「レナウン、中国大手企業の傘下に」の新聞記事に関する考察 [アライアンスとM&A]
2010年5月23日
皆様、
こんにちは。グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。
5月10日に帝国データバンクは、 「TDB景気動向調査(特別企画):業界再編に対する企業の意識調査」を発表した事に関して、5月16日に『帝国データバンク「:業界再編に対する企業の意識調査」に基づくM&Aに関する考え方』とのタイトルでブログを書きました。
「新興国企業による日本企業買収、日本経済にとって「脅威になる」が78.1% との調査結果が報告されています。
しかし、個別企業の動きを見ると、中国企業が日本企業の株式を取得する例はこの2、3年増えています。有名企業では、スポーツウエアのフェニックスや家電量販店のラオックス、ゴルフクラブの本間ゴルフなどが中国企業の傘下に入りました。
この状況下、「レナウン、中国大手企業の傘下に」との見出しで、5月23日付の日経新聞や朝日新聞などに、経営再建中のレナウンが、中国の繊維大手、山東如意集団(山東省)から数十億円、株式比率で40%となるレベルの出資を受け入れる事になったとの記事を掲載しました。
記事によると、レナウンは、山東如意集団の傘下に入る事により、安定した資金繰りが出来る環境を整えるメリットを見出したようです。
一方、山東如意集団は、レナウンが持つ「ダーバン」などのブランド活用や、国内市場にレナウンを通じて参入するメリットを感じているようです。
これらの観点から双方は「Win/Win」の関係を構築できたのでしょう。
レナウンにとっては、40%の株式を山東如意集団に渡し、最大株主となってもらうと共に、経営の重要事項の拒否権を取れる経営権を持たせることになります。
レナウンは、安定した資金繰りと、中国企業との連携により、国内市場だけでなく、中国や海外市場で売上を伸ばし、国際的なアパレル企業になれる機会を得る事になると思います。
中小企業が外資に買収されたり、出資を受けて外資系の企業傘下に入る事が増えて来ると考えています。
その時に、単に飲み込まれてしまうのではなく、たくましく、考えて行動していく必要があります。
多くの中小企業にとっても、海外市場を含めた事業プランを考える時期に来ています。
日本及び海外市場は大きくかつ急激に動いていますので、果断に意思決定をして「集中と選択」を行いながら、自社の経営力や技術力を迅速に向上させる必要があります。
「Win/Win」の関係が確認できるM&Aや出資なら、相手が中国を含めた海外企業でも積極的にこの手法を活用すべきと考えます。
レナウンが今後たくましく、国際企業として事業展開していくことを期待します。
そうなれば、中小企業の良いお手本となります。
よろしくお願いいたします。
以上、
グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁
経産省「産業構造ビジョン」の骨子案:M&A促す環境整備に関する考察 [アライアンスとM&A]
2010年5月19日
皆様、
こんにちは。グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。
5月19日付の日経新聞に、経済産業省が産業競争力強化の指針となる「産業構造ビジョン」の骨子案を発表したと報じました。
6月1日に報告書をまとめ、政府は6月中に策定する新成長戦略の柱にする予定です。
◆産業構造ビジョン骨子案の主な内容は、以下の通りです。
・法人税の実効税率(約40%)を将来的に国際的水準(25~30%)に引き下げ。先行的に来年度5%下げ
・企業の合併・買収の手続きの簡素化
・海外でのインフラ整備支援
・アジアでのEPA(経済連携協定)拡充
・海外企業の研究開発部門など誘致
・電気自動車など10分野で国際標準化の推進
・「地域ものづくり技術伝承者育成塾」創設、など
この中で私が注目するのは、M&A手続きの簡素化です。
政府の考え方は、日本市場では、例えば、電気・電子業界で多くの企業が競争しているため、投資余力や収益が海外企業より見劣りする。
そこで、国内企業が国際競争力の強化に向けてM&Aしやすい環境を整える必要があるとの認識です。
