー内にてアクセス出来る人たちを制限した形で管理します。
次回は、6.他社の秘密情報の混入防止策 について述べます。
今回の記事について、ご関心或いはご質問がある方は、私まで下記アドレスにeメールにてご連絡下さい。
私は、すぐにはご回答出来ない場合もありますが、24時間以内にはご連絡します。
よろしく御願いします。
以上、
4.秘密情報の共有方法 [NDAの扱い]
2006年8月5日
今回は、4.秘密情報の共有方法 について述べます。
秘密情報を関係者内で共有するには、幾つか下記のように注意すべきことがあります。
1.NDA契約内容に関する共有については、以下のことについて注意して行います。
1-1.秘密情報を扱う管理責任者を決める。
1-2.管理責任者は、NDAやその他秘密情報を含めた契約の内容を、関係者に説明し、守るよう周知・徹底する。
1-3.NDAや契約、或いは、M&Aや事業連携の話し自体について秘密にしておくことが必要な場合、管理責任者は、それらのことについて秘密情報として扱う。
2.社内での報告方法
2-1.社内の会議で、秘密情報を共有する関係者以外の人たちに他社の秘密情報を報告する場合、競合する部署・人たちへ情報が行かないようにする。
2-2.競合が生じない部署・人たちへの秘密情報の報告は、相手方の事前確認を行って同意を得ておく。
2-3.NDAの他社の対象秘密情報ではないが、自社の秘密情報でも他部署の秘密情報について会議にて報告・説明する場合は、その部署の同意を取っておく。
2-4.自分の所属組織の秘密情報を他部署に報告・説明するときの開示範囲について、事前に秘密情報の管理責任者に確認しておく。
今回は、ここまでとします。
次回は、5.秘密情報の保管・管理方法 について述べます。
今回の記事について、ご関心或いはご質問がある方は、私まで下記アドレスにeメールにてご連絡下さい。
私は、すぐにはご回答出来ない場合もありますが、24時間以内にはご連絡します。
よろしく御願いします。
以上、
3.秘密情報の扱い方 [NDAの扱い]
2006年7月29日
今回は、3.秘密情報の扱い方 について述べます。
他社から秘密情報を受領する場合、先ず気をつけなければならない事は、受け取った秘密情報が自社内で所有する情報と類似性があるかどうかです。
もし自社内に類似した情報があると、他社から受け取った秘密情報と自社で所有する情報と、混入する事を防ぐ手段を講じる必要があります。
もし混入してしまうと、NDAの機密保持条件に違反する可能性が出てきます。
そこで、混入する可能性がある場合、混入しないよう以下のように手立てを講じます。
1.秘密情報は、前回の2項で述べた、「特秘」扱いにして、アクセス出来る人を限定し、類似情報を扱っている人はタッチ出来ない・見れないようにする。
2.秘密情報の保管場所を特定して、限定されたメンバー以外は保管場所が判らないようにする。
3.秘密情報のコピーは取らない。もしコピーを取る必要がある場合、コピーを取った履歴が残るようにする。
4.相手からの秘密情報の返却や破棄についても、NDAの中に規定として盛り込み何時でも実行可能なように情報管理を行う。
自社から開示する秘密情報も同様に相手先に対して、状況に応じて返却・廃棄するように求めて行く事が必要です。
5.更に、混入防止を徹底するために、他社の秘密情報を扱う人たちと、自社内の類似情報を扱う人たちとの交流を、会議への同席も含めて制限するなどの処置をします。
また、秘密情報を保管する場所も、類似した情報を扱う人たちがいるところから、離して設置する工夫も必要になる場合があります。
今回は、ここまでとします。
次回は、4.秘密情報の共有方法 について述べます。
今回の記事について、ご関心或いはご質問がある方は、私まで下記アドレスにeメールにてご連絡下さい。
私は、すぐにはご回答出来ない場合もありますが、24時間以内にはご連絡します。
よろしく御願いします。
以上、
2.秘密情報の定義、区分、区別 [NDAの扱い]
2006年7月26日
今回は、2.秘密情報の定義、区分、区別 について述べます。
A.先ず、秘密情報の定義について説明します。
秘密情報とは何でしょうか?
