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日経記事;『IBM、クラウド重視布陣CEOにインド出身者/社長に外部人材』に関する考察 [事業再生、集中と選択]

                                            2020年2月2日


皆様、
こんにちは。


グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。


2月1日付の日経新聞に、『IBM、クラウド重視布陣CEOにインド出身者/社長に外部人材』のタイトルで記事が掲載されました。


本日は、この記事に関して考えを述べます。


本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『米IBMが8年ぶりのトップ交代に踏み切る。バージニア・ロメッティ最高経営責任者(CEO、62)が4月に退任し、後任にクラウド担当のアービンド・クリシュナ上級副社長(57)が就くと30日に発表した。20世紀の「IT(情報技術)の巨人」は近年は停滞気味。市場は急成長する一方、同社が出遅れているクラウド事業を重視した布陣で浮上を目指すが、課題は多い。。。』


私は、何度か本ブログ・コラムでIBMについて書いています。そのほとんどがIBMの合理化;集中と選択作業に関することになります。


IBMは、何度か経営危機を経験しています。その歴史の中で最大の危機だったのは、1992年に約50億ドルという巨額の赤字を出し、文字通り瀕死の状態にありました。


このIBMの危機を救ったのは、1993年にCEOに就任したルイス・ガースナー氏でした。


ガースナーは、様々な合理化;集中と選択作業を積極的に行って、5年後の1998年頃には、60億ドル強の利益を出せる経営体質に変えることができました。


ガースナーは、当時のIBMのが事業基盤としていたメインフレームのハードウェア事業からの脱却を目指して、ソフトウェア主体のビジネスモデルに変更することを大胆に行いました。


このガースナーの一連の経営改革は、彼が書いた書籍『巨像も踊る』に詳しく書かれています。


この『巨像も踊る』は、日本で話題になり、私を含めて多くの人が購入しました。


このガースナーのやり方は、当時多くの国内電気機器メーカーが行っていた合理化;集中と選択作業の手本の一つになりました。


中でも、IBMが取った集中と選択作業の一つが、パソコン事業を2005年に中国のパソコンメーカーであるレノボに売却しました。


当時、IBMのノートパソコン、Think Padは利益を出していました。IBMは、ノートパソコン事業が近々に赤字事業になると予測して、ハードウェア事業であるノートパソコンビジネスから撤退しました。


このIBMの経営判断は、ハードウェア事業からソフトウェア事業への、事業基盤の移管作業の象徴の一つになりました。


このIBMの経営判断の先見性は正しく、その後国内家電メーカーの多くがノートパソコン事業を縮小したり、撤退しました。


このIBMのハードウェアからソフトウェアへの事業基盤の変革は、ビジネスの強みの源泉がハードウェアのモノづくりではなく、ソフトウェアの付加価値から生み出す動きの象徴的なものになりました。


IBMのハードウェア事業からの撤退は、2003年にハードディスク駆動装置(HDD)事業売却、2014年PCサーバー事業売却などを行っています。


しかし、IBMの既存事業基盤の一つが、大型コンピューターのメインフレーム事業になっていることについては、変わりがありません。


ここにIBMの弱みがありました。また、私が日本IBMの社員と一定期間ビジネスのつながりをもった経験で言いますと、この企業の社風が、日本のIT企業である富士通や日立製作所などと似ているとの印象をもっています。


要は、しょうしょうきつい言い方をすると、IBMの合理化;集中と選択作業が中途半端になったのではないかと推測します。


大型コンピューターのメインフレーム事業は、IBMにとって主力事業になります。このメインフレーム事業は、アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどの米大手IT企業が仕掛けているクラウドサービスビジネスから、大きな影響を受けています。


多くの企業は、現在、クラウドサービスを利用しています。また、クラウドサービスを使用している企業の割合は、毎年増えています。


クラウドサービスの増加は、IBMのメインフレーム事業の顧客を奪いつつあります。


更に、IBMはソフトウェア事業の柱として、人工知能であるワトソンの拡販を長年行っていますが、成果を出しているとは言えない状況です。


今回のIBMトップの変更は、この会社にとっては初めてとなります。インド出身のクラウドサービスを手掛けている人に委託することになります。


IBMが、、アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどのカリフォルニア州に拠点をもつ米大手IT企業との競争に打ち勝つには、ソフトウェアの技術的な強みを持つことに加えて、経営の迅速な実行能力やノウハウをもつ必要があります。


アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどの米大手IT企業は、既存事業基盤を急速に破壊・再構築する動きで、収益拡大を実現してきました。


また、これらの企業は、オープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を積極的に活用しています。


IBMは、今後、クラウドサービス事業を強化しようとしています。このクラウドサービスは、社内のメインフレーム事業と競合します。


クラウドサービスは、現在、アマゾンとマイクロソフトが2強になっており、グーグルが追いかけています。


このグーグルは、社内でクラウドサービスビジネスの継続の是非について検討し、当該サービス事業を継続することを確認しました。


この事業環境下で、IBMがどのような経営計画と行動を起こして、収益拡大を実現するのか、注目していきます。


IBMが中途半端な形で、合理化;集中と選択作業を行うと、他の大手IT企業との競争に負けてしまいます。如何に経営資源を集中して、迅速に対応できるかがポイントになります。


この視点からIBMの動きは、国内ベンチャー・中小企業にとって参考になります。


よろしくお願いいたします。


グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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