具体的には、企業が合併などう検討する場合、独禁法に抵触しないかどうか、「事前審査」を行う必要があります。この事前審査を公開性にして結果を透明にする事により、合併計画を立てやすくなるようにします。
或いは、完全子会社化の条件のうち、株主総会での議決を不要にするなどです。
上記施策は、直接的には、大手企業が対象になります。
しかし、私はこのM&Aを促す環境整備が整えられると、中小企業の間で、M&Aに対するある種の嫌悪感;アレルギーが小さくなり、M&Aを普通の経営手法のように考えてもらえる機運が生まれる事を期待しています。
現在、多くの中小企業が売上不振や高齢化などにより、廃業しています。
廃業は、従業員の雇用機会と、その企業で培ってきた技術や技能、ノウハウが消滅することを意味します。
日本の競争力は、大手企業だけでなく中小企業によっても維持強化される必要があります。
国内中小企業間でのM&Aがもっと活発になり、事業承継や技術・技能の伝承がもっとスムースになることを期待します。
M&Aを支援する一人として、より効果的でスムースなM&Aが出来るようにもっと能力を高める必要があると考えています。
M&Aプロセスで最も重要でかつ難しいのは、組織の融合です。
買った側と買われた側の双方が、可能な限り問題ないように溶け合っていく必要があります。
これが上手くいかないと、M&Aの効果が半減してマイナスになる事態もあります。
組織の融合が問題なく実施されることは殆どありません。
問題があるのは、当然です。これは、異なった企業文化を持つ者同士が一体になるわけですから、摩擦は生じます。
この摩擦を最小限に抑えながら、以下に融合して、M&Aの成果を最大化するかがポイントです。
私を含めたM&Aを支援する事業者は、この融合まで責任を持って行うべきと考えます。
世の中に、上手くいったM&A事例がもっと増えれば、中小企業者もM&A手法をもっと活用してくれる世の中になると信じています。
よろしくお願いいたします。
以上、
グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁
VCケンウッドの経営統合から考えるM&Aのメリット・必要性について [アライアンスとM&A]
2010年5月17日
皆様、
おはようございます。グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。
5月16日付の日経電子版に「JVCケンウッド、見えぬ統合効果」のタイトルで記事が掲載されました。
記事の内容は以下の通りです。
『JVC・ケンウッド・ホールディングスの明日が見えない。日本ビクター、ケンウッドというかつての名門同士の経営統合から1年半が過ぎたが、資産売却や人員削減などリストラに明け暮れる毎日。今期には経営再建を果たすと意気込むが、説得力のある回復シナリオも新しい収益源も不透明なままだ。「電機業界で合従連衡のモデルをつくる」という統合の目的はかすんでいる。』
(全文は5月17日付日経産業新聞「News Edge面」に掲載とあります)
日本の電子電機機器業界は、市場の大きさに対して企業数が多く、昔から競合が激しかった業界の一つです。
また、近年、台湾、中国、韓国のメーカーが大きく成長し、ご存知の通り日本メーカーにとって大きな競争相手になっています。
経営統合当時、JVC・ケンウッド・ホールディングスの河原春郎会長兼CEOは、月刊BOSS 2009年1月号掲載記事の中で次のように述べています。
JVC・ケンウッドの最大の課題が、ビクターの経営再建にあり、売上を伸ばすだけでなく、統合効果によるスケールメリットを活かしてJVCの経営合理化を進める事にあった、と述べています。
経営統合(M&A)を行うときに、当然のこととして、両者はそのメリットを最大限確認して、“Win/Win”の関係を構築するための選択肢として採用することになります。
このお互いのメリットになる事を具体的に描ききれないでM&Aを実行すると、多くの場合、失敗することになります。
私自身が、事業者の中で幾つかのM&Aを体験してきた実感です。
M&Aは異なる組織が合体しますので、買う方も買われる方も多くの痛みを伴いながら行うのが、普通の状態です。
