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日経記事;『ベトナム最低賃金、6%引き上げで決着 来月1日から』に関する考察 [海外進出・海外移管]

                    2022年6月28日


皆様、

こんにちは。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

614日付の日経新聞に、『ベトナム最低賃金、6%引き上げで決着 来月1日から』のタイトルで記事が掲載されました。

 

本日は、この記事に関して考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『ベトナム政府は71日に当初の予定通り月額最低賃金を平均で6%引き上げる方針を決めた。4月中旬に政労使でつくる国家賃金評議会で合意していたが、経済界などから異論が出ていた。新型コロナウイルスの流行で据え置かれていた最低賃金の引き上げは約2年半ぶり。。。』

 

以前のブログ・コラムで、国内中小企業が労働コストの安い国に工場を新設する際、当面の安さだけに注目して進出すると、後で大きな負の影響を受けるリスクがあることを述べました。

 

一般的に、国内中小企業が海外に工場を新設するときに考える必要がある項目は、以下の通りです。

 

1.現在および近未来の労働賃金

2.労働力の確保の容易さ

3.対象国の人の勤勉さ

4.社会インフラの整備状況(港湾施設、道路、水道、電気、その他のエネルギー供給状況など)

5.政治的な安定さ

6.社会的な安定さ

7.消費市場への近さ、など

 

上記項目に加えて、ここ7~8年くらい前から、対象地域の政治体制や当該国の経済・安全保障などの要因を考える必要が出てきました。

 

また、政治的な対立が、部品調達や物流にも大きな影響を与えることが多くなっています。

 

米中対立は、その典型例です。さらに、ロシアのウクライナ侵略も、大きな影響を与えています。

 

米中対立が深刻化する前、国内製造企業は、グローバル化の波に乗って、自社の事業に最適なやり方を採用して、中国や東南アジア、米国、欧州などに投資したりして、積極的に進出していました。

 

グローバル化の定義については、日本政府は、「グローバル化とは、資本や労働力の国境を越えた移動が活発化するとともに、貿易を通じた商品・サービスの取引や、海外への投資が増大することによって世界における経済的な結びつきが深まることを意味する。」としています。

 

また、世界銀行はグローバル化を「個人や企業が他国民と自発的に経済取引を始めることができる自由と能力」と定義しています。「自由」とは国境を越えて資本・労働力等の移動に障害がないこと、「能力」とは国境を越えて商品・サービスを提供し、あるいは他の国で経済活動をする能力があることを意味するとしています。

 

グローバル化は、世界経済を大いに活性化して、事業規模の拡大に貢献しました。

 

しかし、現在の世界情勢は、グローバル化がもてはやされた時期とは大きく異なります。国内企業が、単純に工場新設などの投資案件を簡単に決められる状況になっていません。

 

特に、中小企業は、海外への新規工場設立などの投資に慎重になる必要があります。私は、自分の支援先企業には、当面の間、国内からの輸出事業の拡大に集中するようにアドバイスしています。

 

このような状況下でも、消費市場に近いところに、工場を新設する必要がある場合があります。

 

この場合、東南アジアを事例にして、新規工場の新設先を検討するときに、上記考慮すべき項目のうち、1項及び2項について考えを述べます。

 

1.現在および近未来の労働賃金

東南アジアの労働賃金は、JETROなどの公的機関が定期的に調査しています。例えば、JETROの『2020年度 海外進出日系企業実態調査』には、製造業の現場作業員、エンジニア、マネージャー、あるいは非製造業のスタッフ、マネージャーの国別賃金比較ができるようになっています。

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/b5dea9948c30e474/20200017.pdf 

 

本日の記事では、ベトナムの最低賃金の引上げについて書かれています。ベトナムの製造業・作業員の平均賃金は、インドやフィリピンよりも安くなっています。

 

どの国でも労働賃金は上がっていきますので、各種資料から平均賃金の上昇予測率を確認することも必要です。

 

2.労働力の確保の容易さ

一般的に労働力の目安としては、各国の15歳から64歳迄の生産年齢人口が用いられます。生産年齢人口は、現時点での絶対数と今後の伸びを見る必要があります。

 

下記日本政府の資料に、各国の生産年齢人口が示されています。

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2017/02/p058_t2-4.pdf 

 

ベトナムの場合、2015年に6,557万人であり、2030年までは増加する予想になっています。その後、漸減していきます。

 

ちなみに、この資料では、日本の生産年齢人口は2000年に8,573万人でピークとなっており、その後、急速に減少しています。2050年には、5,505万人まで減る予測になっています。非常に深刻な事態です。

 

最近、テスラモーターズのトップである、イーロン・マスク氏が『このままでは日本が消滅すると言ってます』根拠の一つになります。日本政府や国民には、危機感がないようです。。。

 

以上、ベトナムの最低賃金の引上げに関して考えを述べました。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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