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日経記事;『日立、DXサイクルに挑むインフラ革新、IT人材3万人増 400兆円市場へ事業転換』に関する考察 [事業再生、集中と選択]

                2022年9月7日


皆様、

こんにちは。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

97日付の日経新聞に、『日立、DXサイクルに挑むインフラ革新、IT人材3万人増 400兆円市場へ事業転換』のタイトルで記事が掲載されました。

 

本日は、この記事に関して考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『日立製作所が経済インフラをデジタルトランスフォーメーション(DX)するグローバル企業への転身に挑んでいる。10年以上に及ぶ構造改革で22あった上場子会社の整理がほぼ完了する。総額4兆円ものM&A(合併・買収)も実行し、一気通貫のDX戦略に欠かせないコンサルティング機能とデジタル人材を手に入れた。巨艦・日立が400兆円規模のDX市場に針路を据えた。。。』

 

今まで日立が行ってきました集中と選択作業については、何度か本ブログ・コラムで書いています。

 

その日立は、一連の合理化作業を終えて、ここ1~2年の間、様々な事業拡大の手を打ち出しています。

 

日立は、集中と選択作業の結果、今後の事業拡大について発表しています。日立が、2022428日に発表しました「2024中期経営計画」では、2024年度に売上収益10兆円、Adjusted EBITA 率が12%12,000億円)、ROIC(投下資本利益率)で10%を目指す。売上収益の年平均成長率は57%を見込むとしています。

https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2022/04/0428/f_0428pre.pdf 

 

日立が発表しました中期計画によりますと、日立は、成長分野として下記4つの柱を打ち出しています。

・グリーンエナジー&モビリティ;エネルギーと鉄道⇒電力会社や交通関連会社が顧客

・デジタルシステム&サービス;ITサービスやプラットフォームなど⇒金融機関や公共サービス機関が顧客

・コネクティブインダストリーズ;サプライチェーンなどを提供⇒工場や物流設備などの産業や都市などの公共機関

・日立Astemo;自動運転機能付EVの開発・実用化支援⇒自動車メーカー

 

日立は、上記4つの柱を短期間に立ち上げるため、欧米企業の買収(M&A)を積極的に行っています。

 

日立がこれらのM&Aの成果をきちんと出せれば、上記4つの事業分野で勝ち組になれます。

 

日立の海外企業のM&Aの成果の出し方は、中小企業にとって良い参考事例の一つになります。

 

M&Aの成果を得るには、買収した企業との組織融合の可否にあります。特に、海外企業との組織融合が課題になります。

 

この視点から、戦前からの旧財閥企業であり、大手重工業の代表格企業である日立が、M&Aの果実をどのように獲得していくか、大きな関心をもっています。

 

今後の日立の動き方を考えるときの、ヒントになることがあります。それは、テレワークの実施です。

 

日立は、大手製造業の中で、いち早くテレワークの恒久化を打ち出しました。私は、このテレワークの恒久化は、従業員の働くモチベーションを如何にして高めて、従業員の幸福度を高めながら、仕事の生産性を上げるかを目的にしていると考えます。

 

この日立の取り組みは、「日立ワークスタイル変革ソリューション」のWebサイトに書かれています。

https://www.hitachi.co.jp/products/it/ws_sol/picup/telework/index.html 

 

日立がテレワークを行う目的は、人財の高付加価値化にあります。日立の競争力の源泉は、技術力です。

 

その技術力は、ソフトウェア、ハードウェアなどの技術者の能力に基づきます。つまり、能力の高い技術者を雇用し、その技術者の幸福度を最大化しながら、最高の創造力を出してもらえる労働環境の提供が、テレワークにつながっています。

 

テレワークをスムーズに行うには、コミュニケーション、情報共有、マネジメント、セキュリティなどの視点から、さまざまな仕組みやルールを確立する必要があります。

 

会社は、組織やチームで動きますので、テレワークは技術者だけでなく、他の従業員に対しても同じやり方を適用するのは、当然のことです。

 

日立は、数年前までこてこての大手重工業の企業でした。この日立が、大きな改革と返信ができたのは、経営陣の意識の持ち方と経営のやり方にあります。

 

この文脈で考えますと、日立が実施してきましたM&Aは、組織融合が上手くいき、その結果として成果をあげることが可能になると考えています。

 