この痛みを和らげて、次の発展に結び付けていけるかどうかは、経営統合決定時に明確な成果を具体的に描けていたかどうかによります。
河原さんは、当時の記事で統合の効果として、「すでに統合効果も出始めています。1つは財務面で、この統合効果はメカニカルに発生しています。いまのような環境が厳しい時は、この統合効果が業績のバッファーになってくれるのはありがたい。事業面でも統合効果はあります。9月にベルリンで開かれた家電見本市に、我々はDVDソフトを見ることのできるカーナビを発表していますが、これはケンウッド1社ではできなかったことです。ケンウッドはこれまで映像分野を手がけてきませんでしたから、単独では競争力のある設計がむずかしい。」と述べておられます。
そして、JVC・ケンウッドの事業領域は、カーエレクトロニクスのほかに、ビクターの手がけてきたAV家電とエンターテインメント事業、そしてケンウッドの無線機器などからなるが、新会社発足にあたり、「第5の柱」の育成を宣言しています。
河原さんは、東芝やリップルウッド勤務時にM&Aを経験されてきた方であり、私はここであれこれ批判するつもりは毛頭ありません。
報道記事からは詳細情報が読みとれませんが、経営統合当時に上記「第5の柱」を含めた事業の柱を、どこまでお互いの強みを発揮して出せるか描き切れていたかどうかが今後の事業展開のポイントの一つになると考えます。
新規事業の柱の計画が明確であれば、競争力ある商品を市場に出せ、売上・利益拡大に貢献していきます。
合理化によるコストダウンは、短期的には利益を出せる体質になれますが、国内、台湾、中国、韓国のメーカーと競争していく為には、ある商品カテゴリーでは、他社と差異化が可能なものを持たないと市場では生き残れないのが現実です。
日本の業界は、明らかに市場規模に対して企業数が多すぎます。
今後淘汰が進む可能性はあります。その観点からも、JVCケンウッド統合が上手く進み、業界全体で競争力が高まる事を期待しています。
パナソニック・三洋の経営統合は、経営合理化を進めると共に、重複する家電商品を整理し、お互いが持つ商品分野の強みを伸ばす、“Win/Win”効果を狙ったと理解しています。例えば、三洋には、優れた電池技術がありました。
よろしくお願いいたします。
以上、
グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁
帝国データバンク「:業界再編に対する企業の意識調査」に基づくM&Aに関する考え方 [アライアンスとM&A]
2010年5月16日
皆様、
こんにちは。グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。
5月10日に帝国データバンクは、 「TDB景気動向調査(特別企画):業界再編に対する企業の意識調査」 を発表しました。
この意識調査から幾つかの興味深い事が読みとれます。
以下、調査結果の抜粋です。
「新興国企業による日本企業買収、日本経済にとって「脅威になる」が78.1%
中国やインド、ブラジルなど新興国の成長が著しいなかで、近年はこれら新興国企業による日本企業の買収がみられるようになっている。そこで、新興国主導による日本企業の買収の動き(事業買収や業務提携など含む)が、技術流出やモノづくりにおける日本の競争力低下など日本経済にとって今後の脅威になるか尋ねたところ、1万772社中4,185社、構成比38.9%の企業が「大きな脅威になる」と回答した。また、「やや脅威になる」(同39.2%、4,223社)と合わせ「脅威になる」と認識している企業は同78.1%(8,408社)で、全体の8割近くに達した。
業界別にみると、『製造』は「大きな脅威になる」が同41.8%(1,280社)となり、4割以上の企業で技術流出やモノづくりにおける競争力低下などについて強い脅威を感じている。
他方、「脅威にはならない」と回答した企業は同9.9%(1,069社)(「まったく脅威にはならない」(同1.3%、136社)と「あまり脅威にはならない」(同8.7%、933社)の合計)となり、全体の約1割にとどまった。
企業からは、「日本の生産の空洞化、雇用不安、家計の悪化、全体経済の悪化が懸念される」(産業用機械機器卸売、埼玉県)など、日本企業買収が日本経済に与える影響に対して強い懸念を抱いている企業は多い。。。。」
