日経記事;『クボタ、小型建機1兆円に 巨人との競合避けて天下取り』に関する考察 [新規事業開拓・立上]
皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本雅暁です。
3月28日付の日経新聞に、『クボタ、小型建機1兆円に 巨人との競合避けて天下取り』のタイトルで記事が掲載されました。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『クボタは米国のCTL需要の急増に対応し、2022年に稼働したカンザス州の新工場に追加投資している。クボタの建設機械事業が成長している。米国のインフラ投資を追い風に2023年12月期の建機売り上げは6000億円を超え、5年以内の1兆円達成が目標だ。けん引役は独自開発の小型建機。米キャタピラーなど大手との正面からの勝負を避けつつ、市場を開拓する。農機にも共通する、小兵ならではの生き残り戦略が奏功している。。。』
この記事の内容は、ベンチャー・中小企業が海外市場で新規事業を立ち上げる際の参考になります。
ベンチャー・中小企業は、海外市場で新規事業を立ち上げる時、中堅・大手企業が参入しないニッチ市場で、自社の差別化・差異化可能な技術やサービスを提供して、高いシャアを獲得するやり方が王道です。
ニッチ市場と言えども、競合企業が魅力を感じれば必ず参入してきます。この後で参入する企業との競争に勝つには、自社の商品やサービスが強みをもっていることが必要です。
自社の強みと海外市場のニーズをマッチングさせる方法について、以下の通り概説します。
1. 自社の強みを明確にする。
独自の技術、商品、サービス、顧客との関係など、自社の強みを具体的にリストアップします。
競合企業と比較して、自社がどのような点で優れているのかを明確にします。この時、競合企業の商品やサービスなどの特徴や強みは、下記のやり方で調査、確認します。
・競合企業のWebサイト、商品やサービスのカタログなどからの情報収集
・可能であれば、国内外の展示会に出席や出展を行って、関連情報を収集
・競合企業の商品やサービスに関して掲載されたBlogやSNS上の記事情報、など
このようにして集めた情報から、自社商品やサービスの強みが、どのような顧客ニーズを満たすことができるのかを検討、考察します。
2. 海外市場のニーズを調べる。
調べる前に、調査目的を明確にします。調査目的を明確にすることで、必要なデータを効率的に収集することができます。
調査目的を明確にする際には、以下の点を検討します。
・調査対象市場・顧客は何か
・調査したい内容は何か
・調査結果をどのように活用するのか、など
たとえば、自社新商品やサービスの海外輸出を検討している場合、以下の目的が考えられます。
・対象国や地域の社会的、政治的、経済的状態
・対象市場規模や成長性
・競合他社の動向
・競合商品の強み・弱み
・消費者のニーズ
・自社商品の強み・特徴が競合商品に勝てるか
・自社商品の強み・特徴が消費者のニーズに合うか
・競合商品の販路
・競合商品の保守サービス
3.調査目的を明確にすると共に仮説を作成します。仮説とは、調査によって検証したい事柄です。仮説を作成することで、調査の方向性を定めることができます。通常、仮説は3つくらい作成します。
調査の結果、第1の仮説検証が上手くいけば、事前に作成した行動計画に従って行動を起こします。この仮説検証が上手くいかなければ、第2、第3の仮説を検証します。
4.ターゲット市場の顧客ニーズ、市場規模、競争状況などを調査します。一般的な情報源としては、下記のものがあります。
・JETRO 海外市場調
https://www.jetro.go.jp/reportstop/reports/fdi/f-trend/
・国際貿易センター(ITC)貿易統計:
https://intracen.org/resources/data-and-analysis/trade-statistics
・世界の統計 **/総務省統計局 統計研修所
https://www.stat.go.jp/data/sekai/index.html
・JETRO貿易投資報告**/ 62カ国・地域の経済、貿易
https://www.jetro.go.jp/world/gtir/
・その他、各国の統計局データ: 各国の政府機関が提供する統計データ、など
上記の情報源は、一般的な統計データです。さらに詳しく調べるためには、上記しましたように、競合他社のWebサイトや、Google検索エンジンからの情報収集が必要になります。ここでは、収集の仕方の詳細は割愛します。
詳細についてご関心がある方は、2024年3月1日に発行されました月刊 近代中小企業『KinChu』に掲載されています、第4回『「中小企業による海外市場調査の基本②」』をご覧ください。
5. 仮説検証を行う。
収集した情報やデータから、3項で作成した仮説の検証を行います。第1の仮説検証が上手くいかない場合、第2、第3の仮説を順次検証します。
6. 仮説検証が上手くいったら、仮説に基づいて新規事業立上のための事業計画を立案、実行します。この事業計画は詳細に作る必要はなく、行動計画を主体に作成します。
行動計画計画に沿って、小コストで行う試作品作成やテストマーケティングを行います。
7.試作品やテストマーケティングなどの結果に基づいて、行動計画に書かれた新規事業立上を本格的に実行するかどうか決定します。
以上です。
概説的な情報になりますが、海外で新規事業立上を考えているベンチャー・中小企業のご参考になれば幸いです。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A山本雅暁
日経記事;『ビル壁面で発電、生産3倍 カネカ 高性能電池、ガラスと一体』に関する考察 [新規事業開拓・立上]
皆様
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