ソニーが、長期間続いた集中と選択作業を終えて、現在の姿になったのは、経営陣の能力によります。

 

日立やソニーの動き方を見ていますと、経営陣による経営のやり方と組織の運営方法が、その企業の成長や収益力の維持拡大につながるか実感しています。

 

最近、テレワークを続けるか、あるいは止めるかの方法について、色々な議論が行われています。

 

そのような場面に直面している企業は、日立のやり方を参考にすることをお勧めします。ポイントは、従業員の幸福を最大化しつつ、従業員の創造力やモチベーションを高めるやり方を見つけることにあります。

 

私の支援先企業(IT企業や製造事業者)の多くは、何らかの形でテレワークを行っていますが、問題になっているところはありません。

 

要は、上記しましたように、経営陣の経営力と組織のあり方によると考えます。国内では、人材不足が続きます。人材を人財と考えて、事業することが企業経営者に求められます。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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日経記事;『フォード、3000人削減 事務職など EV投資余力高める』に関する考察 [事業再生、集中と選択]

                                                     2022年8月24日


皆様、

こんにちは。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

822日付の日経新聞に、『フォード、3000人削減 事務職など EV投資余力高める』のタイトルで記事が掲載されました。

 

本日は、この記事に関して考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『米自動車大手フォード・モーターは米国などで3000人規模の人員削減に踏み切る。22日、社員向けにメールで計画を通達した。事務職を中心に人件費を削減し、電気自動車(EV)事業での投資余力を高める。。。』

 

アメリカの2大自動車メーカーである、GMとフォードは、共に現在電気自動車(EV)の開発・実用化に邁進しています。

 

EVの事業分野では、テスラモーターズという新興企業が販売台数を大きく伸ばしています。

 

多くのアメリカ国民は、カリフォルニア州やニューヨーク州などの環境先進地域を除いて、総じてガソリンエンジン車を愛用・使用しています。

 

しかし、昨今のガソリン代の高騰は、アメリカの保守的なガソリンエンジン車愛好家の考え方を、徐々に変化させています。

 

環境対応に保守的な州でも、ガソリン代の高騰に対応するため、徐徐ではありますが、ハイブリッド車(HV)やEVへの関心が高まりつつあるあります。

 

GMやフォードは、アメリカ市場だけでなく、欧州などで自動車販売を行っています。欧州では、一気にEV化の波が押し寄せています。特に、ロシアのウクライナ侵略から発生しましたガソリン代の急激な高騰は、EV化を加速させています。

 

GMとフォードは、EVの開発・実用化を行わなければ、米欧市場で事業基盤を失うことになります。

 

何度か本ブログ・コラムで書いていますように、EVの開発・実用化には、しょうしょう極端な言い方をしますと、既存のガソリンエンジン車の技術的なノウハウは、役に立ちません。

 

しかも、EVには、今後、自動運転機能の追加・強化が必然的になっています。

 

国内自動車メーカーでは、トヨタがHV、水素燃料電池車、EVなど多種類の自動車の開発・実用化を進めています。

 

多分、このトヨタでさえ、テスラモーターズや中国のEVメーカーなどとの競争から、将来の自動車分野について、集中と選択作業を行う必要があると想定しています。

 

ホンダや日産は、将来の自動車はEVに絞って、開発・実用化を進めています。ホンダの場合、自動運転機能付EVの開発・実用化を見据えて、ソニーとのオープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を組んでいます。

 

本日の記事にありますフォードは、ドイツのフォルクスワーゲンと事業連携(アライアンス)を組んで、EVの開発・実用化を進めています。

 

今まで、ガソリンエンジン車に特化して自動車の開発・実用化を進めてきたメーカーにとって、自動運転機能付EVの開発・実用化を行うことは畑違いの事業分野で競争することになります。

 

フォードは、自動運転機能付EVの開発・実用化に対して、巨額の開発投資を行う必要があります。

 

今回、フォードが発表した事務職を中心に3000人の人員削減を行うことは、会社にとって合理的な決定です。

 

フォードは、この圧縮した人件費をEVの開発・実用化に必要な投資に充てることになります。フォードは、更なる集中と選択作業を行う必要性があると考えています。

 