現在支援している中小企業経営者の考え方も含めた、上記調査結果に対する私の印象と考えは以下の通りです。
1.現在及び今後の日本は、中小企業と言えども海外市場を意識しない、或いは、関係しない形での事業継続は不可能と考えます。
海外、特に、最近日本の貿易相手国として伸びている中国、インドやブラジルなどの市場や企業を直視し、どう対応すべきか考える時期に来ています。
2.現在、私は中小企業の経営力強化のために、事業連携やM&Aの手法を使ってお手伝いをしています。
事業連携を採用する企業は増えてきています。
M&Aについても採用する経営者も増えています。
3.しかしながら、M&Aの相手先が欧米を含む海外企業であるとなると、中小企業の場合、多くの企業が尻込みする傾向が非常に高いと感じます。
欧米や中国から日本製造業者を買いたいという、需要は増えています。
製造業者の場合、彼らが欲しいのは、専門的或いは高度な技術です。
4.新規事業の展開を考えている中小企業の場合、既に事業化してある程度の市場や売上を確保した事業があればそれらを売却して、売却資金を新規事業の立ち上げに活用することが出来ます。
日本企業同士で既存事業や技術の売買が出来れば、言う事はないですが、現在余力のある企業が少なく、日本企業同士でM&Aが難しい状況もあります。
5.日本及び海外市場は大きくかつ急激に動いていますので、果断に意思決定をして「集中と選択」を行いながら、自社の経営力や技術力を迅速に向上させる必要があります。
「Win/Win」の関係が確認できるM&Aなら、相手が中国を含めた海外企業でも積極的にこの手法を活用すべき時期と考えます。
私の場合、会社勤務時に、欧米や中国企業とのM&Aを行いながら、自社事業の集中と選択を行ってきた経験があります。
その経験に基づいて言いますと、自社の経営戦略や方針が明確で、M&A手法により事業展開を考えている場合、中国を含めた海外企業とのM&Aも選択肢の一つとして考えるべきだと思います。
6.一番、愚かなことは、何もしないでビジネスチャンスを失う事です。
この場合、自社の状況を客観的に見直して、日本だけでなく海外市場で生きていく企業としての考え方を明確にする事が重要です。いわゆる、「経営戦略」です。
海外企業に萎縮しないで、たくましく渡り合える企業になる必要があります。
経営コンサルタントとして、このような中小企業の育成に少しでも貢献したいと考えています。
よろしくお願いいたします。
以上、
グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁
ローソン、am/pmを買収:M&A 事例と活用ポイント [アライアンスとM&A]
2009年2月24日付の日経新聞によると、コンビニエンスストア2位のローソンは24日、同7位のエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)を買収する方針を固めた。買収額は150億円前後になる見通し。am/pmの親会社であるレックス・ホールディングスなどから全株式を買い取り、完全子会社化する。首都圏に790店を持つam/pmを傘下に収め、成長の見込める同地域の営業基盤を強化する。
コンビニ業界の大型再編は2001年のサークルKサンクスの経営統合以来となる。
と発表されました。
産経ニュースによると、
am/pmは2004年にレックスが新日鉱ホールディングスから170億円で買収。リストラを進めて店舗数を減少させたが、経営再建は難航し、平成19年12月期末には約120億円の債務超過に陥っていた。今年9月上旬にはam/pmを入札方式で売却する方針を固め、ローソンやコンビニ業界第3位のファミリーマート、総合商社などに話を持ちかけていた。
ローソンは全国に約8600店を展開するが、最大手のセブン-イレブン・ジャパンは1万2000店規模で、後塵(こうじん)を拝している。特に、収益性が高く今後の成長も見込める東京都内では大きく水をあけられている。
am/pmは1000店規模のチェーンだが、約半数の店舗が東京都内に立地する。ローソンは、am/pmを買収すれば一足飛びにセブン-イレブン・ジャパンに迫る都内の店舗網を確保することになる。
