日経記事;『全固体電池、OKIなど「評価」事業化で先手 車載も視野』に関する考察 [新規事業開拓・立上]
皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
9月9日付の日経新聞に、『全固体電池、OKIなど「評価」事業化で先手 車載も視野』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『有力な次世代電池として電機や車各社が開発する「全固体電池」で品質や性能を評価するビジネスが相次いで始まる。日本製鉄は2022年度中に企業から受託して試作品を造った上で性能評価する事業を始める。OKIは9月中旬、電池の劣化原因を特定するサービスを始める。電気自動車(EV)での搭載も予想される中、新中古車ともに評価は開発と両輪で重要性が増す。追い上げる海外勢との競争に先手を打つ。。。』
リチウムイオン電池は、世界でいち早くソニーが開発・実用化に成功して、パソコンやスマートフォンで使用され始めました。
しかし、その後、リチウムイオン電池の事業は、パナソニックを除けば、韓国や中国メーカーが大きなシェアをもっています。
リチウムイオン電池は、以前の半導体のように、積極的な開発・製造の投資を行ってこなかった日本メーカーが世界市場で存在感が薄くなっています。
全固体電池は、リチウムイオン電池の次世代型になります。全固体電池は、リチウムイオン電池の問題を解決できることによります。
現在の日本では、官民挙げて全固体電池の開発・実用化を進めています。これは、上記しましたように、リチウムイオン電池の主導権を海外企業に取られたことの反省によります。
政府の支援策の一つとして、つくば市にある国の研究機関、「物質・材料研究機構」は、国内の大手企業10社と共同で研究を進める取り組みを今年度から始めています。
この共同開発は、「全固体電池マテリアルズ・オープンプラットフォーム」呼ばれます。この共同開発にはJX金属株式会社、JFEスチール株式会社、住友化学株式会社、太陽誘電株式会社、株式会社デンソー、トヨタ自動車株式会社、日本特殊陶業株式会社、三井金属鉱業株式会社、三菱ケミカル株式会社、株式会社村田製作所が参加しています。
https://www.nims.go.jp/news/press/2022/06/202206070.html
本日の記事では、全固体電池の開発は、トヨタなどの国内勢が先行しています。この日本企業による先行優位性を維持強化するため、まだ開発途上である全固体電池の評価環境を国内で整備して、国内での開発体制を支援する動きになります。
全固体電池の特許出願件数は、トヨタが圧倒的に先行しています。他の国内企業では、パナソニック、出光興産、住友電気工業、村田製作所、富士フイルムなどが特許出願しています。
トヨタは、HV、PHV、EVの次世代電池の本命は全固体電池であると表明しており、2020年代前半に全固体搭載のHVを発売する計画をもっています。
他の自動車メーカーでは、ホンダ、日産、独フォルクスワーゲンも、全固体電池の開発・実用化を積極的に進めています。
全固体電池は、将来の日本の経済競争力を左右するコアデバイスの一つになります。日本は、半導体やリチウムイオン電池の事業機会を奪われた失敗を繰り返さないことが非常に重要であり、必要です。
米中対立やロシアによるウクライナ侵略は、全世界市場を対象としたグローバリゼーション、あるいはグローバルエコノミーの考え方が通用しない市場環境を作り出しました。
その観点から、全固体電池の開発・実用化・製造は、国内企業が容易に当該電池を使える事業環境にする必要があります。
日本の立ち位置は、明らかに米欧と共にあります。固体電池の開発・実用化・製造は、日米欧などの経済圏で行う必要があります。
以前の日本で、半導体やリチウムイオン電池の事業基盤を失ったのは、技術力の差ではなく、海外市場や海外顧客を積極的に取り込んで、市場シェアを拡大しながら巨額投資を行うやり方を積極的に行わなかったことにあります。
この観点から、全固体電池の開発・実用化を行っている専業メーカー、例えば、パナソニックには、車載用だけでなく、発電所、工場、オフィス、家庭などで使用される各種用途での全固体電池供給を目指してもらいたいと考えています。
テスラは、自前でリチウムイオン電池の巨大工場を作り、車載用だけでなく、多用途での電池販売を行おうとしています。
この点では、トヨタにも、将来車載用だけでなく、多用途での全固体電池の販売を期待します。
全固体電池の開発・実用化・製造は、国内関連企業のオールジャパン体制で、一気呵成に進むことを大いに期待しています。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁
コメント 0