1月11日付の日経新聞に、『ビル壁面で発電、生産3倍 カネカ 高性能電池、ガラスと一体』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『カネカはビル壁面などで使える建材と一体にした太陽光発電パネルの年間生産量を2030年までに現在の約3倍に増やす。都心部ではパネル設置場所が限られており、窓ガラスやビル壁面に潜在需要がある。建材一体型の普及により、現在の国内の太陽光発電能力に匹敵するとの試算もある。ビル群が都市発電所として電源の一翼を担う可能性がある。。。』
カネカは、建材一体型発電パネルを大成建設と共同開発します。
この薄い太陽光発電パネルの技術は、高く評価されます。
カネカが発表した建材と一体にした太陽光発電パネルは、厚さが薄く、軽量で曲げられる特徴があります。そのため、ビル壁面や窓ガラスなど、従来の太陽光発電パネルでは設置が難しかった場所にも設置することが可能です。
この薄い太陽光発電パネルの課題としては、発電効率の低さが挙げられます。現状では、シリコン系太陽光発電パネルに比べて、一般的に発電効率は半分から約1/3程度とされます。発電効率を向上させることで、より多くの電力を供給できるようになり、普及が進むと考えられます。
また、耐久性も課題です。薄いパネルは、風や雨などの外的要因による損傷を受けやすくなっています。耐久性を向上させることで、長期間安心して使用できるようになります。
今後、薄い太陽光発電パネルは、以下の分野で普及が進むと考えられます。
ビルやマンションなどの建築物
太陽光発電パネルを設置しづらい場所
移動式の太陽光発電システム
これらの分野では、薄い太陽光発電パネルの利点が活かされると考えられます。
具体的には、ビルやマンションなどの建築物では、壁面や窓ガラスに太陽光発電パネルを設置することで、発電量を増やし、省エネルギーに貢献することができます。また、太陽光発電パネルを設置しづらい場所では、薄くて軽量なパネルを活用することで、設置コストを抑えることができます。さらに、移動式の太陽光発電システムでは、薄くて軽量なパネルを活用することで、設置や撤去が容易になります。
このように、薄い太陽光発電パネルは、さまざまな分野で普及が進む可能性を秘めています。今後の技術開発によって、発電効率や耐久性が向上し、さらに普及が進むと考えられます。
薄い太陽光発電パネルの将来は、明るいです。しかし、過去、国内企業が開発・実用化したリチウムイオン電池や太陽光発電は、中国や韓国の企業とのコスト競争などに負けて世界市場を奪われてしまいました。
薄い太陽光発電パネルの事業が同じ問題に直面しないための、対策が必要です。薄い太陽光発電パネルの事業において、中国企業や韓国企業との競争に勝つためには、以下の3つのポイントが重要です。
1.発電効率や耐久性の向上
薄い太陽光発電パネルの課題として、発電効率の低さや耐久性の低さが挙げられます。これらの課題を解決することで、薄い太陽光発電パネルの普及が進むと考えられます。
具体的には、以下のことに取り組む必要があります。
独自の技術や材料の開発
研究開発への投資の拡大
顧客ニーズへの対応
2.薄い太陽光発電パネルは、ビル壁面や窓ガラスなど、従来の太陽光発電パネルでは設置が難しかった場所への設置が可能です。そのため、これらの場所で求められるニーズを的確に把握し、対応することが重要です。
具体的には、以下のことに取り組む必要があります。
ユーザーインタビューやアンケート調査を実施する
マーケティング活動を強化する
3.グローバル展開
薄い太陽光発電パネルの市場は、日本だけでなく、世界各国で拡大しています。そのため、グローバル展開を進めることで、新たな成長機会を創出することが重要です。
具体的には、以下のことに取り組む必要があります。
各国のニーズを把握する
現地のパートナーと連携・協業(アライアンス)する
海外での製造・販売拠点を拡大する
具体的な取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。
薄型・軽量・曲げられるパネルの開発
屋上や壁面など、設置場所を選ばないパネルの開発
発電量を最大化するシステムの開発
太陽光発電システムの設置・メンテナンスサービスの提供
中国や韓国企業との競争は、今後も激化します。日本企業が競争に勝つためには、発電効率や耐久性の向上、顧客ニーズへの対応、グローバル展開に取り組むことが重要です。
さらに、薄い太陽光発電パネルは、まだ技術が成熟していない分野です。そのため、日本企業が先行して技術開発を進めることで、競争優位を確立することも可能です。
具体的には、以下のことに取り組む必要があります。
研究開発への投資を拡大する
大学や研究機関との連携を強化する
失敗を恐れずに挑戦する
日本企業が持つ技術力や品質への信頼感を活かして、薄い太陽光発電パネルの分野で世界をリードしていくことが期待されます。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A山本雅暁
日経記事;『ドラッグストアも異業種も オンライン調剤、処方箋握れ』に関する考察 [新規事業開拓・立上]
皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
2月13日付の日経新聞に、『ドラッグストアも異業種も オンライン調剤、処方箋握れ』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『処方箋を薬局に持ち込み、薬剤師から薬を受け取る――。これまで当たり前だった薬局のあり方が変わろうとしている。規制緩和を追い風に異業種が参入するなか、ドラッグストア大手はオンラインによる服薬指導を多様化する。オンライン対応の成否は、薬局機能を収益力の要として集客してきたドラッグストアのビジネスモデルの成長性を左右する。。。』
私は、これまでに何度か小規模の調剤薬局の新規開業を支援しました。この経験も含めて、大きな事業環境の変化が起こりつつある調剤薬局の状況、課題、あるいは対応などについて考えを述べます。
電子処方箋の運用が、2023年1月26日から始まりました。この電子処方箋を運用するには、医師や薬剤師は、オンライン資格を取得する必要があります。
1月23日付の日経記事『電子処方箋、低調なスタートに 医師ら資格取得1割のみ』によりますと、2022年12月末時点でのオンライン資格取得率は、医師が11.4%、薬剤師が7.5%でした。