何故ローソンは、am/pmを買収する戦略を取ったのでしょうか。
コンビニ大手のローソンがam/pmを買収する背景には、今後も成長が見込める首都圏への店舗網を手厚くしたい狙いがあります。人口減や少子化が全国で進み消費市場が縮小傾向にある中、国内でも数少ない成長市場である“東京マーケット”への足場を築き、競争が激化する業界での生き残りを図りたい考えです。
ローソンは全国四十七都道府県に店舗を配置する半面、東京都心や近郊の店舗は他社に比べて少なく、首都圏の強化は大きな経営課題だったようです。
首都圏に数多く店舗を持つam/pmを得ることで、その課題は解消に向かう。ローソンによると、都内のコンビニ店舗数は、業界一位のセブン-イレブンが約千六百店なのに対し、ローソンとam/pmの店舗は合計千七百二十店となり、店舗数では都内一位となる。
コンビニ業界は二〇〇八年の年間売上高が百貨店を小差で抜き、不況期にも好調を維持しているかのようにもみえます。
しかし、この数年の業界動向をみると、コンビニ業界は店舗数・売上高の伸び悩みが課題となっており、ローソンにおいても同様の課題を抱えていました。特に2000年を越えたあたりから店舗数・売上高は頭打ちとなり、市場成長率が急激に鈍化した状態となっています。
また、2004から2005年以降は、ディスカウントを行わず高い収益性を誇っていた既存のコンビニ業界に、100円ショップコンビニが殴りこみをかけて猛威を振るったのがここ数年のコンビニ業界の動向を特徴付けています。慌てた既存のコンビニは飲料商品の値下げなどに踏みきり、セブンイレブンの成功に始まったコンビニの高収益モデルは崩れかけているのが現状です。
つまり、コンビニ業界も'成熟化'が進み、市場規模が右上がりではなく、横ばいか、右下がりになり始めたことを意味しています。
この様な業界では、市場占有率が1位か、2位の企業でないと生き残れません。
ローソンは、am/pmの買収でセブンイレブンに迫ろうとしたわけです。
この事例をベンチャー・中小企業の事業に置き換えて考えてみます。
どの事業・企業もひとの一生と同じで、導入期、第一成長期、第二成長期、成熟・衰退期のライフサイクルがあります。
導入期;商品、サービスの立ち上げ時期⇒赤ちゃんと一緒で非常な手間をかける必要がある。
第一成長期;商品、サービスの認知度が上がり、売上げが伸びる。競合他社が対抗商品、サービスの導入準備を開始する。
第二成長期;商品、サービスの市場への浸透が定着し、広告への反応が悪くなる。シェアを取っていれば広告を打たなくても市場で認知されている。
成熟・衰退期;淘汰が始まりシェアの小さい会社や特徴を出せない会社は撤退を始める。1位、2位のシェアを取っていれば広告を打たなくても市場で認知されている。結果として利益をエンジョイできる。ここでのポイントは、1位、2位のシェアを取っているかどうかです。
先のローソンは、コンビニ業界で1位のシェア取りに動いたと考えられます。
もし御社の事業を行っている市場、業界が'成熟・衰退期'に入っており、1位、2位のシェアを取れていない場合、経営者としては次の一手を考える時期に来ています。
この時に有効な経営手法の一つが、'M&A(企業の買収・売却)'です。
現在の日本では、大手企業だけでなく、ベンチャーや中小企業が成熟・衰退期に入った事業への対応手段の一つとして、M&Aを使い始めています。
私が手がけるM&A案件は、昨年後半から急に増えました。
現在も数件の案件を手掛けています。
M&Aを行う理由は様々です。
売却する場合は、不振の事業が黒字のうちに売って、成長が見込める新規事業への投資にまわす、既存の他事業強化への投資にまわす、運転資金を確保するなどです。
対照的に、買収する側は、新規事業展開を短期間に行うために、既にその事業で基盤を確立したものに投資します。つまり、お金で、事業基盤確立のための時間を買うわけです。
売る側と買う側が上手くマッチング取れれば、両社、Win/Winの関係になりハッピーになれます。
ここに私が積極的にベンチャーや中小企業のM&A活動を支援するモチベーションがあります。