フォードには、自動車産業で100年に1度の大変革期を乗り越えるため、徹底的な集中と選択を行いながら、新規投資を躊躇なく行う経営姿勢が求められます。

 

アメリカと日本では、労働慣行が異なりますので、国内自動車メーカーがフォードと同じような集中と選択作業を行えません。

 

しかし、今後、フォードがどのような形で集中と選択作業を行いながら、新規投資の実施、オープンイノベーション;事業連携(アライアンス)の実行を行っていくのか、その進め方は、国内自動車メーカーにとって参考になります。

 

フォードが、これらの3つのことをタイムリーに進められなければ、米欧の自動車市場から退出させられる可能性があります。

 

国内自動車メーカーは、フォードと同じリスク・可能性があります。

 

EV業界の動きは速いので、国内自動車メーカー、フォード、GMなどの既存自動車メーカーは、迅速な経営を行うことが求められます。

 

これらの自動車メーカーの動き方は、集中と選択作業を行いながら、新規事業の立上を行う中小企業にとって参考になります。この視点から、この動き方について大いに注目していきます。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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日経記事;『富士通、早期退職3031人 今期、関連費用650億円計上』に関する考察 [事業再生、集中と選択]

                  2022年3月9日


皆様、

こんにちは。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

39日付の日経新聞に、『富士通、早期退職3031人 今期、関連費用650億円計上』のタイトルで記事が掲載されました。

 

本日は、この記事に関して考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『富士通は8日、本体と国内グループ会社で募集した早期退職に過去最大規模の3031人が応募したと発表した。国内従業員の約4%にあたる。20223月期の連結純利益予想も前期比21%減の1600億円と従来予想を450億円引き下げた。退職金の積み増しなど関連費用を計上し、1%増とする従来予想から一転して減益となる。。。』

 

富士通の今までの主要な事業モデル(ビジネスモデル)は、顧客顧客からシステム開発を請け負うことと、メインフレームの販売でした。

 

富士通は、ここ23年の間に、既存ビジネスモデルについて、大規模な変革を行っています。

 

富士通の大規模改革の背景にあるのは、国内外企業による多数のデータセンター設置によるクラウドサービスの急拡大と、システム開発の請負ビジネスの採算低下です。

 

富士通は、20222月に、2030年度(20313月期)末にメインフレームの製造・販売から撤退することを表明しました。

 

富士通のメインフレームは、アマゾン、マイクロソフト、グーグルやなどが提供するクラウドサービスと勝負しても勝てないと判断されたと推測します。

 

企業がクラウドサービスを利用する最大のメリットは、自社でメインフレームやサーバーを管理する必要が無いことです。

 

また、富士通は、システム開発の請負ビジネスからも撤退し、データの活用や新規事業のためのシステム提案などのコンサルティング機能をもつ、ソフトウェアオリエンテッドのビジネスモデルに変化しようとしています。

 

これは、自治体や企業が今後、DXを積極的に行って、新サービスや新規商品の開発・実用化を進める状況に移行しつつあることによると考えます。

 

私は、この富士通の既存ビジネスモデルを廃棄して、新規ビジネスモデルに移行する決断を行ったことに注目しています。

 

富士通が新規ビジネスモデルで勝ち組になるためには、「能力のあるソフトウェアエンジニア」を中核にする事業体制が必要不可欠になります。

 

「能力のあるソフトウェアエンジニア」は、人財です。

 

富士通は、最近、多くの働き方改革を実行しつつあります。富士通は、20207月にニューノーマル時代における新しい働き方のコンセプトとして「Work Life Shift」を発表しました。その後、富士通は202110月、「Work Life Shift2.0」を発表しました。

 

富士通によると、「Work Life Shift」は、「仕事」と「生活」をトータルにシフトして働き方を改革しようというもので「Smart Working」「Borderless Office」「Culture Change」の3つの軸で構成されています。

 

Smart Workingは、新型コロナウイルスの影響拡大下で定着した、テレワークが中心の働き方であり、オフィスへの出社との組合せによるハイブリッド型になっています。

 

富士通は、多くの社員がテレワークを希望していることから、採用しました。Borderless Officeは時間と場所の制約から解放するとしています。

 

