日経記事;『ダイキン、中国部品無しでもエアコン生産 有事に備え』に関する考察 [海外進出・海外移管]
皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
9月20日 付の日経新聞に、『ダイキン、中国部品無しでもエアコン生産 有事に備え』のタイトルで記事が掲載されました。
今回は、本記事について考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『ダイキン工業は2023年度中に有事に中国製部品が無くてもエアコンを生産できるサプライチェーン(供給網)を構築する。省エネルギーなど中核機能にかかわる部品を日本国内で内製化するほか、取引先に中国外での生産を要請する。ゼロコロナ政策を受けたロックダウン(都市封鎖)や米中対立による供給途絶リスク、地政学リスクも抱える中国への依存度を減らす動きが日本の製造業で広がってきた。。。』
私は、以前に書きましたブログ・コラムにて、米中対立の激化などにより、グローバリゼーションの時代は、現時点では終わったと書きました。
グローバリゼーションについて、グロービス経営大学院のWebサイトでは、以下のように説明されています。
https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11770.html
『グローバリゼーション(グローバル化)とは、地球規模で複数の資本、情報、人の交流や移動が行われる現象のこと。また、自国と他国の関係性を表す「国際化」とは異なり、「グローバリゼーション」はヒト・モノ・カネの流動性が高まり、国境のない世界を意味する。』
日本では、中国ビジネスのやり方について、グローバリゼーションの流れの中で、政経分離の考え方を積極的に取り入れて、中国への投資や、中国市場での販路開拓・集客を積極的に行ってきました。
政経分離とは、日本と中国が政治的に緊張状態にあっても、経済面ではお互いのメリットがある限り、つながりを強めてビジネスを拡大させる考え方です。
しかし、この政経分離は、約10年前に起こった尖閣諸島の国有化問題を起点に起こった、中国国内での反日行動により揺らぎました。
私がこの反日行動で一番驚いたのは、中国人により襲撃された工場の中に、パナソニック(旧松下電器)の工場が含まれていたことです。
パナソニックの創業者である松下幸之助氏は、日中の国交が成立する前から、中国に工場を設立して、中国人に製造ノウハウを教えてきました。
歴代の中国政府は、パナソニックの対応に感謝を示してきました。
しかし、尖閣諸島による反日行動が、パナソニックの工場も対象になった時点で、日本と中国の政経分離は、機能しないことを、私は感じました。
それ以降、私の支援先に対しては、中国国内での新規工場設立は行わず、タイヤベトナムなどで行うようアドバイスしてきました。
確かに、中国市場は、巨大であるがゆえに、大きな魅力があります。また、日本の製造事業者が、この巨大市場内に工場を作ることは、一般的に合理性があります。
私の支援先には、海外に工場設立などの投資を行う場合、政治リスクの最小化を最優先に考えるようアドバイスしました。
政治リスクの高さの視点では、ウクライナ侵略を行っているロシアも対象になります。数年前に、一時期、ロシアへの工場設立などの投資が推されました。
この時にも、数社の製造事業者から相談を受けました。私のアドバイスは、政治リスクを最小化するやり方を最優先して、新規投資を行わないことでした。
中小企業は、投資した相手国の政治状況の変化で、当該国での事業基盤が揺るぐと、その企業の経営に深刻なダメージを与える可能性があります。
私は、政治リスクが存在する国や市場には、投資を行わないで日本あるいはその他の国から輸出を行い、問題が発生したら直ちに輸出を停止するやり方を勧めています。
多くの中小・中堅・大手の製造事業者が、グローバリゼーションの流れに乗って、こぞって中国に工場設立したときは、安い労働力が豊富に存在していました。
米中対立の激化は、深刻化しており、米欧日などの経済圏と、中国やロシアなどの経済圏に分かれる動きが、当面の間、加速するとみています。
このような状況下で、本日の記事にありますダイキン工業の経営施策は、政治リスクを最小化させるためのやり方になります。
国内製造事業者が、中国以外から資材や部品などを調達するときに、コスト高になる場合があります。
このコスト高は、他のコスト圧縮、商品の付加価値を高めて販売価格を上げるなどのやり方で解決することになります。
国内製造事業者にとって、中国に依存しないサプライチェーンの構築は、多くの時間とコストを要します。
これらの課題は、企業が織り込んで、知恵と創意を最大化して、解決する必要があります。
国内製造事業者、特に中小企業は、政治リスクに巻き込まれないようにするのが、最上のやり方です。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁
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