もちろん、売る側と買う側がハッピーになるには、解決すべき課題や問題が出て来ます。しかし、両者の希望が一致し続けていれば、必ずすべてのことは解決できます。
もし御社の事業を行っている市場、業界が'成熟・衰退期'に入っており、1位、2位のシェアを取れていないと感じている経営者の方がおられましたら、一度M&Aを経営手段の一つとして考えてください。
M&Aに関してご不明な点がありましたら、何時でも 私まで お問い合わせください。
今後ともよろしくお願い致します。
'グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー’
事業連携とM&Aの違いは?その4 [アライアンスとM&A]
2006年6月17日
こんにちは。
前回の記事では、M&Aが全般的に上手く行われていない実態について述べました。
今回の記事では、最新のM&A活動の中で、明確な事業戦略の下に行われた可能性のある、M&Aの例について述べます。
2006年2月7日の日経新聞の記事によりますと、ソニーは6日、コニカミノルタから継承した「α(アルファ)」ブランドをつけた同社初のデジタル一眼レフカメラ「α100」を7月21日に発売すると発表しました。手ブレ補正機構をボディーに内蔵したほか、撮像素子(CCD)に付着したホコリを自動的に振り払う機能を備えた。カメラの有効画素数は1020万画素。価格はオープンだが、店頭での販売価格は10万円前後となる見込み。
ソニーは3月にコニカミノルタからデジタル一眼レフ事業の譲渡を受けており、同社から受け継いだ「α」ブランドでの市場参入を発表していた。記者会見では、同社のハイビジョン対応液晶テレビ「ブラビア」やパソコン「バイオ」などとの連携をアピールし、「今年度中に一眼レフ市場のシェア10%を狙う」(中川裕執行役)としている。
デジタル一眼レフではキャノンなどの精密機械メーカーが先行しています。今回のソニーの参入に続き、松下電器も参入する予定で、精密機械と電気メーカーが競合する段階に入る、と書かれています。
ソニーは、コンパクト機種では、高いシェアを持っており、今回の上級機種である一眼レフへの参入でカメラ市場への切り込みを図る、戦略だと考えます。
日経によるとデジタル一眼レフカメラの出荷台数は、379万台で前年比53%の成長市場です。
今まで、一眼レフカメラ市場に参入できなかったソニーと"Win/Win”の関係が成立し、コニカの「α(アルファ)」ブランドと技術の事業買収が成立したのだと考えます。
これは、ソニーが明確な意志・戦略の下に、コニカから事業買収を行ったものであり、成長市場への短期的参入方法といてのM&Aは、正しい選択肢と思います。
この選択肢がビジネス的に良い結果を出すか否かについては、今後の進展を見ないと判りませんが、例えば松下電器が似たようにオリンパスと組んで、今年の秋にもデジタル一眼レフに参入するとの記事もあります。
かって、松下電器はソニーの後を追ったビジネス展開を良く行っていましたので、今回の松下の動きはソニーの成功を感じ取っているのかもしれません。
今回のソニーの事業買収(M&A)は、明確な事業戦略の下に選択されたと考えており、この様なM&Aは、新規事業展開にポジティブな結果をもたらす可能性が高いと思います。
今後もデジタル一眼レフカメラ市場の動きを見ていきます。
結果については、新聞等で公開されましたら本ブログでも取上げていきます。
明確な目的や戦略の下に行うM&Aは、短期的に効果が上がる選択肢になります。
私自身が現在勤務している会社でも、市場が右肩上がりの状況でなくても、事業の状況分析を行ない、事業規模を伸ばす目標を確認した上で、M&Aを含む事業連携の選択肢を検討してきました。
その検討過程の中で、ビジネスマッチング候補を探し出し、”Win/Win”スキームを確認しながら、ベストなマッチング先(連携先)を選んでいます。
次回から、ビジネスマッチング先を探すプロセスについて述べていこうと思います。ご期待下さい。
今回の記事について、ご関心或いはご質問がある方は、私まで下記アドレスにメールにてご連絡下さい。
私は、すぐにはご回答出来ない場合もありますが、24時間以内にはご連絡します。
よろしく御願いします。
以上、
事業連携とM&Aの違いは?-その3 [アライアンスとM&A]