上記オンライン資格取得率が低いことが、今後も電子処方箋の普及が進まないことを意味するものではないと考えます。
それは、電子処方箋が患者に大きなメリットを与えることによります。まず大きなメリットは、患者の薬の処方データがすべてシステムに登録されることです。
医師や薬剤師は、患者の同意があれば、当該システムにアクセスして、過去に処方された薬、あるいは他の医療機関で処方されている薬のデータを、確認することができるようになります。
医師や薬剤師が、患者データを見ることにより、副作用などの飲み合わせによる薬の投与を防ぐことが可能になります。このシステムは、この重複や併用禁止の処方を、自動的にチェックしてくれる機能も付いてます。
このシステムには、患者に投与された薬のデータが3年間保存されますので、医師や薬剤師だけでなく、患者もマイナポータルから自身のデータを見ることができます。
この患者にとってメリットがある電子処方箋のシステムを診療所、病院、調剤薬局が導入しないと、患者はその恩恵を得ることができません。
一方で、:一般社団法人日本保険薬局協会デジタル推進委員会が、2022年9月に発表しました、『電子処方箋に関する理解度・導入意向等の調査報告書』によりますと、下記の結果となりました。
・オンライン資格確認システム導入に関しては、21/11時点の計画通り進捗し、22/8月時点では78.0%、23/3月末時点では、ほぼ全薬局において運用を開始する見通しである。
・電子処方箋に関しても、全薬局の導入を目指すと回答したのは、53社(52.5%)、7,788薬局(61.3%)であり、積極的な導入意向が過半数を占めた。
詳細は、下記Webサイトに掲載されています。
https://secure.nippon-pa.org/pdf/enq_2022_09.pdf
薬局のオンライン資格取得率は、上記のように高くなる可能性があります。これは、政府が電子処方箋の運用を開始することが影響しています。
もちろん当該調査報告書では、オンライン資格確認システム導入費用負担、病院や診療所の医療機関の導入状況見込などの課題や不安を感じています。
このような状況下、厚生労働省は2022年8月10日に開催した第527回中央社会保険医療協議会 総会において、「更なる対策」として医療機関・薬局でのオンライン資格確認を2023年4月以降は原則義務化することを決定しました。
また、オンライン資格確認を利用する場合の診療報酬の見直しと、顔認証付きカードリーダー導入に係る費用の補助金を見直すことも決定されています。
これから新規に調剤薬局を開業する場合や、既存調剤薬局においても更なる収益拡大を図るには、オンライン調剤を視野に入れて、事業することが極めて重要なことになります。
私が以前に小規模な調剤薬局の開業支援を行ったときには、オンライン調剤の環境はありませんでした。
このため、調剤薬局の開業場所は、世帯人口、高齢者人口、児童人口、競合薬局の有無などを、調査、分析して、採算が見込めるところとしてきました。
しかし、今後は調剤薬局の開業や既存調剤薬局の事業基盤強化は、上記に加えて、オンライン調剤への対応を含めて考える必要があるあります。
国内のオンライン調剤市場に、アマゾンジャパンが新規参入してくる可能性もあります。そうなると、既存の大手薬局チェーンも含めて、群雄割拠の戦国時代に突入する可能性があります。
この事業環境下で、小規模調剤薬局が勝ち残っていくには、アマゾンや大手調剤薬局が入ってこない市場で直接的な競合を避けて、各薬剤師が専門的な知識、知見をより一層向上させることにより、高齢者や患者に寄り添って、事業を行うことが必要不可欠になります。
例えば、高齢者や患者のちょっとした困りごとや相談ごとに親身になって対応する、提供する薬の期待効果や副作用のリスクなどを丁寧に説明するなどして、顧客側と信頼関係を構築するなどの動き方になります。
更に、調剤薬局として患者から高評価が得られたら、開いている場所に関係なく、他地域の患者からオンラインで処方箋を受けることもできます。
ちなみに、私が支援しました調剤薬局は、すべて元気に活動しており、オンライン調剤への対応も積極的に行っています。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁
日経記事;『ソニーが補聴器参入、まず米国で オーディオ技術活用』に関する考察 [新規事業開拓・立上]
皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
9月13日付の日経新聞に、『ソニーが補聴器参入、まず米国で オーディオ技術活用』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『ソニーグループ傘下のソニーは13日、補聴器に参入すると発表した。補聴器の世界大手、デンマークのWSオーディオロジー(WSA)と組んで共同開発し、ソニーブランドの新商品として米国で発売する。ソニーが持つオーディオ技術を応用し、医療機器を新たな収益の柱の一つに育てる。。。』
本日の記事によりますと、ソニーは電子機器(主に映像とオーディオなど)の新規事業分野として医療に力を入れるようです。ソニーは、2022年3月期の営業利益に占める医療などの新規事業の比率は10%ほどだった。25年2月期には25%まで増やす計画とのことです。
ソニーが補聴器市場に参入する理由は、米食品医薬品局(FDA)が補聴器に対する規制緩和を決めたことによります。この規制緩和は、米国で長期間議論されてきました。
FDAは、2022年8月16日に、「FDA Finalizes Historic Rule Enabling Access to Over-the-Counter Hearing Aids for Millions of Americans」の声明を発表しました。
このWebサイトは、もちろん英語で書かれています。最初の部分は、下記のような文章になります。
