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日経電子版記事;『「もう安くない」中国 生産・日本回帰は正解か? 』に関する考察 [海外進出・海外移管]

                    2013年3月12日

皆様、
こんにちは。。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

3月12日付の日経電子版に、『「もう安くない」中国 生産・日本回帰は正解か? 』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。

『日本企業の中国生産や中国での調達が曲がり角に差し掛かっている。これまで、多くの企業がコスト削減や現地需要の取り込みを目的に中国での生産や部品調達を推進してきた。

しかし、最近では人件費の高騰に加えて、他産業への転職で人材の確保自体が困難になっている。既に一部の企業は、中国の外に目を向け始めている。今後の成長ができる東南アジアと日本だ。ここでは、日本での生産に力を入れている3社の事例を紹介する。

「人材を育てても以前より早く辞めてしまうので、品質を保つのが難しく、そのためのコストがかさんでいる」(特殊発條興業(兵庫県伊丹市)取締役執行役員、管理本部長兼経理部長の渡部達彦氏〕。

ここ数年、中国における人件費の高騰がメディアで盛んに報道されているが、実際に中国で生産する企業からは、冒頭のような声が聞こえてくるようになった。中国で部品調達している場合も、調達先がそのような状況にあれば、やはり調達コストなどにしわ寄せが来ることになる。

■中国に出した品目を再び日本で

既に一部の企業は、中国の外に目を向け始めている。受け皿となっているのが、今後の成長が期待できる東南アジアと日本の2つである。

そのうち東南アジアについては、ソディック、東洋電機、ヨコオなどが中国生産の一部を分散させる計画を公表している。東南アジアに移管する目的は、以前の中国進出時と同じコスト削減や現地需要の取り込みに加え、中国での反日デモや災害といったリスクへの備えもある。

一方、日本への移管については、かつて日本から中国に出した品目を再び日本に戻すケースが目立つ。その多くは、日本市場向けの製品だ。

中国での生産や調達を進めた当時は、日本市場向けの製品を中国で生産したり、国内工場で使う部品を中国で調達したりすることがコスト削減につながるという計算があった。だが、前述のような変化に伴い、品質(Q)、コスト(C)、納期(D)のあらゆる面でその前提が崩れてきたのだ。

■日本回帰でQCDをすべて改善

もちろん、全体的には現地需要を中心に中国での生産や調達は今後も続くだろう。しかし、以前のような「中国一辺倒」という状況ではなくなっている。

一方で、東南アジアが市場や生産・調達拠点として中国ほどの存在になるまでにはまだ時間がかかる。そうした中、日本では何を造るべきかが問われ始めている。。。。』


本日の記事は、生産拠点を中国から東南アジアや日本に移す動きについて書いています。この動きは、2~3年前くらいから出ていましたが、領土問題で日中関係が悪化して、中国人による暴動で国内企業の拠点が破壊されたあとから、加速しました。

国内メーカーによる、生産拠点の中国から東南アジア、あるいは、日本への移管については、本ブログ・コラムでも何度か書きました。

政治情勢に関係なく、国内メーカーが中国で生産し、再輸出するメリットは薄まりつつあります。
国内メーカーが中国に生産拠点を作ったのは、進出当時、豊富で安い労働力確保ができたことによります。

国内メーカーが中国進出した当時は、農村部から多くの労働者が出稼ぎのため、工場がある都市部に移り住んできました。当然、労働者賃金は日本と比べて格段に安い状態でした。

電機業界では、パナソニックが先陣をきって中国進出を行ない、その後多くの電機メーカーが工場を作りました。

日本だけでなく、欧米や韓国、台湾などから多くの企業が投資した結果、中国の再輸出事業は大きく伸びて、世界の工場としての位置付けを確立しました。

中国経済は発展し、国別GDP(国内総生産)が2010年に日本を抜いて世界第2位になりました。それにともない、中国市場も拡大して労働者の賃金上昇もあって、中国は大きな消費者市場になりました。

また、中国政府は、国内の政治状況安定化と内需拡大を図るため、ここ数年間毎年の2桁上昇を図っています。

中国の労働者は、賃金上昇と共に、仕事や企業の選択を図っており、工場のようなきつい仕事を敬遠するようになりました。

それと共に、今まで比較的安定していた生産品の品質維持も難しくなりつつあります。

そこで、2011年位から、国内企業の中で労働集約的な産業であるアパレルメーカーなどは、生産拠点をより廉価で豊富な労働力確保が可能になる、バングラデシュ、ベトナム、ミャンマーなどに移し始めました。

本日の記事は、国内企業による生産拠点の中国から東南アジア、あるいは日本への移管が数多く発生し始めていることについて書いています。

キャノンは、すでに幾つかの重要商品の生産拠点を中国から日本国内に戻しており、徹底的な工場の自動化で製造コストを圧縮しています。

ソディック、東洋電機、ヨコオ、ネオン、日本オイルポンプ、特殊発條興業、ウエノ、富士ゼロックスの事例が記事に載っています。

このうち、ソディック、東洋電機、ヨコオの3社は、生産拠点を中国から東南アジアに移します。
その他の企業は、一部製品や部品の生産を日本国内の工場に移します。

理由や状況は、以下のように各社ごとに異なります。

・ソディック;2013年度中にタイでの放電加工機の生産量を増やし、中国と同等レベルに引き上げる。

・東洋電機;エレベータセンサなどの生産工場を2013年にタイに作る。

・ヨコオ;車載用通信部品工場であるベトナム工場を拡張する。

・ネポン;部品内製化で在庫を3分の1に圧縮するため、国内自社工場での加工に切り替えた。

・日本オイルポンプ;中国から調達していたモータを国内自社工場で内製化して、発注から納品まで従来の4カ月を7日にした。

・特殊発條興業;国内市場向けばね座金を、国内新工場への移管で品質を確保した。

・ウエノ;ノイズフィルタ・コイルの品質を安定化させるため、自動巻き線機を導入してコスト削減を行なって、国内工場の生産能力を倍増する。

・富士ゼロックス;レンズなどの基幹部品の生産を2011年に国内工場に移管済み。その他の製品についても国内自社工場への移管を検討中。


今年は、円安に動いていますので、国内企業の中国生産体制の見直しがさらに進んでいくとみます。政治状況とは切り離して、中国の再輸出拠点としての必要性は低くなるからです。

中国国内市場の需要を取り込むために、生産拠点をもつ必要がある場合を除けば、中国に残すメリットはありません。

国内企業は、安い労働力確保を目指して海外に生産拠点をもつ時に、将来当該地域・国でも労働賃金が上昇することを予測して、事業計画を作成することが必要です。

同時に、当該地域・国では、労働賃金の上昇などにより国民の所得水準が向上し、消費者市場としての魅力も出てきます。タイがその事例になります。

国内企業が海外に生産拠点をもつ時、事前準備・調査を入念に行なってしっかりした事業計画を作った後に、実行することが成功のポイントの一つになります。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁


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