2006年6月15日
本日もM&Aの事について述べます。
この事例もちょっと古い話ですが、2006年2月9日付けのFujiSankei
Businessに以下の記事が記載されていました。
監査法人トーマツ系のトーマツコンサルティング(東京・千代田)が2月7日にまとめたアンケート調査で、自ら経験したM&A(企業の合併・買収)を成功と考える日本企業は1割どまり――、こんな結果が出ました。
過去のM&Aの目標達成度を10段階(10は達成、1は未達成、5は半々)で聞いたところ、「8」から「10」と答えた企業は合計13社(12.5%)にとどまった。M&Aで難しい点(複数回答)は「相乗効果の把握」が54社と全体の過半数。「ビジネスリスク」「統合方針の策定」の回答の倍以上にのぼった。特に目標達成度の低い企業ほどシナジー効果を実感できていないという。
調査にあたったトーマツ コンサルティングのパートナー、松江英夫氏は「今年もIT(情報通信)などを中心にM&Aは加速する。日本でM&A成功企業を増やすには、シナジー効果分析などのノウハウ不足や、M&A後の人事制度・経営体制などの未整備といった課題を解決しなければならない」と分析している。
M&Aに成功した企業でも77%が、シナジー(相乗)効果を出すための十分な施策を事前に策定しておらず、半数の企業は買収後にシナジー効果のモニタリングをしていないなど、日本企業のM&Aへの取り組みに問題があることが浮き彫りになった。
M&Aの目標達成について十段階(十が達成、一は未達成)で評価してもらったところ、「M&A成功企業」といえる評価「8」以上の企業は13%、評価「6」以上の企業を加えても42%にすぎなかった。
企業の95%は、企業努力でシナジー効果を創出できるとしているが、多くの企業は「時間がない」「分析の方法が分からない」「定量化できない」などの理由から、シナジー効果を分析できていない実情も明らかになった。
上記記事の背景は、私が以前に本ブログで事業戦略や事業計画の策定後、自社の経営力強化の選択肢の一つとして、売上拡大や利益の増加を達成する為に”事業連携”があるのであり、決して”事業連携”自体が目的や戦略では無いと、言っている事と一致します。
M&Aもお金の移動を伴う事業連携と考えますと、この行為自体が流行となって、M&Aを行う目的や理由、目標効果の設定が曖昧なまま行うと上記記事のような結果になるのだと考えます。
戦略やはっきりとした目的無しに、世の中のトレンド(流行)だとか、他社が上手く行ったから自社も行おう、と言った考えでM&Aをやりますと、お金と手間隙ばかりかかって、何のシナジー効果も生まれないと言う最悪の状態に陥る可能性があります。
次回では、M&Aが上手くワークしそうな事例を基にその理由や背景について述べます。
今回の記事について、ご関心或いはご質問がある方は、私まで下記アドレスにメールにてご連絡下さい。
私は、すぐにはご回答出来ない場合もありますが、24時間以内にはご連絡します。
よろしく御願いします。
以上、
事業連携とM&Aの違いは?-その2 [アライアンスとM&A]
2006年6月11日
今回は、前回の記事で述べましたように、米国の代表企業の例を取りながら事業連携とM&Aについて述べます。
ちょっと古い情報になりますが、2006年6月1日付けの日経新聞に興味深い記事が掲載されていました。
米グーグルとマクロソフトの成長戦略について取上げられていました。これは、両社の経営トップが投資家向け説明会で述べられたものです。
◆グーグル シュミットCEOが語る成長戦略;
”顧客を増やす最良の策は、大手企業との提携だ。事業拡大の ためのM&Aは、歴史的に機能していない。
M&Aはグーグルの企業文化に合わない。”
⇒記事では、インターネット業界ではやりのM&Aとは距離を置いて、緩やかな企業連合を重視する考え と述べられています。
◆マイクロソフト バルマーCEOが語る成長戦略;
”成長には積極的投資が必要であり、今後とも企業買収を継続する。投資分野は、成長の機会があるものすべてが対象。”
⇒記事では、企業買収と設備投資の合計金額は、2006年6月通期で26億ドル(約2,900億円)、2007年6月通期も20億ドル以上の投資計画であると述べられています。
