日経記事;『日産「ノート」HV専用に 電動化に経営資源集中製造費、ガソリン車並みへ』に関する考察 [新規事業開拓・立上]
皆様、
こんにちは。グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
11月25日付の日経新聞に、『日産「ノート」HV専用に 電動化に経営資源集中製造費、ガソリン車並みへ』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『日産自動車が電動化に一段と踏み切る。24日、同社として国内で最も売れる小型車「ノート」の新モデルを発表。今後はハイブリッド車(HV)タイプ専用とし、通常のガソリン車は設けないことを表明した。量産効果で製造コストをガソリン車並みに引き下げて、HVの収益力を高めることを目指す。世界で環境規制が厳しくなるなか、対応を急ぐ。。。』
今回、日産が「ノート」に搭載したHVの仕組みは、トヨタ自動車やホンダとは異なります。日産は、独自のHV技術「eパワー」をノートに搭載して、HV専用車としました。「eパワー」は、ガソリンエンジンが発電の役割のみを行い、モーターのみで走ることにあります。
つまり、「eパワー」はガソリンを給油すれば、自動車に搭載した電池への充電を行う必要がありません。
これに対して、トヨタとホンダのHVは、エンジンとモーターを切り替えながら走りますので、必要に応じて搭載した電池に充電する必要があります。
また、CO2排出量削減の観点からは、「eパワー」は言わばガソリンを燃料として発電を行いますので、電気自動車(EV)と同じ効果が得られます。
トヨタとホンダのHVは、ガソリンエンジン車の機能を使いますので、CO2排出を行います。
「eパワー」の仕組みは、下記日産のWebサイトに掲載されています。
言わば、「eパワー」はEVと同じように、モーターのみで100%駆動することが最大の特徴となります。
日産は、この「eパワー」をすべてのHVに搭載し、EVとの組合せで、今後の環境対応車とする計画です。
イギリス、フランス、米国(カリフォルニア州など)、中国、日本などの多くの主要国が2030年から2050年までに、CO2排出をゼロもしくは大幅削減する方針を打ち出しています。
これに呼応して、多くの自動車メーカーが、HV、EV、水素燃料電池車を開発・実用化しています。欧州の自動車メーカーは、主にEVに特化して開発・実用化を進めています。
EVの最大の課題は、搭載する電池の充電能力に多くの制約があることです。現在のEVは、1回の充電での走行距離、真夏や真冬での過酷な環境下でガソリンエンジン車並の走行距離やエアコンの使用頻度を保証できるかどうか、などの課題を抱えています。
また、EVは必ず充電する必要がありますので、数多くの充電スポットやステーションの普及が必要です。
これに対して、「eパワー」はガソリンスタンドでガソリンを給油すれば、EVになります。「eパワー」の強みは、既存のガソリンスタンドの社会インフラを活用して、EV機能を提供できることにあります。
究極の環境対応車は、水素燃料電池車と言われています。水素燃料電池車の最大の課題は、水素ステーションの普及が必要なことと、車体の販売価格が高いことにあります。
EVは、ガソリンエンジン車の開発・実用化に比べて、既存自動車メーカーがもっているノウハウをそれほど必要とせず、使用する部品点数も少ないので、参入障壁が低くなっています。多くの中国企業が、EVの開発・実用化を進めることができるのは、低い参入障壁によります。
今回、日産が「eパワー」をすべてのHVに搭載する決断をしたことは、このHVとEVを自社の環境対応車の柱とすることになります。
今後、日産が「eパワー」の強みを最大限に活用して魅力的な自動車を開発・実用化できるかが重要なポイントになります。
現在の日産は、かってのライバル企業であるトヨタと比べると、新型コロナウイルスの影響拡大要因も含めて、巨額赤字に直面しています。日経記事によると、21年3月期の連結最終損益は6150億円の赤字を見込みます。
この事業環境下、日産は「eパワー」を活用してHVの商品力を強化し、EVとの併売で環境対応車とする経営方針を打ち出しました。
自動車産業は、日本経済を支える大きな柱の一つです。この観点から、今までトヨタやホンダの動き方を中心に、事業展開のやり方について注目してきました。
今後、「eパワー」のフル活用を打ち出しました日産の事業展開のやり方についても、注目していきます。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁
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