現在、多くの国内企業は、メンバーシップ型雇用を採用しています。メンバーシップ型雇用は、雇用者や上司などが、従業員に臨機応変に仕事割り振る雇用形態です。課やチームに与えられた仕事を行うやり方です。

 

このメンバーシップ型雇用は、新卒一括採用・終身雇用・年功序列の仕組みが前提になります。今の日本では、この前提が崩れつつあります。

 

欧米企業では、ジョブディスクリプション(職務記述書)によって、担当職務とその成果が決められているジョブ型雇用が採用されています。

 

富士通は、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に変更しつつあります。富士通は、上記しましたように、「能力のあるソフトウェアエンジニア」を中核にしようとしています。

 

能力のあるソフトウェアエンジニアは、ジョブ型雇用で雇うことにより、彼らの専門的な職務内容と期待成果を明確化して、働く場所や勤務時間などの制約を低くすることにより、柔軟な働き方ができる制度を整えることで働くモチベーションを最大化できます。

 

また、テレワークには、日本のメンバーシップ型雇用が馴染まないです。

 

以前、私が勤務していた企業には、ソフトウェア開発部隊に多くのSEと称される人がいました。

 

私がこのソフトウェア開発部隊と共に働いたときに、この社内SEの多くが、プログラミング未経験であり、主に下請のIT企業に対するマネージメントやプロジェクトの進捗管理を行っていたことを知りました。

 

多くの社内SEは、Excelを開いてスケジュール管理などを行っていたことは、驚きでした。

 

多分、システム開発を請け負っていた富士通も、似たような状況であったと、推測します。多くの場合、国内の大手IT企業は、請け負ったシステム開発を、多くの下請けITベンダーに開発依頼を行います。

 

もし、社内のソフトウェアエンジニアが、中核となってソフトウェア開発を行う必要が無ければ、「能力のあるソフトウェアエンジニア」は育っていません。

 

富士通の新しいビジネスモデルは、多くの「能力のあるソフトウェアエンジニア」を必要としますので、ソフトウェアエンジニアの総入れ替えが必要になります。

 

本日の記事は、富士通のソフトウェアエンジニアの入れ替えに関する動き方の一環として捉えています。

 

私は、富士通の経営環境や事業環境に対する認識と、解決策の実行のやり方を、合理的と捉えています。

 

富士通の競合企業は、米大手IT企業となります。富士通が米大手IT企業と競争するとき、「能力のあるソフトウェアエンジニア」を確保しつつ、より一層オープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を積極的に取り入れて、激変する事業環境に柔軟に、かつ、しっかりとしたやり方で実行することが必要不可欠になります。

 

今後の富士通の状況に注目していきます。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 

 


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日経記事;『IBM、クラウド重視布陣CEOにインド出身者/社長に外部人材』に関する考察 [事業再生、集中と選択]

                                            2020年2月2日


皆様、
こんにちは。


グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。


2月1日付の日経新聞に、『IBM、クラウド重視布陣CEOにインド出身者/社長に外部人材』のタイトルで記事が掲載されました。


本日は、この記事に関して考えを述べます。


本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『米IBMが8年ぶりのトップ交代に踏み切る。バージニア・ロメッティ最高経営責任者(CEO、62)が4月に退任し、後任にクラウド担当のアービンド・クリシュナ上級副社長(57)が就くと30日に発表した。20世紀の「IT(情報技術)の巨人」は近年は停滞気味。市場は急成長する一方、同社が出遅れているクラウド事業を重視した布陣で浮上を目指すが、課題は多い。。。』


私は、何度か本ブログ・コラムでIBMについて書いています。そのほとんどがIBMの合理化;集中と選択作業に関することになります。


IBMは、何度か経営危機を経験しています。その歴史の中で最大の危機だったのは、1992年に約50億ドルという巨額の赤字を出し、文字通り瀕死の状態にありました。


このIBMの危機を救ったのは、1993年にCEOに就任したルイス・ガースナー氏でした。


ガースナーは、様々な合理化;集中と選択作業を積極的に行って、5年後の1998年頃には、60億ドル強の利益を出せる経営体質に変えることができました。


ガースナーは、当時のIBMのが事業基盤としていたメインフレームのハードウェア事業からの脱却を目指して、ソフトウェア主体のビジネスモデルに変更することを大胆に行いました。