「本日、米国食品医薬品局は、補聴器へのアクセスを改善し、何百万人ものアメリカ人のコストを削減するための最終規則を発表しました。これにより、軽度から中等度の聴覚障害を持つ消費者は、診察や処方箋、聴覚士によるフィッティング調整を必要とせず、店舗やオンラインストアで直接補聴器を購入することができるようになります。」
FDAの規制緩和は、2022年10月半ばころから適用されるようです。私は、支援先企業の中に、米国でのオーディオビジネスに関与している会社があり、このFDA規制緩和には以前から関心をもっていました。
当然のごとく、ソニーだけでなく、米アップルやボーズなどの企業も参入してきます。さらに、ベンチャーや中小企業も、参入してきます。何といっても、米アマゾンやShopifyなどのようなインターネット通販で販売できることが、この新規参入組の事業機会獲得につながります。
FDAがこの規制緩和に長期間を要したのは、既存の権益を守ろうとする企業5社が強固に反対してきたことによります。
言わば、この5社が市場独占しており、処方箋を必要とする補聴器は左右セットで4000〜5000ドル(約54万〜67万円)もするものもありました。
現在の米政権が、FDAを後押ししたことで、今回の規制緩和が実現しました。
ちなみに、日本では、補聴器販売に関わる法律により、補聴器はクラスⅡに分類され、言語聴覚士などの管理者がいる耳鼻咽喉科などの医療施設で、販売することになっています。
ソニーは、補聴器の世界大手、デンマークのWSオーディオロジー(WSA)と組んで共同開発する商品を、米国などの海外市場で販売するようです。
FDAが医療機器の規制緩和を行うときは、事前に十分な調査、確認作業を行い、合理的な理由をもって行います。
このような岩盤市場の規制緩和を行うと、一般的には、市場の拡大と新規参入企業が増えて競争が起こり、消費者にはより良い商品やサービスが、合理的な価格で提供されるようになります。
日本でも、今後、不必要な規制については、より積極的な規制緩和が行われることを大いに期待します。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁
日経記事『オランダ農業、稼ぐ力は日米の150倍 輸出世界2位、最先端ハウスやAIで狭い国土克服』に関する考察 [新規事業開拓・立上]
皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
9月13日付の日経新聞に、『オランダ農業、稼ぐ力は日米の150倍 輸出世界2位、最先端ハウスやAIで狭い国土克服』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『オランダは九州とほぼ同じ面積ながら、農産品の輸出で世界2位の地位にある。限りある耕作地で効率よく、付加価値の高い農産品をつくるために知恵を絞った成果だ。国土の小さい国ながら農業大国になった背景には、研究開発やスタートアップの育成に力を入れ、先端技術の導入をちゅうちょしない姿勢がある。。。』
私は、以前、ある企業の紹介によりオランダの農業法人を訪問したことがあります。私の支援先企業の中には、農業法人がありません。
私が訪問した理由は、オランダの農業法人のもつ成長率の高さや、競争力の高さなどの、競争領域で実現している理由や背景、あるいはやり方を確認するためです。
このオランダの農業法人訪問時に、私がもった印象は、大体、本記事と同じになります。
私は、ベンチャー企業の立上や、中小企業の新規事業立上を支援しています。この時、課題の一つになるのが、コア技術やノウハウの獲得と、その強化策です。
ベンチャーや中小企業は、一般的に、中堅や大手と比較して、巨額の開発資金を獲得できません。
そこで、ベンチャーや中小企業は、対象事業領域を絞って、一点集中化のやり方で、コア技術やノウハウに磨きをかけて、勝負していくやり方の一つになります。このやり方は、一種の仮説を立てて、検証を行う「仮説検証」になります。
「仮説検証」を行うときのポイントは、仮説は最低でも3個くらい作成しておき、一つの仮説が実際的でないことが判ったとき、すぐ次の仮説に対する仮説検証を取り掛かるようにしておくことです。
私の経験では、数社に1社くらいの頻度で、仮説検証して上手くいかないことが確認できたやり方について、こだわりをもって他の仮説検証を行わないケースが起こります。
そのようなとき、私が当該企業のトップと話すのは、仮説検証を失敗したものは、いったん忘れて、次の仮説検証に取り掛かろうとアドバイスすることです。今回の検証作業で、実際できでない仮説を確認できたので、他の仮説を検証した方が、事業立上げにつながる可能性が高いと、説明します。
実際、オランダの農業法人は、常に、大学との共同研究や大学発の研究成果などに興味をもっており、次々と挑戦していきます。まさに仮説検証を、常に、繰り返しています。
仮説検証を行うときに、コア技術やノウハウの磨き上げに加えて、常に、競合企業や競合商品の動き、および、対象市場や顧客の有無を調査して確認することが重要です。
対象市場や顧客の有無の調査、確認は、事業性の観点から非常に重要です。いくら、高い技術力やノウハウをもっていても、市場や顧客がいなければ事業は成立しません。
もちろん、可能性の一つとして、コア技術やノウハウで、新規に市場を作るやり方があります。
私の経験では、自分の能力不足も手伝って、そのような状況を経験していません。
私の場合は、コア技術やノウハウとマッチングできる市場や顧客の有無の確認が、マーケットリサーチ;市場調査になります。
現在、日本、米欧などの市場では、業界や市場は常に急速なスピードで変化しています。このような市場環境下では、仮説検証に必要なマーケットリサーチ;市場調査をゆっくりとしたスピードで行うことは現実的ではありません。
そこで、私がマーケットリサーチ;市場調査に採用しているやり方は、インターネット上に存在するデータや情報を収集して分析する方法になります。
競合他社や競合商品の動きも、インターネット上に存在する情報やデータの収集と分析、および海外展示会などから得られる情報に基づいて、推測します。
オランダの農業法人は、常にいくつかの仮説検証を行いながら、他国や競合先の動きを見ながら、施策を立案、実行しています。
