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VCケンウッドの経営統合から考えるM&Aのメリット・必要性について [アライアンスとM&A]

                                                  2010年5月17日

皆様、
おはようございます。グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

5月16日付の日経電子版に「JVCケンウッド、見えぬ統合効果」のタイトルで記事が掲載されました。
記事の内容は以下の通りです。

『JVC・ケンウッド・ホールディングスの明日が見えない。日本ビクター、ケンウッドというかつての名門同士の経営統合から1年半が過ぎたが、資産売却や人員削減などリストラに明け暮れる毎日。今期には経営再建を果たすと意気込むが、説得力のある回復シナリオも新しい収益源も不透明なままだ。「電機業界で合従連衡のモデルをつくる」という統合の目的はかすんでいる。』
(全文は5月17日付日経産業新聞「News Edge面」に掲載とあります)


日本の電子電機機器業界は、市場の大きさに対して企業数が多く、昔から競合が激しかった業界の一つです。
また、近年、台湾、中国、韓国のメーカーが大きく成長し、ご存知の通り日本メーカーにとって大きな競争相手になっています。

経営統合当時、JVC・ケンウッド・ホールディングスの河原春郎会長兼CEOは、月刊BOSS 2009年1月号掲載記事の中で次のように述べています。

JVC・ケンウッドの最大の課題が、ビクターの経営再建にあり、売上を伸ばすだけでなく、統合効果によるスケールメリットを活かしてJVCの経営合理化を進める事にあった、と述べています。

経営統合(M&A)を行うときに、当然のこととして、両者はそのメリットを最大限確認して、“Win/Win”の関係を構築するための選択肢として採用することになります。

このお互いのメリットになる事を具体的に描ききれないでM&Aを実行すると、多くの場合、失敗することになります。
私自身が、事業者の中で幾つかのM&Aを体験してきた実感です。
M&Aは異なる組織が合体しますので、買う方も買われる方も多くの痛みを伴いながら行うのが、普通の状態です。

この痛みを和らげて、次の発展に結び付けていけるかどうかは、経営統合決定時に明確な成果を具体的に描けていたかどうかによります。

河原さんは、当時の記事で統合の効果として、「すでに統合効果も出始めています。1つは財務面で、この統合効果はメカニカルに発生しています。いまのような環境が厳しい時は、この統合効果が業績のバッファーになってくれるのはありがたい。事業面でも統合効果はあります。9月にベルリンで開かれた家電見本市に、我々はDVDソフトを見ることのできるカーナビを発表していますが、これはケンウッド1社ではできなかったことです。ケンウッドはこれまで映像分野を手がけてきませんでしたから、単独では競争力のある設計がむずかしい。」と述べておられます。


そして、JVC・ケンウッドの事業領域は、カーエレクトロニクスのほかに、ビクターの手がけてきたAV家電とエンターテインメント事業、そしてケンウッドの無線機器などからなるが、新会社発足にあたり、「第5の柱」の育成を宣言しています。


河原さんは、東芝やリップルウッド勤務時にM&Aを経験されてきた方であり、私はここであれこれ批判するつもりは毛頭ありません。


報道記事からは詳細情報が読みとれませんが、経営統合当時に上記「第5の柱」を含めた事業の柱を、どこまでお互いの強みを発揮して出せるか描き切れていたかどうかが今後の事業展開のポイントの一つになると考えます。

新規事業の柱の計画が明確であれば、競争力ある商品を市場に出せ、売上・利益拡大に貢献していきます。

合理化によるコストダウンは、短期的には利益を出せる体質になれますが、国内、台湾、中国、韓国のメーカーと競争していく為には、ある商品カテゴリーでは、他社と差異化が可能なものを持たないと市場では生き残れないのが現実です。


日本の業界は、明らかに市場規模に対して企業数が多すぎます。
今後淘汰が進む可能性はあります。その観点からも、JVCケンウッド統合が上手く進み、業界全体で競争力が高まる事を期待しています。


パナソニック・三洋の経営統合は、経営合理化を進めると共に、重複する家電商品を整理し、お互いが持つ商品分野の強みを伸ばす、“Win/Win”効果を狙ったと理解しています。例えば、三洋には、優れた電池技術がありました。


よろしくお願いいたします。
以上、

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁


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