このガースナーの一連の経営改革は、彼が書いた書籍『巨像も踊る』に詳しく書かれています。


この『巨像も踊る』は、日本で話題になり、私を含めて多くの人が購入しました。


このガースナーのやり方は、当時多くの国内電気機器メーカーが行っていた合理化;集中と選択作業の手本の一つになりました。


中でも、IBMが取った集中と選択作業の一つが、パソコン事業を2005年に中国のパソコンメーカーであるレノボに売却しました。


当時、IBMのノートパソコン、Think Padは利益を出していました。IBMは、ノートパソコン事業が近々に赤字事業になると予測して、ハードウェア事業であるノートパソコンビジネスから撤退しました。


このIBMの経営判断は、ハードウェア事業からソフトウェア事業への、事業基盤の移管作業の象徴の一つになりました。


このIBMの経営判断の先見性は正しく、その後国内家電メーカーの多くがノートパソコン事業を縮小したり、撤退しました。


このIBMのハードウェアからソフトウェアへの事業基盤の変革は、ビジネスの強みの源泉がハードウェアのモノづくりではなく、ソフトウェアの付加価値から生み出す動きの象徴的なものになりました。


IBMのハードウェア事業からの撤退は、2003年にハードディスク駆動装置(HDD)事業売却、2014年PCサーバー事業売却などを行っています。


しかし、IBMの既存事業基盤の一つが、大型コンピューターのメインフレーム事業になっていることについては、変わりがありません。


ここにIBMの弱みがありました。また、私が日本IBMの社員と一定期間ビジネスのつながりをもった経験で言いますと、この企業の社風が、日本のIT企業である富士通や日立製作所などと似ているとの印象をもっています。


要は、しょうしょうきつい言い方をすると、IBMの合理化;集中と選択作業が中途半端になったのではないかと推測します。


大型コンピューターのメインフレーム事業は、IBMにとって主力事業になります。このメインフレーム事業は、アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどの米大手IT企業が仕掛けているクラウドサービスビジネスから、大きな影響を受けています。


多くの企業は、現在、クラウドサービスを利用しています。また、クラウドサービスを使用している企業の割合は、毎年増えています。


クラウドサービスの増加は、IBMのメインフレーム事業の顧客を奪いつつあります。


更に、IBMはソフトウェア事業の柱として、人工知能であるワトソンの拡販を長年行っていますが、成果を出しているとは言えない状況です。


今回のIBMトップの変更は、この会社にとっては初めてとなります。インド出身のクラウドサービスを手掛けている人に委託することになります。


IBMが、、アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどのカリフォルニア州に拠点をもつ米大手IT企業との競争に打ち勝つには、ソフトウェアの技術的な強みを持つことに加えて、経営の迅速な実行能力やノウハウをもつ必要があります。


アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどの米大手IT企業は、既存事業基盤を急速に破壊・再構築する動きで、収益拡大を実現してきました。


また、これらの企業は、オープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を積極的に活用しています。


IBMは、今後、クラウドサービス事業を強化しようとしています。このクラウドサービスは、社内のメインフレーム事業と競合します。


クラウドサービスは、現在、アマゾンとマイクロソフトが2強になっており、グーグルが追いかけています。


このグーグルは、社内でクラウドサービスビジネスの継続の是非について検討し、当該サービス事業を継続することを確認しました。


この事業環境下で、IBMがどのような経営計画と行動を起こして、収益拡大を実現するのか、注目していきます。


IBMが中途半端な形で、合理化;集中と選択作業を行うと、他の大手IT企業との競争に負けてしまいます。如何に経営資源を集中して、迅速に対応できるかがポイントになります。


この視点からIBMの動きは、国内ベンチャー・中小企業にとって参考になります。


よろしくお願いいたします。


グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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日経記事;『日米欧の自動車大手 7万人削減リーマン時に迫る EVにらみ構造改革』に関する考察 [事業再生、集中と選択]