私は、私が支援していますやり方が完璧だとは考えていません。もっと、企業立上や新規事業立上に有効な方法などがないか、常に模索しています。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁
日経記事;『全固体電池、OKIなど「評価」事業化で先手 車載も視野』に関する考察 [新規事業開拓・立上]
皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
9月9日付の日経新聞に、『全固体電池、OKIなど「評価」事業化で先手 車載も視野』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『有力な次世代電池として電機や車各社が開発する「全固体電池」で品質や性能を評価するビジネスが相次いで始まる。日本製鉄は2022年度中に企業から受託して試作品を造った上で性能評価する事業を始める。OKIは9月中旬、電池の劣化原因を特定するサービスを始める。電気自動車(EV)での搭載も予想される中、新中古車ともに評価は開発と両輪で重要性が増す。追い上げる海外勢との競争に先手を打つ。。。』
リチウムイオン電池は、世界でいち早くソニーが開発・実用化に成功して、パソコンやスマートフォンで使用され始めました。
しかし、その後、リチウムイオン電池の事業は、パナソニックを除けば、韓国や中国メーカーが大きなシェアをもっています。
リチウムイオン電池は、以前の半導体のように、積極的な開発・製造の投資を行ってこなかった日本メーカーが世界市場で存在感が薄くなっています。
全固体電池は、リチウムイオン電池の次世代型になります。全固体電池は、リチウムイオン電池の問題を解決できることによります。
現在の日本では、官民挙げて全固体電池の開発・実用化を進めています。これは、上記しましたように、リチウムイオン電池の主導権を海外企業に取られたことの反省によります。
政府の支援策の一つとして、つくば市にある国の研究機関、「物質・材料研究機構」は、国内の大手企業10社と共同で研究を進める取り組みを今年度から始めています。
この共同開発は、「全固体電池マテリアルズ・オープンプラットフォーム」呼ばれます。この共同開発にはJX金属株式会社、JFEスチール株式会社、住友化学株式会社、太陽誘電株式会社、株式会社デンソー、トヨタ自動車株式会社、日本特殊陶業株式会社、三井金属鉱業株式会社、三菱ケミカル株式会社、株式会社村田製作所が参加しています。
https://www.nims.go.jp/news/press/2022/06/202206070.html
本日の記事では、全固体電池の開発は、トヨタなどの国内勢が先行しています。この日本企業による先行優位性を維持強化するため、まだ開発途上である全固体電池の評価環境を国内で整備して、国内での開発体制を支援する動きになります。
全固体電池の特許出願件数は、トヨタが圧倒的に先行しています。他の国内企業では、パナソニック、出光興産、住友電気工業、村田製作所、富士フイルムなどが特許出願しています。
トヨタは、HV、PHV、EVの次世代電池の本命は全固体電池であると表明しており、2020年代前半に全固体搭載のHVを発売する計画をもっています。
他の自動車メーカーでは、ホンダ、日産、独フォルクスワーゲンも、全固体電池の開発・実用化を積極的に進めています。
全固体電池は、将来の日本の経済競争力を左右するコアデバイスの一つになります。日本は、半導体やリチウムイオン電池の事業機会を奪われた失敗を繰り返さないことが非常に重要であり、必要です。
米中対立やロシアによるウクライナ侵略は、全世界市場を対象としたグローバリゼーション、あるいはグローバルエコノミーの考え方が通用しない市場環境を作り出しました。
その観点から、全固体電池の開発・実用化・製造は、国内企業が容易に当該電池を使える事業環境にする必要があります。
日本の立ち位置は、明らかに米欧と共にあります。固体電池の開発・実用化・製造は、日米欧などの経済圏で行う必要があります。
以前の日本で、半導体やリチウムイオン電池の事業基盤を失ったのは、技術力の差ではなく、海外市場や海外顧客を積極的に取り込んで、市場シェアを拡大しながら巨額投資を行うやり方を積極的に行わなかったことにあります。
この観点から、全固体電池の開発・実用化を行っている専業メーカー、例えば、パナソニックには、車載用だけでなく、発電所、工場、オフィス、家庭などで使用される各種用途での全固体電池供給を目指してもらいたいと考えています。
テスラは、自前でリチウムイオン電池の巨大工場を作り、車載用だけでなく、多用途での電池販売を行おうとしています。
この点では、トヨタにも、将来車載用だけでなく、多用途での全固体電池の販売を期待します。
全固体電池の開発・実用化・製造は、国内関連企業のオールジャパン体制で、一気呵成に進むことを大いに期待しています。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁
日経記事;『日立、見えぬナンバーワン 産業IoTでシーメンスに後れ』に関する考察 [新規事業開拓・立上]
皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
9月8日付の日経新聞に、『日立、見えぬナンバーワン 産業IoTでシーメンスに後れ』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『日立製作所の東京都国分寺市の研究所の一室。仮想空間「メタバース」を通じて現実空間のロボットを動かす研究が進む。天井や壁に設置したカメラやセンサーで部屋を再現し、メタバース上のロボットに指示を出すと、現実世界でも時間差なく走り出す。。。』
本日も、前日に引き続き、日立の件に関してブログ・コラムを書きます。
本記事では、日立が独シーメンスなどの競合他社と比較して、絶対的な強みをもつオンリーワンの技術や商品をもっていない、あるいは少ないと指摘しています。
確かに、現時点の日立は、そのような状況下にある可能性があります。