よく新聞や小説で、マル秘扱いの情報について書かれていますよね。
このマル秘情報が、ここで言います、秘密情報になります。
マル秘情報には、マル秘マークが付いています。
逆に言いますと、マル秘マークが付いていない情報は、秘密情報ではなくなります。
NDAの対象になる秘密情報も同じ定義で規定されます。
即ち、 “Confidential”マークか或いは日本語で秘密である旨の表示、例えば、「秘」マークが付いた情報は、NDAのもとでの秘密情報となります。
また、NDA締結後に、相手側が会議の席上で口頭で説明したことや、写真・映像等で見せたものについて秘密情報だと宣言した場合、これらの情報もNDAの対象になります。
ここでより注意する必要がありますのは、紙や電子情報で文字・図形情報等で残る情報だけでなく、物理的な記録物として残らない相手から開示された秘密情報の扱いです。
B.秘密情報の区分
秘密情報でも、単にマル秘となっているものと、極秘扱いになっているものがあると思います。
NDAでは、通常A項で述べましたように、“Confidential”マークか「秘」マークが付いているものが規制の対象になります。
従って、NDA上では、マル秘と極秘の秘密情報の違いから、規制内容・規制範囲の定義の仕方が変わってくることはありません。
では、マル秘と極秘の違いはどこから来るでしょうか。
ここでは、マル秘は、単に「秘」、極秘は「特秘」と言うことにします。
英語では、“Confidential”、"Strictly Cofidential" となります。
「秘」や「特秘」の違いは、秘密情報を開示した側及び受け取った側のそれぞれの会社内での対象秘密情報の扱いの仕方から来ます。
例えば、秘密情報を相手側から受け取った場合では、以下のような対応になります。
◆「秘」; 自社と相手では、競合する分野が無い場合、受け取った秘密情報は、一般的な秘密情報として扱う。
◆「特秘」; 自社と相手の間では、競合する分野がある場合、受け取った秘密情報は、競合分野の関連部署の人が見れないようにする。⇒秘密情報の取り扱いをより厳格に対応する。
C.秘密情報の区別
簡単に言いますと、秘密情報を他の一般情報と客観的に扱うことが、区別する、と言う意味になります。
区別の仕方は、上記B項の「秘」、「特秘」により更に違ってきます。
今回は、ここまでとします。
次回は、3.秘密情報の扱い方 について述べます。
私は、NDAの扱いに関して多種多様な実務経験を持った専門家として自負しています。
NDAに関する注意事項について順次記事として述べて行きますが、もし本記事を読んでいる方で、NDAの扱いについてご相談したい方がおられましたら、何時でも私にご連絡下さい。
下記アドレスにeメールにてご連絡下さい。
私は、すぐにはご回答出来ない場合もありますが、24時間以内にはご連絡します。
よろしく御願いします。
以上、
1.初めからNDAは必要か?(NDAに対する基本的な考え方) [NDAの扱い]
2006年7月22日
1.初めからNDAは必要か?(NDAに対する基本的な考え方)
今回は、この主題について述べます。
今回のポイントは、”相手から要求されたからとか、何となく相手と話をするのにあった方が良いかなと思って、的な発想でのNDA締結は止めましょう” です。
言わば、何となく的な発想でのNDA締結は止めたほうが良いです。
以前に書いたブログ記事で述べましたが、相手の会社と話し合いを行う場合、それなりの目的がある場合と、目的がはっきりしないけど漠然とビジネスマッチング先を探している、と言ったケースがあります。
自社の事業戦略・経営戦略のもとに、当該目的を達成する手段の一つに、他社との事業連携(ビジネスマッチング先選定)やM&Aがあります。
この候補先と話し合いを行ったり、必要な情報をお互いにやり取りする事になります。
この過程の中で、機密保持の為にNDAを締結しましょう、と言った話が出て来ますし、状況において必要になる事が出て来ます。
しかし、やみくもに目的や必要性の検証無しに行うのは、前回の記事で述べましたように大変なリスクが発生する場合があります。
では、どのタイミングでNDAの事を考える必要があるかと言うのがポイントになります。
私は、次のようなステップを踏みながら行動した方が良いと考えています。
・ステップ1;何の為に行うかと言う目的::達成すべき事業目標、 経営目標 の再確認⇒これは何時も言っていますが、非常に大事です。
・ステップ2;次に相手先を考えるとき、次の事を明確化していく。
◆相手先の持つ技術などの価値を引き出し、新製品、新規事業、コストダウンにつなげられるか
◆相手先と組む目的は;開発、設計期間の短縮、資金調達、等
◆中長期的に、”Win-Win”関係を構築できるか?
◆相手との事業スキームは、(ビジネスモデルの構築);共同開発など
・ステップ3;相手先の選定
◆連携相手先候補の当該(事業)分野における地位・実績、 他社との提携の有無など公開情報を収集し調査、分析する。
◆相手先について確認する事項;
-経営方針
-技術力
-特許
-資金
-他社との連携やM&Aの実績、など
・ステップ4;相手先との話し合い開始
◆先ず、電話やeメールなどで相手先に話し合い開始の目的や提案を行い、相手先から同意が得られたら、話し合いを開始する。
◆この時、相手先からNDA締結の提案が出されても、このままNDA無しで話し合いを継続できるよう相手先の理解を得るようにする。
当面の間、お互いにGentleman Agreement(紳士協定)べースで話し合いを継続する。
◆相手先との信頼感が醸成出来たと感じたら、必要に応じて更に詳細な検討を行う場合、目的に即してNDAを締結する。
次回は、2.秘密情報の定義、区分、区別 について述べます。
今回の記事について、ご関心或いはご質問がある方は、私まで下記アドレスにeメールにてご連絡下さい。
私は、すぐにはご回答出来ない場合もありますが、24時間以内にはご連絡します。
よろしく御願いします。
以上、