                                 2019年11月17日


皆様、
こんにちは。


グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。


11月17日付の日経新聞に、『日米欧の自動車大手 7万人削減リーマン時に迫る EVにらみ構造改革』のタイトルで記事が掲載されました。


本日は、この記事に関して考えを述べます。


本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『米ゼネラル・モーターズ(GM)など日米欧の自動車大手が人員削減を始めた。削減策の合計人数は7万人超となり、リーマン・ショック直後の10万人超に迫る。景気の減速感などによる新車販売台数の減少に加え、電動自動車(EV)など次世代車に転じていく構造変革に動きつつある。部品メーカーなど裾野が広い自動車業界の人員削減は雇用環境の改善に影を落とす。。。』


私が以前勤めていましたAV家電メーカーは、米MictosoftがWindows95を市場投入以降、米IT企業の猛攻を受けた結果、深刻な事態に直面しました。


当時、私が勤めていましたメーカーには、プログラマーやソフトウェア技術者は、数多くいませんでした。当時の技術者の多くは、電気回路や機械関係の分野の人たちで占められていました。


米IT企業は、パソコンやソフトウエアを駆使して、我々の既存事業基盤を急速に破壊・再構築する動きを加速して実行しました。


その結果、多くの国内AV家電メーカーは、既存事業基盤を失い、売上不振に陥りました。


私が会社勤務した最後の10年間は、集中と選択作業の真っただ中にいました。既存事業からの撤退、子会社のリストラを行って、固定費削減をしました。


その一方、新規事業を短期間に立ち上げるため、海外ITベンチャー・中小企業の買収や、これらの企業との協業・連携(アライアンス)を、積極的に行いました。


企業にとって、既存事業基盤を短期間に失うことは、耐えられないことです。自信を失いながらも、歯を食いしばってプログラマーやソフトウエア技術者を獲得するために、数多くの企業買収やアライアンスを行いました。


本日の記事に書いてありますことは、かってAV家電業界で直面したことが、自動車業界で2~3年前から起こっていることを示しています。


現在のガソリンエンジン車は、高度な機械および制御技術で成り立っています。しかし、CO2削減などの環境負荷負荷低減の動きは、自動車業界に深刻な影響を与えています。


今後の自動車の主役は、ガソリンエンジン車ではなく、電気自動車(EV)や水素燃料電池車などの環境対応車になります。


しかも、米大手IT企業のGoogleは、自動運転機能付EVの開発・実用化を積極的に行っています。


米大手EVメーカーであるテスラモーターズの動き方を見ると、Googleと同じような自動運転機能付EVの開発・実用化を行っています。


トヨタ、ホンダ、日産、米GM、独フォルクスワーゲンなどの世界的な自動車メーカーは、まさに100年に1度の巨大な事業基盤変化期に直面しています。


トヨタの動き方については、たびたび本ブログ・コラムで書いていますように、自動運転機能付EVの開発・実用化に向けて、多額の投資と積極的にオープンイノベーションのやり方を取り入れています。


このような自動車業界の現状では、ガソリンエンジン車を前提とした開発体制を急激に変革しないと、世界市場で勝ち残れないことは明白です。


かって私がいましたAV家電業界では、アナログ技術からデジタル技術への急速な移行を行う必要がありました。


今の自動車メーカーは、固定費削減を行いながら、自動運転機能付EVの開発・実用化に向けた新規投資を行いながら、技術者のシフトチェンジを行う必要があります。


技術者の再教育やトレーニングも必要になります。このシフトチェンジについていけない技術者は、リストラの対象になります。


また、ガソリンエンジン車の既存工場も、商品組立の方法や使用部品などが、ガソリンエンジン車とEVでは大きく異なりますので、統廃合が起こります。


自動車産業は、日本経済を支える大きな事業分野ですので、トヨタが中心となって、多少の痛みを伴いながら、シフトチェンジを行うことを期待しますし、祈念します。


集中と選択の過程にある人たちの苦労は、よく理解できます。私経験からいえますことは、各人が環境の変化に応じられるように、専門性をもつ努力を行って、違う会社や職場で、勝ち残れるように動くことの重要性です。