しかし、日立は昨日のブログ・コラムを書きましたように、人材を人財と捉えて、働くモチベーションと創造性を高める仕組みづくりと、一般的にジョブ型と言われる欧米企業で採用されている専門職化する雇用制度に変えつつあります。
また、最近の日立は、競争力強化やノウハウ蓄積などのため、積極的に企業買収(M&A)を行っています。
私は、自分の経験則で、日立の経営改革の方向性は合理的であり、欧米企業とそん色ない組織運営に移行しつつあるため、日立が行うM&Aは、一番の課題である組織融合をうまく実現できるとの印象をもっています。
日立は、新規事業を立ち上げる、既存事業の基盤を強化する、あるいは改革するなどの目的で積極的にM&Aを行うことは合理的と考えます。
並行して、日立には、今まで以上に積極的に他社とのオープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を実施して欲しいと考えます。
オープンイノベーション;事業連携(アライアンス)は、M&Aと比べて、実施する上での負荷が低く、「Win/Win」の関係が維持できなければ何時でも解消できるメリットがあります。
一般的に、ときどきですが、日立のような大手企業が、ベンチャーや中小企業とオープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を組む場合、「Win/Win」の関係が維持できなくなることがあります。
このような事態に陥る要因としては、「Win/Win」の関係構築について、甘い認識で実行しようと思いますケースと、大手の目的がベンチャーや中小企業がもつ技術的ノウハウ獲得であるケースなどがあげられます。
日立には、ベンチャーや中小企業とオープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を行う場合、自社の強みとなる技術やノウハウをベースに、相手側とイコールパートナーシップで実行することを期待します。
もちろん、日立が、大手企業とオープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を実行する場合も同じことが言えます。
日立のような大手企業は、一般的に優秀な技術者を多数抱えています。したがって、M&Aや他社との事業連携(アライアンス)により、技術者の増員や新規技術、ノウハウ獲得ができれ、日立の競争力強化につながると考えています。
今後の日立のM&Aや、他社とのオープンイノベーション;事業連携(アライアンス)から、如何にして競争力強化を実現しながら、新規事業から収益力の維持拡大を可能にするビジネスモデルが構築できるか見ていきます。
日立が成果を出すには、2~3年の期間が必要と考えます。スマートな日立が見れることを楽しみにしています。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁
日経記事;『日本、車載電池で巻き返しトヨタ、EV向け生産に7300億円投資』に関する考察 [新規事業開拓・立上]
皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
9月1日付の日経新聞に、『日本、車載電池で巻き返しトヨタ、EV向け生産に7300億円投資』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『トヨタ自動車が電気自動車(EV)向け電池の生産へ本格的に動きだした。8月31日、日本と米国で電池の増産に最大7300億円(約56億ドル)を投資すると発表した。米国でホンダが大型工場の建設を決めるなど巨額投資が相次いでいる。EVシフトの進む米国を中心に、主要部品の電池を自前で生産し確保しようとする自動車各社の競争がさらに激しくなりそうだ。。。』
8月30日に、日経記事;『ホンダが米にEV電池工場 LG系と、6100億円投資 25年の量産めざす』に関する考察 [アライアンスから期待する効果]のタイトルで、ブログ・コラムを書きました。
本日も、EV用の電池に関して述べます。
本日の記事のポイントは、世界最大手の自動車メーカーであるトヨタが行う、EV用電池の確保に関する動きです。
トヨタは、ホンダと異なり、EV用電池をパナソニックとの協業を除けば、基本的に自前で確保する動きになっています。
これに対して、ホンダや日産は、韓国LGや中国の電池メーカーと連携(アライアンス)を組んで、EV用電池を確保します。
何度か本ブログ・コラムで書いていますように、将来のEVは、必ず何らかの形で自動運転機能が付加されるようになります。
この自動運転機能付EVの開発・実用化は、トヨタでさえも1社単独で実行するには不可能です。
したがって、国内自動車メーカーが、競争力のあるEVを開発・実用化するには、徹底的なオープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を必要不可欠となります。
このオープンイノベーション;事業連携(アライアンス)をいかに巧みに実行できるかが、EVの競争力を左右します。
特に、国内自動車メーカーは、基本的に自動運転機能の実装や、エンターテインメント機能をEVに実装するためのノウハウをもっていません。
トヨタは、数年前から自動運転機能を実装するための、AI・IoT対応などについて、米シリコンバレーに大型研究拠点を構築したり、数多くのデジタルエンジニアを採用したりして、内製化を進めています。
私は、トヨタでさえ、自動運転機能付EVに必要なすべての機能を自前で開発・実用化することは、困難であると考えます。
このため、トヨタは、デジタル分野を中心に、積極的なオープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を行っています。
一方、トヨタは、EVの競争力を左右する電池について、パナソニックとの協業を除けば、基本的に自前で確保する動きになっています。
これは、EVの競争力の源泉となる電池の新技術やノウハウは、内製化して外部に依存しないやり方となります。
EVの先駆者であるテスラモーターズは、トヨタと同じように、電池についてパナソニックや中国メーカーと協業しますが、大型の電池製造工場は、自前で確保しています。