グーグルは、最近の動きではAOL、KDDI、デル等との事業連携を相次ぎ発表しています。
私は、グーグルCEOの”M&Aはグーグルの企業文化に合わない”とのコメントに非常に強い共感を持ちます。
以前の記事でも述べましたが、他社との事業連携は本来”わずらわしい”ものです。
自社の力で事業の継続や強化が出来るなら、他社のとの連携は行なう必要はありません。
元々、業界で強い会社は、唯我独尊の気風即ち文化があり、他社との連携など眼中になかったはずです。
その会社が、事業環境の変化から他社との連携を行なう必要が出て来ると、その会社の元々あった文化と相容れない事態に直面し、そこを上手く切り抜ける工夫が必要です。
この点は、別途、”連携の実行”の欄で述べます。
私自身の経験で言いますと、事業連携をきちんと出来ない会社が、いきなりM&Aを行うのは、非常にリスクを伴う可能性が高い、と言うことです。
事業連携を何回か経験して、その後に事業の強化の為にM&Aを行うと言うステップを踏んだ方がはるかに安全だと考えます。
昨今、M&Aが流行っていますが、企業文化が異なる会社同士がいきなり結婚するというのは、想像以上の痛みや緊張等を伴い、M&Aに慣れていない企業同士では、最悪の場合、お金だけ投資して何のリターンも得られない事態も有り得ます。
特に製造業の場合、どの会社も技術競争力の維持・向上に独自のやり方で工夫してきたと考えます。
このような背景を持つ企業同士がいきなり、投資ファンド等の金融機関のアドバイスでM&Aに走る事があるとすると、失敗するリスクは高いと思います。
M&Aに対しては、熟慮の上に決断されることをお勧めします。一旦、動き出しましたら、止める或いは引き返す事は困難です。
次回は、事業連携とM&Aのプラス面、マイナス面について述べたいと思います。
今回の記事について、ご関心或いはご質問がある方は、私まで下記アドレスにメールにてご連絡下さい。
私は、すぐにはご回答出来ない場合もありますが、24時間以内にはご連絡します。
よろしく御願いします。
以上、
事業連携とM&Aの違いは?ーその1 [アライアンスとM&A]
2006年6月10日
今回からちょっと趣きを変えて、昨今話題になっているM&Aと事業連携について、私の考えている事について述べます。
また、”何故事業連携が必要なの?”への記事も継続して書いて行きます。
私は、現在勤務している製造会社で事業戦略の担当として、M&Aも事業連携も経験しております。
尤も、M&Aの経験は、それほど多くの経験を持っていませんが。(M&Aは、結構しんどいプロジェクトです。)
そのM&Aに対する少ない経験からではありますが、経験した当事者の視点も含めて、M&Aと事業連携の違いを述べて行きたいと思います。
先ず、両社の定義を私なりの理解で行います。
◆事業連携;自社と他社の”他人同士間”で”Win/Winスキーム”を確認しながら、お互いにビジネスのやり方の違い等を尊重し、売上、利益の最大化等の目標に向かって協同で活動する行為。
◆M&A;自社と他社が会社の一部或いは全ての部分を対象に、”同じ屋根の下”で一緒にビジネスを行う行為。言わば、人間に例えると、結婚の形に近い。行為が発生する経緯が、友好的な場合と、一方的な場合の双方のケースが混在する。
事業連携の場合は、一般的に他人同士のお付き合いですので、どちらか一方がハッピーでないと感じたら、連携を解消出来ます。
M&Aの場合は、お金を投資していたり、組織的に一緒(婚姻関係)になっていたりしますので、なかなか”縁切り”は簡単にいきません。
で、私も同感している定義の仕方に以下の言い方があります。
◆事業連携;ソフトアライアンス
⇒多少時価間がかかっても、他社との距離を置きながら、穏やかな企業同士の連合を作っていく。
◆M&A;ハードアライアンス
⇒短期間に効果を出す為に、お金で必要なものを手に入れるやり方。痛みを伴うこともあり。
次回は、アメリカの代表的な企業を例に取りながら、事業連携とM&Aについて語ります。
今回の記事について、ご関心或いはご質問がある方は、私まで下記アドレスにメールにてご連絡下さい。
私は、すぐにはご回答出来ない場合もありますが、24時間以内にはご連絡します。
よろしく御願いします。
以上、