銀行や保険などの金融機関でも、単純な事務作業は、RPAなどに置き換えられつつあります。その結果、大量の人員が職場変更やリストラの対象になっています。


日本全体で見ますと、人手不足は深刻化しています。会社従業員に対する再教育やトレーニングは、政府や地方自治体なども積極的に動く必要があると考えます。


自動車産業のシフトチェンジは、避けて通れません。個人、会社、政府などが、積極的にかつ早急に、対応策を考えて実行することが重要であり、必要になります。


よろしくお願いいたします。


グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁

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日経記事;『ルネサス、最大1.4万人削減 台湾企業に主力工場売却』に関する考察 [事業再生、集中と選択]

             2012年5月26日

皆様、
おはようございます。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

5月26日付の日経新聞に、『ルネサス、最大1.4万人削減 台湾企業に主力工場売却』のタイトルで記事が掲載されました。

本日はこの記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。

『業績が悪化している半導体大手のルネサスエレクトロニクスは、主力の鶴岡工場(山形県鶴岡市)を台湾企業に売却するとともに、従業員の約3割にあたる最大約1万4千人を削減する方針を固めた。退職金などリストラ費用をまかなうには1千億円超の資本増強が必要で、主要株主のNECや日立製作所などに支援を要請する。世界首位のマイコン事業に経営資源を集中し、再建を図る。。。』


米国の市場調査会社であるIC Insightsが2012年2月に発表しました資料によると、2012年は、世界半導体市場統計(WSTS:World Semiconductor Trade Statistics)が定義した33の半導体製品分野(カテゴリ)の中で下記マイコンが成長を維持するとのこと。

・NAND型フラッシュメモリ⇒15%の成長
・無線通信向けロジックIC⇒15%の成長
・32ビットマイコン⇒15%の成長

上記三つのカテゴリは何れも2011年比15%の成長が見込まれています。

NAND型フラッシュメモリ市場は、ここ数年の間、最も高い成長を達成しています。これは、モバイル機器、とりわけスマートフォンやタブレット端末の市場が大きく成長しているため。SSD(Solid State Drive)の需要の高まりを受けて、NAND型フラッシュメモリ市場は2012年もそのメリットを享受し、成長するとみられています。

無線通信向けロジックICには、スマートフォンおよびタブレット端末向けのアプリケーションプロセッサなどが含まれ、ここも成長分野となるとのこと。

これらのマイコン市場で、ルネサスは、約30%のシェアを有し世界トップメーカーとなっています。

本日の記事は、ルネサスが得意分野のマイコンに経営資源を集中して勝ち残りを図るやり方について書いています。

収益の足を引っ張っていたシステムLSI事業の大幅な合理化を行います。システムLSIの主力工場をTSMCに売却するための交渉に入っているとのこと。

システムLSIは、かってルネサスの主力製品でしたが、顧客ごとのカスタム品に特化した結果、競合他社の汎用品との価格競争に負けて巨額の赤字に直面していました。

たびたび、日経などでシステムLSIの赤字脱却策について報じられていました。富士通やパナソニックなどもシステムLSI事業の赤字に直面しており、ルネサスと事業統合が話されていました。

システムLSIは、家電業界の液晶テレビと同じで完全な汎用品となっており、価格競争の状態に入っています。

仮に、ルネサス、富士通及びパナソニックの3社連合が出来たとしても、システムLSIの製品群を大幅に見直して、収益の上がらないカスタム品は撤退し、競争力のある汎用品で勝負することが必要です。

システムLSI事業に関しては、このような集中と選択が出来ない場合、全面撤退することも考える必要があります。

何れにせよ、ルネサスはシステムLSIを主力事業から切り離して、身軽になる必要があります。また、液晶テレビ用半導体事業も売却や撤退を考える必要があるとみます。

ルネサスが得意のマイコン事業に経営資源を集中させるやり方は合理的です。現在、約30%の世界シェアを持っていますが、今後は、マイコン専業メーカーとして当該シェアを倍増させるくらいの高い目標を持って行なう徹底さが重要です。

マイコン事業をさらに深化させて、世界の競合他社を寄せ付けない不動の地位を確保することが大事です。

大手企業といえども、幅広い製品群で勝負する時代ではなく、専業メーカーとして世界市場で勝ち残っていく必要があります。それが半導体や電機業界に求められています。

ルネサスは、迅速、且つ、徹底的な集中と選択を行って世界最強のマイコン専業メーカーとして、勝ち組になることを大いに期待します。

ルネサスが集中と選択の成功事例と一つなることを希望します。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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