テスラは、自動運転機能および電池の両分野での強みを確保しています。
トヨタを含む国内自動車メーカーは、EV分野でテスラと競争し、打ち勝つ必要があります。
このためには、国内自動車メーカーは自社の強みを自前で最大化しつつ、積極的なオープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を行っていく必要があります。
トヨタの場合、EVのハードウェア分野の技術的な核となる電池は、自前で確保しつつ、自動運転機能については、自社の技術に加えて、他社とのオープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を取り込むことで、競争力のあるEVを開発・実用化しようとしています。
中国のEVメーカーであるBYDは、もともと電池メーカーでした。BYDが10年くらい前に製造した電動二輪車の評判は良くありませんでした。
その後、BYDは自前の電池技術をコアにして、継続的にEVの開発・実用化を進めた結果、中国国内で有力なEVメーカーになっています。
今後とも、トヨタ、ホンダ、日産などの国内自動車メーカーの、自動運転機能付EVの開発・実用化に対する動き方に注目していきます。
自動車メーカーの動き方は、これから新規事業を立ち上げようとするするベンチャーや中小企業にとって、参考になることによります。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁
日経記事;『米カリフォルニア州、2035年にハイブリッド車も販売禁止』に関する考察 [新規事業開拓・立上]
皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
8月26日付の日経新聞に、『米カリフォルニア州、2035年にハイブリッド車も販売禁止』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『米カリフォルニア州の環境当局は25日、2035年にガソリンのみで駆動する新車の販売を全面禁止する新たな規制案を決定した。26~35年にかけて段階的に電気自動車(EV)などの販売比率を高めるよう各自動車メーカーに義務付ける。州内の新車販売の10%強を占めるハイブリッド車(HV)も35年以降は販売禁止とする。HVを得意とする日本車メーカーは戦略変更を迫られる。。。』
本日の記事は、米国カリフォルニア州で、ZEV(Zero Emission Vehicle)の導入計画案が公式に決まったことについて書いています。
多分、米国のニューヨーク州などの環境先進地域なども、順次同様のZEV規制案を公式に決めることになります。
カリフォルニア州のZEVの定義は、二酸化炭素の排出がほぼゼロの自動車を意味し、具体的には、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、電池のみで80キロメートル以上の走行が可能なプラグインハイブリッド車(PHV)になります。
ZEVに入らないのは、ガソリン車、ハイブリッド車(HV)、電池のみの走行距離が80キロメートル未満のPHVです。
自動車メーカーは、カリフォルニア州で自動車を販売するためには、ZEVの販売比率を2026年式35%、2030年式68%、2035年式は100%の比率で伸ばす必要があります。
今年は2022年ですので、国内自動車メーカーは米国市場で環境対応車を売るには、この規制に合致させるように、新規自動車の開発・実用化を進める必要があります。
この米国市場の環境先進地域の動きは、欧州市場でも同じです。欧州の場合は、現時点では短期的にEVの開発・実用化に投資が集中しています。
ホンダが、新規自動車の開発・実用化を、EVとFCVに集中して行う方針を決めた理由がここにあります。
先日のブログ・コラムで書きましたように、今までガソリンエンジン車を主体に自動車を開発してきたフォード、GM、ホンダなどの自動車メーカーにとっては、EV、FCV、PHVの異なる方式の自動車の開発・実用化を行うことは、ハードルが高くなります。
しかも、EVについては、テスラモーターズや中国のEVメーカーが、すでに市場で販売しています。
テスラモーターズは、EVの先駆者として米欧市場で評価されています。
私は、ここ数年間はEVがZEVの主役になると考えています。これは、FCVの普及には、水素ステーションの社会インフラ整備が必要なことによります。
FCVに比べて、EV対応の電気スタンドは、より容易に設置できますし、家庭でも充電が可能です。
また、自動運機能付自動車のニーズも、ZEVと並行して高まります。EVの場合、今までブログ・コラムで述べていますように、グーグルやアップルなどの非自動車企業も容易に参入できます。
自動運転機能付EVの開発・実用化を進めるには、これらのIT企業の方が、人工知能(AI)・IoT対応や、ソフトウェアやアルゴリズムの開発・実用化の面で有利であることは確実です。
多くの自動車メーカーは、自動運転機能付EVの開発・実用化を進める上で、IT企業などとオープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を組んでいます。
国内自動車メーカーは、今後の数年間で、自動運転機能付EVの開発・実用化を行わないと、米欧市場から撤退せざるを得ない状況に陥る可能性やリスクがあります。
国内自動車メーカーは、HVの開発・実用化が得意です。このHV技術を発展させて、電池のみで80キロメートル以上の走行が可能なPHVを主力自動車にするやり方は、考えられます。
このPHVの課題は、EVと比べてコスト競争力をもてるかどうか、ガソリンエンジン車の需要が減ると、ガソリンステーションの設置場所が少なくなるリスクなどが考えられます。
今の自動車業界は、数年前から100年に1度の大変革期にあると言われています。
この状況下、国内自動車メーカーは、より一層の集中と選択作業を行いながら、オープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を積極的に行って、競争力のあるEVや自動運転機能付EVの開発・実用化を行う必要があります。
今後のトヨタ、日産、ホンダの動きに注目していきます。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁
日経記事;『「AI診察」全身に拡大へ アイリス、十数秒でインフル判定/ウイインク、白内障症状検査アプリ』に関する考察 [新規事業開拓・立上]
皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
6月29日付の日経新聞に、;『「AI診察」全身に拡大へ アイリス、十数秒でインフル判定/ウイインク、白内障症状検査アプリ』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『人工知能(AI)を活用したスタートアップの診察支援サービスが活躍の裾野を広げている。アイリス(東京・千代田)はこのほど、咽頭の画像からインフルエンザの兆候を見つけ出すシステムの薬事承認を取得した。2022年冬に発売する。国内で医師の偏在問題が深刻化するなか、新興勢は専門医が不足する「過疎地域」の医療現場を技術で下支えする。。。』
最近、AIを活用した診断支援サービスの開発・実用化が、国内で増えています。本日の記事にありますように、医師が自分の医療経験に基づいて、AIを活用した診断支援サービスを事業化する件数が増えています。
当該診断支援サービスの開発・実用化は、地方の医療格差是正につながりますので、今後とも多くのサービスの実用化が起こることを大いに期待します。
AIを活用するには、一定規模のデータ・情報が必要になります。医師が起業する場合、関連診療所や病院からデータ・情報収集の協力がられやすくなる利点があります。
AIを活用した診断支援サービスの開発・実用化は、明らかに米国が先行しています。これは、米国が医療機器分野において、世界で最強国家となる目標・目的をもっていることによります。
この米国の国策により、Food and Drug Administration(アメリカ食品医薬品局;FDA)は、着々と合理的な規制改革を進めてきましたし、今も進めています。
米国では、2010年にWellDocが糖尿病管理用アプリ"BlueStar"の承認をFDAから取得Digital Therapeuticsの開発・実用化が進みました。
Digital Therapeuticsは、デジタル治療のことです。米国のデジタル治療提供企業の業界団体Digital Therapeutics Allianceは、「デジタル治療」を身体的、精神的、および行動的な状態を幅広く予防、管理、または治療するために、高品質のソフトウェア・プログラムを使用して、患者にエビデンスに基づいた治療介入を提供するものと定義しています。
AIを含むソフトウェアを搭載した診断支援機器・サービス;デジタル治療は、米国規制上、Software as a Medical Device(プログラム医療機器;SaMD)と定義されます。
SaMDの対象範囲は、診断や治療、予防、緩和などへの使用を目的とするソフトウェアであり、および汎用パソコンやタブレット端末などにインストールしたうえで機能させるものが対象となります。従来のハードウェアの医療機器の一部分として組み込まれるものは除外されます。
FDAは、米国企業が効果的にデジタル治療機器・サービスを進めながら、患者の安全・安心を効果的に担保するための規制の仕組み作りの検討・確認を行ってきました。
具体的には、FDAは2017年に医療用ソフトウェアの承認プロセスを簡易化するプログラムであるThe Software Precertification(Pre-Cert)Programを試験採用しました。
Pre-Certの概要は、下記Webサイトに「SaMDの承認においてSaMDそのものではなく、SaMD開発企業に着目し、その企業が品質に対するロバストな文化・風土と組織的な卓越性を有しかつ、SaMDの上市後もその実使用下での性能に責任をもって監視している場合には、当該企業のSaMDに対し、より迅速かつ効率的な規制監査を行うことにある。」と説明されています。
https://www.jpma.or.jp/opir/news/061/03.html
FDAは、この仕組みの下、ソフトウェアの設計や検証、メンテナンスなどの手法を企業ごとに事前に審査する。FDAが認定した企業が手掛ける医療用ソフトウェアについて、FDAに提出すべき情報を簡素化し、審査を効率化することを狙っています。
FDAは、当該仕組みの立ち上げ時に、下記9社を認定しました。
Apple、Fitbit、Johnson & Johnson、Pear Therapeutics、Phosphorus、Roche、Samsung、Tidepool、Verily
アップルは、2018年に米国で発売したApple Watch Series 4に、ECG(心電図)ソフトウェアを搭載しました。
このように、FDAは国家戦略に基づいて、米国企業と共に合理的に動いています。
日本では、以前から医療事業を国の新規事業の柱の一つとするスローガンは、ありますが、具体的な施策がありません。
そのため、厚生労働省は、現行の規制内容に基づいて審査を行っており、FDAのような規制改革・緩和を含めた新規な仕組み作りを行っておりません。
その厚生労働者が、記事にあります医療AIベンチャー企業のサービスを認可しつつあることは、良い傾向となっています。
さらに、厚生労働省は、医療ソフトウェアを使いやすくするためのアップデートのたびに必要だった国の薬事承認の審査を2022年度にも撤廃する検討に入っているとのことです。
現在、医療ソフトウェアを更新するために、薬事承認を取り直す必要があり、半年ほどの期間を要していますので、不合理な規制の典型例の一つになっています。
厚生労働省には、不要な規制緩和・撤廃を積極的に行うことを期待します。
また、国内の医療ベンチャー企業には、国内だけでなく、米欧などの海外市場開拓を行うことを期待します。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